最終更新日:2026年4月29日|改正建設業法(2020年10月1日施行)事業承継認可制度/令和6年改正建設業法(2024年12月13日施行)対応済み
「父が突然亡くなり、建設会社の今後をどうするか家族で話し合っている」「経営していた個人事業主の祖父が他界した。元請から発注済みの工事はそのまま続けたいが、建設業許可は引き継げるのか」——建設業を営んでいた経営者の死亡は、ご遺族にとって悲しみの最中であると同時に、事業を継続するか・廃業するかを30日以内に判断しなければならない極めて緊張感の高い局面です。
建設業許可の相続承継とは、2020年10月1日施行の改正建設業法第17条の3に基づき、個人事業主が死亡した場合に、相続人が事前認可を受けることで被相続人の許可番号・許可年月日をそのまま引き継いで事業を継続できる制度です。被相続人の死亡を知った日の翌日から30日以内という法定の絶対期限があり、これを1日でも過ぎると認可は受けられず、改めて新規申請(手数料9万円・審査30〜120日)が必要となります。
この記事では、相続承継認可制度の仕組みから、3つの絶対要件、単独相続と共同相続の違い、必要書類、申請の流れ、却下時のリスクまで、相続発生直後に動かなければならない遺族・後継者の視点で行政書士が徹底解説します。譲渡・合併・分割を含む事業承継認可制度の総論については、建設業許可の事業承継とは?認可申請の30日前ルール・必要書類・手続きの流れもあわせてご覧ください。
この記事でわかること:
- 建設業許可の相続承継認可制度の仕組みと従来の新規申請手法との違い
- 「死亡後30日以内」の法定絶対期限と起算日の正確な数え方
- 相続人全員の同意・許可要件の充足という残り2つの絶対要件
- 単独相続と共同相続で異なる手続き・添付書類のポイント
- 相続承継認可で必要となる書類の一覧と落とし穴
- 認可却下時に発生する許可空白期間2〜4か月の経営インパクト
- 相続承継認可を行政書士に依頼する場合の費用・期間・実務フロー
目次
建設業許可の相続承継とは?
相続承継とは、個人事業主として建設業許可を受けていた経営者が死亡した場合に、その相続人が認可を受けることで、被相続人の建設業許可をそのまま引き継いで事業を継続する手続きです。建設業法第17条の3および建設業法施行規則第7条の3に根拠を持つ正式な制度で、2020年10月1日に施行されました。
建設業許可は本来、許可を受けた個人または法人に専属する一身専属的な行政処分のため、経営者の死亡によって自動的に消滅するのが原則でした。改正前は、死亡後すぐに廃業届を提出し、相続人が新たに新規申請をする必要があり、その間2〜4か月の許可空白期間が必ず発生していました。500万円以上の建設工事を受注できないこの期間に、進行中の請負契約の打ち切りや、長年取引してきた元請からの信用喪失といった深刻な経営ダメージが頻発していたため、後継者の事業継続を制度的に支援する目的で創設されたのが相続承継認可制度です。
国土交通省の建設業の許可とはでも、譲渡・合併・分割・相続の4類型を「事業承継等」として整理しており、なかでも相続のみが事後申請型(死亡後30日以内)という特殊な枠組みで運用されています。
相続承継できる対象は「個人事業主の建設業許可」のみ
重要な前提として、相続承継認可制度の対象は個人事業主として取得された建設業許可に限られます。法人として取得された建設業許可は、代表取締役が死亡しても許可自体は法人に帰属したままなので、相続承継認可は不要です。法人の場合は、株主総会で新代表取締役を選任し、変更届出(経営業務管理責任者の変更・代表者の変更)を提出すれば事業継続できます。
個人事業主の建設業許可がどのような場合に取得されるかについては、建設業許可の個人事業主取得ガイドで詳しく解説しています。建設業を営む個人事業主は全国で約14万事業者(2026年4月時点・国土交通省統計)と依然として多く、相続承継認可は実務上の利用頻度が高い制度です。
相続承継認可と従来の新規申請の違い
相続発生時の対応として、相続承継認可と従来の新規申請のどちらを選ぶかで、許可空白期間や手続きの負担が大きく変わります。下表で比較整理します。
| 項目 | 相続承継認可 | 従来の新規申請(廃業届+新規) |
|---|---|---|
| 申請期限 | 死亡後30日以内(絶対期限) | 廃業届は死亡後30日以内、新規申請は任意 |
| 許可番号・許可年月日 | 被相続人のものをそのまま引継ぎ | 新規番号・新規許可日に切替 |
| 許可空白期間 | 原則ゼロ(認可の効力は死亡日に遡及) | 2〜4か月(500万円以上工事を受注不可) |
| 申請手数料 | 無料 | 9万円(知事許可・大臣許可とも) |
| 経営事項審査の年数 | 被相続人の経営年数を引継ぎ可能 | 相続人個人の経営年数で再カウント |
| 進行中の請負契約 | 原則そのまま継続可能 | 許可空白期間中は500万円以上工事の継続不可 |
このように相続承継認可の最大のメリットは許可空白期間ゼロと許可番号の引継ぎです。とくに公共工事を受注している事業者は、経営事項審査の年数引継ぎが大きく、新規申請にすると経営年数が0年から再カウントされて評価点(Y点)が大幅下落するため、相続承継を選ばないと事業継続自体が事実上困難になるケースもあります。経営事項審査の仕組みは経営事項審査の完全ガイドで詳しく扱っています。
相続承継認可の3つの絶対要件
相続承継認可を受けるためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると認可は下りず、却下されると相続承継は永久に成立しません。
要件①:死亡後30日以内の申請(法定絶対期限)
建設業法第17条の3第1項は、相続人が認可を申請する期限を「被相続人の死亡を知った日の翌日から30日以内」と明確に定めています。この30日には土日祝・年末年始も含まれるため、実質的な準備期間は20日程度しかありません。葬儀・四十九日法要・遺産整理と同時並行で書類収集を進める必要があり、相続発生直後の家族にとって極めて重い負担となります。
起算日は「死亡を知った日の翌日」です。たとえば被相続人が4月1日に死亡し、相続人が同日に死亡を知った場合、起算日は4月2日となり、申請期限は5月1日(30日目)の閉庁時刻までとなります。同居していなかったなど死亡の事実を遅れて知った場合は、その「知った日」が起算日になりますが、実務上は死亡診断書・死体検案書の発行日と乖離があると証明が難しくなるため、実態としては死亡日の翌日から数えるケースがほとんどです。
この30日期限は補正・延長の余地が一切ない厳格運用で、1日でも過ぎると行政庁は申請を受理しません。建設業許可の更新申請の30日前ルールと混同されがちですが、相続承継は「事後30日」であり、譲渡・合併・分割の「効力発生日の前日まで」とも違う独自の運用です。許可更新の期限管理については建設業許可の更新忘れ完全ガイドもご参照ください。
要件②:相続人全員の同意
第二の要件は、相続人全員が当該事業の承継に同意していることです。被相続人に配偶者・子・親・兄弟姉妹など複数の相続人がいる場合、誰か1人でも反対していると相続承継認可は申請できません。同意は「相続人全員の同意書」に各相続人が実印を押印し、印鑑証明書を添付する形式で証明します。
相続人のなかから「相続承継人」を1人選定し、その者が単独で申請手続きを進めます(建設業法施行規則第7条の3)。誰を相続承継人にするかは相続人間の協議で決定し、必ずしも遺産分割協議を完了させる必要はありませんが、事業用資産(事務所・重機・売掛金など)の帰属について大枠の合意が形成されていることが望ましいです。
遺産分割協議が紛糾しそうな場合は、30日期限を踏まえて、まず「事業の承継」についてのみ先行して合意し、それ以外の遺産は後日協議するという「一部分割」のアプローチが実務上採用されます。弁護士・司法書士・行政書士の連携が重要で、相続人間の対立があると認可申請そのものが頓挫するため、相続発生直後の冷静な対応が求められます。
要件③:被相続人と同等の許可要件充足
第三の要件は、相続承継人(または承継後の事業体)が、被相続人と同等の建設業許可要件を充足していることです。具体的には以下の5要件を満たす必要があります。
- 経営業務の管理責任者(経管)の確保:相続承継人が建設業の経営経験5年以上を有すること、または経営経験のある役員等を雇用すること
- 営業所技術者等(旧:専任技術者)の確保:許可業種ごとに国家資格者または10年実務経験者を配置すること
- 誠実性の要件:相続承継人および役員等が暴力団員でないことなど
- 財産的基礎の要件:自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力
- 欠格要件に該当しないこと:禁錮以上の刑、許可取消し処分後5年以内など
5要件のうち最大の関門となるのは経管と営業所技術者等です。被相続人がこれらを兼任していたケース(個人事業主では極めて多い)では、その死亡によって両ポジションが同時に欠員となり、相続承継人がこれらの実務経験・資格を引き継いでいなければ要件を満たせません。
令和6年(2024年)12月13日施行の改正建設業法により、専任技術者は営業所技術者等に名称変更され、運用要件も一部見直されています。経管の経営経験要件や、営業所技術者等の実務経験10年要件の証明方法は、相続承継のスピード感(30日)と相性が悪く、ここで認可断念に追い込まれるケースが少なくありません。詳細は経営業務管理責任者の要件および営業所技術者等の要件もご参照ください。
単独相続と共同相続の手続き上の違い
相続人が1人だけの「単独相続」と、複数いる「共同相続」では、必要書類や注意点が大きく異なります。実務上はほとんどが共同相続となるため、ここを正確に押さえておくことが認可成立のカギとなります。
| 論点 | 単独相続 | 共同相続 |
|---|---|---|
| 相続人の人数 | 1人のみ | 2人以上 |
| 同意書 | 不要 | 相続人全員の同意書(実印・印鑑証明書) |
| 相続承継人の選定 | 自動的に当該相続人 | 相続人協議で1人を選定 |
| 遺産分割協議書 | 原則不要 | 事業用資産の帰属を明示するため添付推奨 |
| 戸籍書類の範囲 | 被相続人と相続人の戸籍 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式・全相続人の戸籍・住民票 |
| 典型的なケース | 独身経営者の親が相続、配偶者のみ生存等 | 配偶者と子、兄弟姉妹等が共同相続 |
共同相続のなかでも、相続人の1人が事業を承継し、他の相続人は事業以外の遺産(不動産・預貯金など)を承継するという形が最も一般的です。この場合、事業用資産(建設機械・運転資金・売掛金など)を承継相続人に帰属させる遺産分割協議書が、認可後の事業運営をスムーズにするうえで実質的に不可欠となります。遺産分割協議書の作成は司法書士・弁護士の領域ですが、行政書士も書類作成自体はサポート可能です。
相続承継認可の必要書類一覧
相続承継認可申請で必要となる主要書類は以下のとおりです。書類点数は新規申請とほぼ同等で、加えて相続関係を証明する戸籍書類群が必要となるため、書類量はむしろ多くなります。
| 区分 | 書類名 | 備考 |
|---|---|---|
| 相続関係書類 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式 | 転籍がある場合は前本籍地分も必要 |
| 相続人全員の戸籍謄本・住民票 | 共同相続の場合は全員分 | |
| 相続人全員の同意書(実印・印鑑証明書添付) | 共同相続のみ・印鑑証明書は3か月以内のもの | |
| 承継人本人書類 | 相続承継人の住民票・身分証明書 | 本籍地市区町村発行の身分証明書 |
| 登記されていないことの証明書 | 東京法務局発行・成年被後見人等でないことの証明 | |
| 許可要件証明書類 | 経営業務管理責任者の経歴証明 | 過去の確定申告書・工事請負契約書等で5年証明 |
| 営業所技術者等の資格証明または実務経験証明 | 合格証の写し、または10年分の工事経歴 | |
| 常勤性確認書類(健康保険被保険者証等) | 経管・営業所技術者等の常勤性証明 | |
| 財産的基礎の証明(残高証明書または納税証明書) | 500万円以上の自己資本または資金調達能力 | |
| 誓約書(誠実性・欠格要件非該当) | 相続承継人本人の署名・押印 | |
| 事業関係書類 | 事業用資産の引継ぎを示す書類 | 遺産分割協議書(事業用資産部分) |
| 営業所の使用権限を示す書類 | 賃貸借契約書・登記簿謄本等 |
このうち最も時間がかかるのは被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式です。被相続人が転籍を繰り返している場合や、戦前戸籍にさかのぼる必要がある場合、複数の市区町村への郵送請求が必要となり、収集だけで2〜3週間かかることも珍しくありません。30日期限と並走する必要があるため、相続発生直後から行政書士・司法書士に戸籍収集を依頼するのが定石です。
営業所技術者等を10年実務経験で証明する場合、被相続人と相続承継人で別人になるため、相続承継人自身の10年分の工事請負契約書・注文書・請求書を改めて整理する必要があり、ここで挫折するケースが頻発します。被相続人と二人三脚で長年現場を担ってきた相続承継人であれば証明可能ですが、勤務先が異なっていた相続人の場合は実務経験の証明自体が困難となります。
相続承継認可申請の流れ(ステップ別)
相続承継認可申請を死亡後30日以内に完了させるには、以下のスケジュール感で動く必要があります。
STEP1:死亡確認・相続人確定(死亡日〜2日目)
死亡診断書・死体検案書の取得と並行して、相続人を法的に確定させます。被相続人の戸籍謄本を最低限取得し、配偶者・子・親・兄弟姉妹の有無を把握します。同時に、被相続人が建設業許可を保有していることの確認(許可番号・有効期限・許可業種)も行います。許可番号は建設業許可の取り方で説明している許可通知書または国土交通省の建設業者検索システムで確認できます。
STEP2:相続人協議・相続承継人の選定(3〜7日目)
相続人全員で協議し、事業を承継する相続人(相続承継人)を決定します。家族間で争いがある場合や、相続放棄を検討している相続人がいる場合は、この段階で弁護士に相談しないと30日期限に間に合いません。事業用資産の帰属について大枠の合意を得て、「相続人全員の同意書」のフォーマットを準備します。
STEP3:書類収集(5〜20日目)
戸籍謄本一式、印鑑証明書、相続承継人の身分証明書・登記されていないことの証明書、経管・営業所技術者等の経歴証明書類、財産的基礎の証明書類など、すべての必要書類を並行収集します。被相続人の出生から死亡までの戸籍は最も時間がかかるため、専門家に依頼して郵送請求の手間を圧縮するのが有効です。
STEP4:申請書類の作成・行政庁への事前相談(15〜25日目)
知事許可は都道府県の建設業許可担当窓口、大臣許可は地方整備局へ事前相談を行い、申請書一式の整合性を確認します。事前相談で問題点が指摘された場合の補正余地を考慮し、25日目までには事前相談を完了しておくことが理想です。営業所技術者等の経歴証明など重い書類は、ここで補正指示が出ると30日期限を守れないリスクが急上昇します。
STEP5:認可申請書の正式提出(25〜30日目)
30日目までに行政庁の窓口へ申請書一式を正式提出します。郵送ではなく持参提出が原則で、不備があればその場で補正できる体制を取るのが安全です。提出時に補正指示があった場合でも、提出日が30日以内であれば「申請受理日」として有効となるため、補正のために提出が遅れることがないよう細心の注意を払います。
STEP6:審査・認可(提出後30〜60日)
申請受理後、行政庁での審査が行われます。認可までの期間は知事許可で30〜60日、大臣許可で60〜120日が目安です。認可が下りるまでの期間はみなし継承として暫定的に被相続人の許可で事業継続できますが、新規工事の契約締結は慎重に判断する必要があります。認可決定後、相続承継人名義の許可通知書が交付されます。
認可が却下されたらどうなるか(重大リスク)
相続承継認可が却下された場合、被相続人の建設業許可は死亡日に遡って失効します(建設業法第17条の3第3項)。これは相続承継認可制度の最大のリスクで、却下決定を受けた瞬間、過去の死亡日から却下決定日までの期間に行った500万円以上の工事受注が、すべて建設業法違反(無許可営業)として遡及的に位置づけられる重大な事態となります。
却下となる主なケースは以下のとおりです。
- 30日期限を1日でも過ぎた場合
- 相続人の同意が得られず、不同意の相続人がいる場合
- 経管または営業所技術者等の要件を相続承継人が充足できない場合
- 財産的基礎(自己資本500万円または資金調達能力)が示せない場合
- 相続承継人が欠格要件に該当する場合(過去の禁錮以上の刑等)
却下後に事業を継続するには、改めて新規許可申請(手数料9万円・審査30〜120日)を行う必要があります。許可空白期間が2〜4か月発生し、その間は500万円以上の工事を受注できません。建設業許可の更新を忘れた場合と同じ「無許可状態」となり、進行中の元請契約が解除されたり、入札参加資格が停止されたりする深刻な経営インパクトがあります。詳細は建設業許可の更新忘れ完全ガイドで取り扱っているリスクと共通します。
そのため、要件の充足が確実でない場合は、無理に相続承継を狙わず、最初から廃業届+新規申請に切り替える判断も実務上は重要です。行政書士・弁護士に早期相談し、相続承継認可で行くか新規申請で行くかを死亡後5〜7日以内に方針決定することが、最終的な事業継続の成否を決定づけます。
費用と期間の目安
相続承継認可にかかる費用と期間の目安をまとめます。
| 項目 | 費用・期間 | 備考 |
|---|---|---|
| 行政庁への申請手数料 | 無料 | 知事許可・大臣許可とも |
| 戸籍謄本等の取得実費 | 5,000〜30,000円 | 被相続人の転籍数による |
| 行政書士報酬(相続承継認可) | 20万〜50万円 | 事業規模・書類量による |
| 弁護士報酬(遺産分割協議が必要な場合) | 30万〜100万円 | 協議の複雑さによる |
| 司法書士報酬(不動産相続登記が必要な場合) | 10万〜30万円 | 事業用不動産の名義変更 |
| 申請準備期間 | 20〜25日(実質的な作業日数) | 30日期限から事前相談・補正期間を控除 |
| 審査期間 | 30〜60日(知事許可)/60〜120日(大臣許可) | 申請受理後、認可決定までの期間 |
新規申請(手数料9万円+行政書士報酬10万〜20万円)と比較すると、相続承継認可のほうが行政書士報酬は高額になります。これは戸籍収集・遺産分割協議サポート・30日期限のスピード対応・複数士業の連携調整など、案件の難易度と緊急性が新規申請と段違いに高いためです。ただし許可空白期間2〜4か月のあいだに失う売上機会・信用回復コストを考えれば、相続承継認可の総合コストパフォーマンスは新規申請を圧倒的に上回るケースが大半です。
行政書士に依頼するメリット
相続承継認可は、30日期限・複雑な相続関係・建設業許可の専門要件という3つの難しさが重なる極めて難易度の高い手続きです。遺族・後継者が独力で進めることは事実上不可能に近く、行政書士に依頼することで以下のメリットを得られます。
- 30日期限管理の確実化:起算日の正確な判定、書類収集・作成の並行進行、行政庁との事前相談タイミングの最適化により、期限超過リスクを最小化
- 戸籍収集の代行:被相続人の出生から死亡までの戸籍一式を、市区町村への郵送請求も含めて代行し、遺族の負担を大幅に軽減
- 営業所技術者等の経歴整理:相続承継人の10年実務経験証明書類を、過去の工事請負契約書・注文書から再構築する専門ノウハウ
- 弁護士・司法書士・税理士との連携:相続放棄、遺産分割協議、不動産相続登記、相続税申告など、関連手続きを一元的にコーディネート
- 却下リスクの事前評価:要件充足が困難と判断される場合、早期に新規申請への切替えを助言し、無許可営業状態に陥るリスクを回避
とくに2026年現在、令和6年改正建設業法(2024年12月13日施行)への対応で営業所技術者等の運用が見直されているため、最新の運用ルールを把握している行政書士に依頼することの重要性が高まっています。
よくある失敗事例
当事務所が過去に相談を受けた相続承継案件のうち、認可成立に至らなかった失敗事例の典型を紹介します。同じ轍を踏まないための参考にしてください。
失敗例①:葬儀対応で30日経過してしまった
地方の個人事業主の経営者が死亡し、配偶者と長男(建設業に従事)が遺された事案。葬儀・四十九日・初盆の対応に追われ、相続承継認可制度の存在を知ったのは死亡から35日後でした。すでに30日期限を超過していたため認可申請は受理されず、廃業届+新規申請に切り替えましたが、許可空白期間中に元請2社から契約解除を受け、年商1.2億円の事業が新規申請完了時点で年商3,000万円規模まで縮小してしまいました。
失敗例②:相続人の1人が同意してくれなかった
相続人が配偶者・長男・次男・長女の4名で、長男が事業承継を希望したものの、長女が「事業よりも預貯金で公平に分けたい」と主張して同意を拒否した事案。30日期限のなかで弁護士を交えて折衝しましたが合意に至らず、相続承継認可は申請断念。新規申請に切り替え、長男が個人事業主として再スタートしましたが、被相続人の経営事項審査の実績は引き継げず、公共工事の入札参加資格が大幅に低下しました。
失敗例③:営業所技術者等の経歴証明が不十分だった
父親(被相続人)が一人で建設業許可を維持していた個人事業の事案。相続承継人となる息子は建設現場で働いていた実務経験はあったものの、当時の工事請負契約書・注文書を父親がほとんど保管していなかったため、10年の実務経験を証明する書類が不足。30日以内に必要書類を集め切れず、要件不充足で却下となりました。
これらの失敗例に共通するのは、相続発生直後の数日間に専門家へ相談しなかったことです。建設業を営む経営者の家族・後継者は、健在のうちから相続承継認可制度の存在を理解し、緊急時の連絡先(顧問行政書士・弁護士)をあらかじめ整えておくことが、最大の予防策となります。
まとめ:相続発生直後の72時間が勝負
建設業許可の相続承継は、死亡後30日以内という法定の絶対期限のなかで、相続関係の確定・相続人全員の同意・複雑な許可要件の証明をすべて完遂しなければならない極めて緊張感の高い手続きです。1日でも期限を過ぎれば認可は下りず、却下されれば許可は死亡日に遡って失効するという、後戻りできない制度設計となっています。
相続発生直後の72時間が、認可成立の成否を決定づけます。葬儀・四十九日と並行しながらも、初動で行政書士・弁護士・司法書士のチームを編成し、戸籍収集・相続人協議・要件充足判断を早期に進めることが、被相続人が築き上げてきた事業を守る最重要アクションです。
建設業許可の相続承継について、相続発生前の備えとして、または相続発生直後の緊急対応として相談されたい方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。譲渡・合併・分割を含む事業承継認可の総論については建設業許可の事業承継とは?認可申請の30日前ルール・必要書類・手続きの流れもあわせてご覧いただけます。建設業許可の取得そのものをご検討の方は建設業許可の要件と建設業許可の取り方もご参照ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続承継認可と法人化(個人事業から法人成り)は同時にできますか?
同時には行えません。相続承継認可は被相続人の個人事業を相続承継人が個人事業として引き継ぐ手続きであり、法人化を伴う場合は別途、譲渡承継認可(個人→法人への譲渡)の手続きが必要です。実務上は、まず相続承継認可で個人事業として引き継ぎ、半年〜1年後に改めて譲渡承継認可で法人化するという二段階アプローチが一般的です。
Q2. 被相続人の経営事項審査の評価点(P点)は引き継げますか?
相続承継認可が成立した場合、被相続人の経営年数・完成工事高・自己資本などの経営事項審査評価項目を引き継ぐことができます。これは公共工事を継続受注するうえで極めて重要なメリットで、新規申請で対応した場合は経営年数が0年から再カウントされ、評価点が大幅下落します。詳細は経営事項審査の完全ガイドをご参照ください。
Q3. 相続承継認可申請中に新規工事を受注しても問題ないですか?
認可決定までは「みなし継承」として被相続人の許可で事業継続ができますが、認可が却下された場合に死亡日に遡って許可が失効するため、申請中の新規受注はリスクを伴います。実務上は、進行中の請負契約は履行を継続し、新規受注は認可決定後に行う方針が安全です。発注元への事情説明と、認可決定までの一時的な待機を依頼することも検討してください。
Q4. 相続承継認可の対象は29業種すべてですか?
はい、建設業法第3条に定める29業種すべてが相続承継認可の対象です。一般建設業許可・特定建設業許可いずれも認可可能で、複数業種を保有していた被相続人の許可をまとめて引き継ぐことができます。特定建設業許可を保有していた場合も同様に承継可能です。
Q5. 相続放棄をする場合、相続承継認可はどうなりますか?
相続放棄をした相続人は、その時点で初めから相続人でなかったとみなされる(民法第939条)ため、相続承継認可の同意権者からも外れます。相続放棄の期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」(民法第915条)ですが、相続承継認可の30日期限とは別物です。事業承継したい相続人と、相続放棄したい相続人が混在する場合は、家庭裁判所への相続放棄申述と相続承継認可申請を並行して進める必要があり、専門家チームのコーディネートが不可欠です。
Q6. 相続承継認可後、すぐに更新時期が来た場合はどうしますか?
相続承継認可で許可番号と有効期限を引き継いだ場合、被相続人の許可有効期限がそのまま適用されます。承継直後に有効期限が迫っているケースでは、承継認可と並行して更新申請の準備も進める必要があります。建設業許可の更新は有効期限の30日前までに申請する必要があるため、承継認可申請と更新申請が重なるタイミングは特に専門家のサポートが重要です。詳細は建設業許可の更新ガイドをご確認ください。