結論:八潮市で建設業を引き継ぐとき、承継認可を通せば許可も経営事項審査の結果も引き継げます。埼玉県の手引きは「承継元が受けた監督処分や経営事項審査の結果についても、当然に含みます」と明記しています。
ただし八潮市の入札参加資格は自動では移りません。市の規則で、承継しようとするときは市長への再審査申請が必要と定められています。県の認可と市の手続きは別レイヤーです。
八潮市は都心から北東15キロメートル。南は東京都足立区・葛飾区、東は三郷市、西と北は草加市に接しています。
海抜2.3メートル以下の中川低地の南端に位置し、中川・綾瀬川・垳川・大場川・伝右川という5本の一級河川が市内を流れます。面積18.02平方キロメートルに93,599人・47,962世帯(令和8年7月1日現在)。
この立地が、承継の設計に直接効いてきます。都県境に接しているぶん、市内の会社は埼玉県内の公共工事と都内の民間現場の両方に足をかけていることが多いからです。
引き継ぐ資産は、重機でも事務所でもありません。許可と経審の点数、そして取引先の口座です。順序を間違えると、そのどれかが承継の途中で落ちます。
目次
八潮市で建設業を引き継ぐとき、承継認可で引き継げるもの・引き継げないもの

令和2年10月1日から、建設業法に事業承継の認可制度が設けられました(建設業法第17条の2・第17条の3)。
認可を受けて承継の事実が発生すると、承継先は承継元の「建設業者としての地位」を承継します。
埼玉県の手引きは、この地位の中身をこう説明しています(原文)。
「建設業者としての地位」とは、建設業の許可を受けたことによって発生する権利と義務の総体をさします。これには、承継元が受けていた許可だけではなく、承継元が受けた監督処分や経営事項審査の結果についても、当然に含みます。
| 承継されるもの | 承継されないもの |
|---|---|
| 承継元が受けていた建設業許可 | 法に定める罰則(違法行為を実際に行った者に適用) |
| 経営事項審査の結果(P点) | 八潮市の入札参加資格・格付(別途の再審査申請が必要) |
| 承継元が受けた監督処分 | — |
ここで押さえておきたいのは、経審の結果が引き継がれることの重さです。
認可を取らずに事業を移すと、承継先は新規で許可を取り直すことになります。その場合、経審は事実上ゼロから積み直しです。
公共工事の入札に参加している会社にとって、これは等級が落ちるということと同義になります。承継認可を使うかどうかは、税金や株式の話より前に決まる論点です。
承継の4類型と認可の要件(八潮市の事業者向け)

埼玉県の手引きは、承継の対象となる形を4つ挙げています。
| 類型 | 内容 | 認可のタイミング |
|---|---|---|
| ①事業譲渡 | 個人事業主が生前に行う事業承継、個人事業の法人化(法人成り)も含む | 事前認可 |
| ②法人の合併 | 会社どうしの合併 | 事前認可 |
| ③法人の分割 | 会社分割による承継 | 事前認可 |
| ④相続 | 個人事業に限る | 死亡後30日以内の申請 |
意外に見落とされるのが①の「法人成り」です。八潮市でも、個人で許可を取って長くやってきた事業者が法人化するケースは珍しくありません。
この法人成りも承継認可の対象になります。逆にいえば、認可を取らずに法人化すると、法人としては新規許可の取り直しになります。
業種の「つまみ食い」はできない
手引きが明確に否定しているのが、業種を分けて承継する形です。
承継元が営んでいた建設業の全部を承継先に承継させる場合に限り、許可の承継が可能です。承継元が営んでいた一部の業種のみを承継させることはできません。
「とび・土工と土木は後継者の会社へ、管工事はこちらに残す」といった分け方は、承継認可では実現できません。
複数業種を持つ会社ほど、ここで設計をやり直すことになります。分けたいのであれば、承継認可以外の道を選ぶことになり、その代償として経審の結果を失います。
営業所技術者等は「承継予定日まで」つながっている必要がある
認可の要件には、人の連続性も含まれます。手引きは、承継予定日以降の営業所技術者等は原則として従前の者が引き続き常勤している必要がある、としています。
承継予定日の時点で営業所技術者等を交代させる場合は、承継の日から2週間以内に変更届を提出します。
常勤役員等(経営業務の管理責任者)と営業所技術者等が、承継予定日まで途切れずに在籍していること。ここが崩れると、承継そのものが止まります。
取り違えやすい「4つの30日」

承継の相談で最も多い混乱がこれです。建設業の手続きには、意味の違う「30日」が4つあります。
| どの30日か | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| ①相続の30日以内 | 被相続人の死亡後30日以内に認可を申請 | 建設業法第17条の3 |
| ②県の運用の30日前 | 承継の事実発生日の30日前までに申請を完了 | 埼玉県の手引き(運用) |
| ③更新の30日前 | 許可の有効期間満了日の30日前までに更新申請 | 埼玉県の手引き(申請区分の注) |
| ④変更届の期限 | 営業所技術者等の変更は承継の日から2週間以内 | 埼玉県の手引き |
特に注意したいのが①と②の違いです。
事業譲渡・合併・分割に、法定の「30日前」という期限はありません。法律上の要件は「承継の事実が発生する前に認可を受けること」です。
そのうえで埼玉県は、運用として次のように求めています(原文)。
相続以外の承継(事業譲渡、合併、分割)は、「あらかじめ」認可を受ける必要があります。承継の事実が発生した後に遡って認可することはできません。
遅くとも、承継の事実発生日の30日前までに申請を完了させてください。不足書類がある場合、受付は一切できません。
これは「申請」の期限であって「認可」の期限ではありません。認可が下りるまでの審査期間は別に必要です。
相続だけは事後の申請になります。手引きも「被相続人(許可を受けている事業主)の死亡後30日以内に申請を行ってください」としており、起算点は死亡日です。相続を知った日ではありません。
承継が流れたときの落とし穴
手引きには、見落とされがちな注記があります。
承継の申請を取り下げたり、承継の事実が発生しないことが確定(事業譲渡契約の解除等)したりした場合、その時点で承継元や承継先が受けていた許可の有効期間が満了していると、従前の許可を更新することはできません。
「承継が流れたら更新すればいい」は通用しません。更新時期と承継時期が近いなら、先に更新を通すのが安全です。
更新申請は満了日の2か月前から受け付けられています。承継の交渉より先に、この日程だけは確定させておくべきです。
八潮市の提出先はどこか|県庁・地方整備局・市役所の切り分け

まず前提として、八潮市役所は建設業許可・承継認可の窓口ではありません。市が扱うのは入札参加資格など、市の発注に関する手続きです。
埼玉県知事許可の承継認可の窓口は、埼玉県県土整備部 建設管理課 建設業担当(さいたま市浦和区高砂3-15-1 埼玉県第2庁舎3階)です。
ただし、埼玉県が提出先になるのは条件付きです。手引きは次の全てを満たす場合としています。
- ア 承継元が埼玉県知事許可を受けている
- イ 承継後の営業所が全て埼玉県内にある
承継先が既に埼玉県知事以外の建設業許可を受けている場合、提出先は承継後の主たる営業所の所在地を管轄する国土交通省の地方整備局になります。
八潮市は南で東京都足立区・葛飾区に接しています。都内に営業所を持つ会社が承継先になる形は現実にありうるため、提出先の判定は交渉の初期にやっておくべきです。
受付方法・手数料
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出部数 | 正本1通・副本1通(副本は正本の複写可) |
| 受付方法 | すべて持参。郵送・電子申請は受付なし |
| 受付時間 | 月〜金(祝日・12/29〜1/3を除く)午前9時〜11時/午後1時〜4時15分 |
| 申請手数料 | かかりません |
手数料は無料です。新規許可の9万円とは違います。ただし無料なのは県に払う手数料の話で、専門家に依頼する報酬は別です。
もうひとつ、県は事前相談を前提にしています。手引きは、事前相談なく承継申請をすると不備の補正等に時間がかかり、承継の事実が発生するまでに認可ができないおそれがある、と警告しています。
八潮市の入札参加資格は、承継しても自動では移らない

ここが本記事でいちばんお伝えしたい部分です。県の承継認可を通したことで安心してしまい、市の手続きが抜けるケースがあります。
八潮市建設工事等指名競争入札参加者の資格等に関する規則(平成4年12月28日規則第54号)の第10条第1項は、こう定めています(原文)。
相続、合併、分割又は事業譲渡により、資格審査の申請をした者から当該営業の一切を継承した者が、その参加資格を承継しようとするときは、市長が別に定める関係書類を添えて市長に再審査の申請を行わなければならない。
県の認可とは別に、市への再審査申請が必要だということです。
八潮市の格付はAA・A・B・Cの4級
同規則の第7条第1項は、市が発注する建設工事の入札参加資格について、経営事項審査の結果によりAA級・A級・B級・C級の4級に区分して格付を行うと定めています。
資格審査は原則として2年ごと(第2条第2項)ですが、承継に伴う再審査は例外です。第10条第3項により、審査委員会の審議に代えて、再審査前の資格審査の結果と第7条の格付の基準を用いて随時行われます。
つまり、手続きさえ取れば定期審査を待たずに動かせます。逆にいえば、申請しなければ動きません。
承継認可で経審の結果そのものは引き継がれても、市の名簿上の登載と格付は別の器に入っています。ここを繋ぐのは会社側の申請です。
公共工事を継続的に受けている八潮市の会社なら、承継のスケジュールに「市への再審査申請」を1行足しておくだけで、受注が途切れるリスクをひとつ消せます。
承継後の許可期間は「5年と1日」|許可番号と技術者の扱い

承継が済んだあと、許可の有効期間がどうなるかは意外と知られていません。
手引きは、有効期間の起算点は承継前に承継元及び承継先が受けていた許可の有効期間の残存期間にかかわらず当該承継の日の翌日である(建設業法第17条の2第7項)と説明しています。
承継の日から許可が有効になり、その翌日から5年間。合わせて5年と1日という数え方になります。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 許可の有効期間 | 承継後、最初の更新までは5年と1日 |
| 許可番号 | 原則として承継元のものを使用 |
| 双方が埼玉県知事許可の場合 | どちらの番号を使うか選択可。一度選択したら変更不可 |
| 営業所技術者等 | 原則として従前の者が引き続き常勤。交代は承継日から2週間以内に変更届 |
許可番号を選択できるのは、承継前から承継先も埼玉県知事許可を持っている場合に限られます。
そして一度選んだら変更できません。取引先や元請に長く知られている番号がどちらなのかは、営業上の判断として先に整理しておく価値があります。
八潮市の承継でつまずく典型パターンと、専門家に頼む判断

実務でよく見る詰まり方を挙げます。
- 認可を取らずに事業を移してしまった:新規許可の取り直しになり、経審の結果も引き継げない。もっとも損失が大きい失敗。
- 「30日前」を認可の期限だと思っていた:申請完了の期限であって認可の期限ではない。書類が揃わず受付されず、承継日に間に合わない。
- 更新と承継が重なった:承継が流れると従前の許可を更新できなくなる。先に更新を通していれば防げた。
- 市の入札参加資格の再審査申請を忘れた:県の認可は通ったのに、市の名簿上の資格が動かない。
- 業種を分けて承継しようとした:全部でなければ承継できない。設計をやり直すことになる。
- 提出先を県だと思い込んでいた:承継先が県外許可を持っていて、実は地方整備局だった。
共通しているのは、どれも「先に決めていれば避けられた」ものだという点です。
建設業は、まだ紙と慣習で回っている部分が大きい業界です。だからこそ、承継のような一度きりの手続きは、担当者の記憶や気合いではなく日程表と手続き一覧という仕組みに落としたほうが確実に通ります。
承継予定日から逆算して、事前相談・申請完了・認可・承継日・変更届・市への再審査申請を1本の線に並べる。それだけで、上に挙げた6つの失敗はほぼ消えます。
専門家に依頼する価値があるのは、書類を作る手間そのものより、この逆算の設計と、提出先・類型の判定の部分です。判定を間違えると、あとの作業がすべて無駄になるからです。
八潮市の建設業の事業承継に関するよくある質問(FAQ)
八潮市で建設会社を息子に引き継ぐとき、建設業許可は取り直しになりますか?
取り直しにはなりません。承継認可を受ければ、許可も経営事項審査の結果も引き継がれます。
ただし自動ではありません。事業譲渡・合併・分割は事前に認可を受ける必要があり、相続は死亡後30日以内の申請が必要です。認可を取らずに移せば、新規で取り直しになります。
八潮市の承継認可はどこに申請するのですか?
八潮市役所ではなく、埼玉県県土整備部 建設管理課 建設業担当です。
ただし承継先が既に埼玉県知事以外の許可を持っている場合は、承継後の主たる営業所を管轄する地方整備局が提出先になります。都内に営業所を持つ会社との承継では要確認です。
承継認可の申請期限は「30日前まで」で合っていますか?
法定の期限ではありません。法律上は「承継の事実が発生する前に認可を受ける」ことが要件です。
埼玉県は運用として、承継の事実発生日の30日前までに申請を完了させるよう求めています。これは申請の期限であって認可の期限ではありません。相続の30日以内(死亡後)とも別物です。
承継認可を受ければ、八潮市の入札参加資格もそのまま引き継げますか?
自動では引き継げません。八潮市の規則第10条第1項により、市長への再審査申請が必要です。
八潮市の格付は経審の結果によりAA級・A級・B級・C級の4級(同規則第7条第1項)。承継に伴う再審査は定期審査を待たず随時行われます。
承継すると許可の有効期間はどうなりますか?
承継後、最初の更新までは5年と1日になります。起算点が承継の日の翌日になるためです(建設業法第17条の2第7項)。
業種の一部だけを引き継ぐことはできますか?
できません。承継元が営んでいた建設業の全部を承継させる場合に限られます。一部だけを移したい場合は別の設計が必要で、経審の結果は引き継げなくなります。
承継の話が途中で流れたら、あとから更新すれば大丈夫ですか?
危険です。承継が流れた時点で許可の有効期間が満了していると、従前の許可を更新できません。更新時期が近いなら先に更新を通してください。
まとめ:八潮市の承継は「県」と「市」を別々に動かす
八潮市で建設業を引き継ぐときの要点は、大きく2つに整理できます。
ひとつは県の承継認可を必ず通すこと。許可だけでなく経審の結果まで引き継げるかどうかが、ここで決まります。事業譲渡・合併・分割は事前に、相続は死亡後30日以内に。
もうひとつは市の手続きを別に用意すること。八潮市の入札参加資格と格付は、規則第10条の再審査申請がなければ動きません。県の認可は市の名簿を書き換えてくれません。
そして日程です。承継予定日、許可の満了日、更新の受付開始日、県の運用上の申請完了期限。この4つを並べたときに矛盾がなければ、承継はほぼ通ります。
都内の現場と県内の公共工事の両方に足をかけている会社が多い八潮市では、取引口座と入札等級の両方を落とさずに渡せるかが承継の実質的な成否になります。どちらも、書類より前の設計で決まる部分です。
後継者が決まっている方も、これから探す方も、いまの許可・経審・名簿の状態を一度棚卸ししておくと、選べる道が広がります。日程の逆算からご一緒できますので、お気軽にご相談ください。