最終更新日: 2026年8月17日
結論から。建設業振興基金が実施していた「CCUSカードリーダーモニター」は、2026年8月4日をもって終了しました。新規に事業者登録した元請会社にカードリーダーを1台無償で貸与していた制度です。
これから現場でCCUSを回す会社は、次のどちらかを自前で用意することになります。
- 建レコ+対応カードリーダー(参考価格 約3,250円〜約30,000円・税別)
- 認定API連携システム(電話発信・顔認証・QRコードなど。20システムが認定)
そして手入力(直接入力)は経審の加点要件を満たしません。ここが今回いちばん効いてくる論点です。
朝礼が終わり、技能者が現場に入っていく。その導線のどこかに、カードをかざす箱が置いてあるかどうか。CCUSが動いている現場と動いていない現場の違いは、実務上ほとんどそれだけです。
その箱を、これまでは新規登録した元請なら無償でもらえました。8月4日で、その入口が閉じました。
この記事でわかること:
- 2026年8月4日に終了したモニター制度の中身(対象・台数・条件)
- カードリーダーを用意する義務は誰にあるのか
- 就業履歴を貯める2つの正規ルートと、直接入力という例外の位置づけ
- 建レコ対応カードリーダー5機種の参考価格と選び方
- 経営事項審査の10点を落とさないための条件
- 埼玉県の県工事なら、この費用を工事代金側で回収できること
目次
2026年8月4日に終わったのは何か|モニター制度の中身

建設キャリアアップシステム事業本部は、2026年8月4日付で「CCUSカードリーダーモニター終了のお知らせ」を公表しました。
文面は短く、「『CCUSカードリーダーモニター』を募集しておりましたが、2026年8月4日をもって終了いたします」というものです。代替措置や後継制度についての記載はありません。
では、終わったのはどういう制度だったのか。2025年3月24日付の募集延長の告知に、条件が具体的に書かれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 募集期間 | 2022年12月1日〜2026年3月31日(延長時点)。ただし募集数到達で終了 |
| 対象者 | 募集期間内に新規に事業者登録し、かつCCUSに現場登録を行った元請会社 |
| 募集数 | 2,000社 |
| 貸与台数 | ①か②のどちらか1台(申込時に選択) |
| ①パソコン活用型 | Windowsのみ対応 → 700台 |
| ②iPhone/iPad活用・ロギング機能活用型 | 1,300台(パソコン Windows でも使用可能) |
| 条件 | 基金が実施するカードリーダーの利用に関する簡単なアンケート調査への協力 |
| 返却 | モニター終了後の返却は不要(引き続き利用可) |
実質的には、条件を満たせばカードリーダーが1台もらえる制度でした。返却不要と明記されていたためです。
「ロギング機能」がなぜ用意されていたか
②に付いていたロギング機能は、カードリーダー本体に一時的に就業履歴を保管する機能です。
告知には、この機能があれば現場にパソコンやiPhone/iPadを置く必要がなく、名刺サイズより少し大きい程度のカードリーダーだけを設置すれば使えると書かれています。
想定されていたのは、パソコンを置く場所すらない小規模現場です。戸建住宅や小規模改修を回している会社ほど、この機能の価値が大きい。裏を返せば、そういう現場こそ今回の終了の影響を受けます。
カードリーダーを用意する義務は誰にあるのか

ここは毎回誤解が起きるところなので、先に整理します。
建設業振興基金の「技能者向け手引き【就業履歴蓄積のポイント】」には、「カードリーダーや関連機器は元請事業者が現場に用意します」と明記されています。
さらに、使用する入退場デバイスは元請事業者が現場ごとに選択するとされています。デバイスによって蓄積方法(カードタッチ・顔認証・電話発信など)が変わるため、技能者は現場管理者に確認するよう案内されています。
つまり、負担が発生するのは元請の側です。下請の立場で「自社でカードリーダーを買わないといけないのか」と心配する必要は、原則としてありません。
ただし前提がひとつあります。あらかじめ所属事業者がCCUSの現場作業員一覧に技能者を適切に登録しておく必要がある、という点です。ここが抜けていると、現場に機器があってもその技能者の履歴は貯まりません。
下請側でやることは「登録」と「カードの携行」
下請・一人親方の側でやることは、機器の調達ではありません。技能者登録を済ませ、施工体制技能者登録に自社の技能者が載っている状態を作り、現場にカードを持っていくことです。
就業履歴は職種分類の大分類コード・小分類コードに従って蓄積されます。どの職種・立場で登録されているかは所属事業者(または代理手続者)が設定するため、ここを取り違えると経験年数の中身がずれます。
就業履歴を貯める2つの正規ルートと、直接入力という例外

CCUSが就業履歴として認識する入退場の方法は、公式には2つです。
| ルート | 内容 | 読み取り方法 |
|---|---|---|
| ①建レコ方式 | 就業履歴登録アプリ「建レコ」と接続したカードリーダー | カードタッチ |
| ②認定API連携システム | 認定を受けた民間の入退場管理・安全管理システムの入退場デバイス | 電話発信・顔認証・QRコード・カードリーダーなど |
| (例外)直接入力 | カードタッチを忘れた場合などの事後補正 | CCUS画面への手入力(元請の承認が必要) |
直接入力について、手引きには「就労翌月末まではCCUSへの直接入力・事後補正により就業履歴を登録できます。ただし、元請事業者の承認が必要です」と注記されています。
期限があり、他社の承認がいる。これを日常の蓄積方法として運用するのは現実的ではありません。
そして後述するとおり、直接入力は経営事項審査の加点要件から明確に外されています。「とりあえず手入力で回しておく」は、点数の面では成立しない選択肢です。
建レコ方式でかかる実額|対応カードリーダー5機種

建レコは基金が提供するアプリで、これ自体に追加の利用料はありません。費用がかかるのは接続するカードリーダーです。
建レコの公式サイトに掲載されている対応機種と参考価格は次のとおりです。
| 機種 | メーカー | 電源 | 推奨利用環境 | ロギング | 参考価格(税別) |
|---|---|---|---|---|---|
| PaSoRi RC-S300シリーズ | ソニー | USBバスパワー | 常設(USB) | なし | 約3,250円 |
| Dragon_CC | サーランド・アイエヌイー | USBバスパワー | 常設(USB) | なし | 約11,000円 |
| BNR01 | TOPPAN | 単4乾電池2本/USB | 常設(USB)・非常設(BLE) | あり | 約30,000円 |
| Dragon_BLE | サーランド・アイエヌイー | 内蔵バッテリー/USB | 常設(USB)・非常設(BLE) | あり | 約30,000円 |
| NR05-BT | ジーエルソリューションズ | USBバスパワー | 非常設(BLE) | なし | 約30,000円 |
選び方は「現場に電源とパソコンを置けるか」で決まる
価格差は約10倍ありますが、性能の優劣ではなく設置条件の違いです。
事務所や詰所に常設できて、Windowsパソコンを置いたままにできる現場なら、最安のPaSoRiで足ります。USB接続の常設型で、追加の電源工事も要りません。
一方、電源もパソコンも置けない現場、朝礼場所が日ごとに変わる現場では、乾電池や内蔵バッテリーで動きロギング機能を持つ機種でないと運用が回りません。ここが約30,000円の帯です。
無償貸与で1,300台が用意されていたのが、まさにこの高い側(iPhone/iPad活用・ロギング機能活用型)でした。金額の大きいほうが無くなったと考えるのが実態に近い。
カードリーダー以外にかかる費用も見ておく
機器は初期費用ですが、CCUSには継続してかかるお金もあります。
- 管理者ID利用料:年額11,400円(税込)/一人親方は2,400円
- 現場利用料:1人日・現場あたり10円(税込)
- 事業者登録料:資本金に応じて0円(一人親方)〜。有効期間5年
- 技能者登録料:インターネット簡略型2,500円/詳細型4,900円
現場利用料は公式サイトの例で、20人の技能者が50日就業した場合は 20人×50日×10円=10,000円 と示されています。カードリーダー代より、こちらのほうが後から効いてきます。
認定API連携システムという選択肢

もう一方のルートが、就業履歴データ登録標準API連携認定システムです。
民間の入退場管理システムや安全管理システムのうち、基金の認定を受けたものがCCUSへ就業履歴データを直接登録できる仕組みです。認定システム一覧には20件が掲載されています。
具体名を挙げると、Buildee(リバスタ)、ANDPAD(アンドパッド)、EasyPass(アート)、WIZDOM(BREXA Technology)、建設現場顔認証入退管理サービス(日本電気)などが並びます。
この方式の利点は、認識手段がカードタッチに限られないことです。電話発信、顔認証、QRコードなど、システムごとに方法が用意されています。
すでに入退場管理を入れている会社は、まず連携の有無を確認する
注意点は2つあります。
1つは、既存の民間システムを使っている現場でもCCUSとの連携が措置されていない場合は別途カードタッチが必要になること。導入済み=自動でCCUSに貯まる、ではありません。
もう1つは、認定API連携システムを使う場合、建レコ用のカードリーダーは使わないという点です。モニターの告知にも「認定API連携システムを活用する方は、このカードリーダーは使用しません」と明記されていました。両方を買う必要はありません。
安全書類や作業員名簿をすでに電子化している会社なら、機器を買い足すより既存システムの認定状況を確認するほうが早い。ここは自社の現在地から逆算する話です。
経審10点は「直接入力によらない方法」でなければ取れない

費用の話をしてきましたが、投資判断の軸になるのは経営事項審査です。
就業履歴蓄積(W1-10)の加点は、令和8年7月1日施行の改正で配点が変わりました。
| 審査項目 | 改正前 | 改正後(令和8年7月1日〜) |
|---|---|---|
| 就業履歴蓄積/民間含む全建設工事 | 15点 | 10点 |
| 就業履歴蓄積/全ての公共工事 | 10点 | 5点 |
| 建設技能者を大切にする企業の自主宣言 | — | 5点(新設) |
適用は令和8年7月1日以降の申請が基準です。審査基準日ではないため、決算が6月以前でも新しい配点で審査されます。
そして加点の要件です。建設業情報管理センターが示す3要件は、①CCUS上での現場・契約情報の登録、②直接入力によらない方法で就業履歴を蓄積できる体制、③申請時に様式第6号の誓約書、です。
②が今回の主題と直結します。カードリーダーも認定API連携システムも無い状態、つまり手入力しか手段がない状態では、この体制要件を満たせません。
もうひとつ落とし穴があります。審査基準日以前1年のうちに審査対象工事を1件も発注者から直接請け負っていない場合は、体制を整えていても加点されません。下請専業で元請受注が無い期間があると、ここで落ちます。
無償貸与が終わったということは、10点を取りに行く入口が有料になったということです。金額としては数千円から数万円。P点を1点動かすコストとして考えれば、判断は難しくないはずです。
埼玉県の県工事なら、この費用は共通仮設費で積める

最後に、埼玉県で公共工事を受けている会社に直接効く話をひとつ。
埼玉県県土整備部は「CCUS活用モデル工事」を実施しており、令和8年4月1日以降に公告する工事は原則すべてが対象です(緊急復旧工事等は対象外とできます)。
実施基準は2つで、①登録技能者率60%以上、②カードリーダー等を設置し、対象者の就業履歴情報の登録を全工事期間行うこととされています。②はまさに今回の機器の話です。
重要なのは費用の扱いです。埼玉県は、カードリーダー等の購入費用や現場でのカードタッチ費用を実績に応じて共通仮設費として積み上げ計上し、変更契約を行うことで、受注者の費用負担を軽減するとしています。
実施基準を達成すると、工事成績評定要領の評価項目「5. 創意工夫」で加点されます。工事成績は経審のZ点や入札の等級に接続していきますから、機器代の話で終わりません。
無償貸与が終わった一方で、県工事の側には費用を積む仕組みがある。この非対称を知っているかどうかで、同じ買い物の意味が変わります。
よくある質問
Q1. モニターの再開や後継制度の予定はありますか?
2026年8月4日付の終了のお知らせに、再開や後継制度の記載はありません。現時点で公表されている情報の範囲では、自前で用意する前提で計画するのが妥当です。
Q2. すでに貸与を受けたカードリーダーは返さないといけませんか?
募集延長の告知に「モニター終了後のカードリーダーの返却は不要です。引き続きご利用ください」と明記されています。手元にあるものはそのまま使えます。
Q3. 一番安く始めるならどの構成ですか?
Windowsパソコンを現場に置ける前提なら、建レコ+PaSoRi RC-S300シリーズ(参考価格 約3,250円・税別)が最小構成です。ただし電源とパソコンを常設できない現場では成立しません。
Q4. スマホだけで就業履歴を貯められませんか?
建レコ方式ではカードリーダーとの接続が前提です。カードリーダーを使わない読み取りを求めるなら、電話発信や顔認証に対応した認定API連携システムを選ぶことになります。
Q5. 一人親方ですが、自分でカードリーダーを買う必要がありますか?
技能者として現場に入る立場では不要です。機器を用意するのは元請事業者とされています。ただし自分が元請として現場を持つ場合は、用意する側になります。
Q6. カードを忘れた日の履歴はどうなりますか?
就労翌月末までであれば、CCUSへの直接入力・事後補正で登録できます。元請事業者の承認が必要です。翌月末を過ぎると補正できないため、月内に処理してください。
Q7. 経審の加点だけが目的なら、現場を1つ登録すれば足りますか?
加点区分は「民間含む全建設工事」で10点、「全ての公共工事」で5点と分かれています。どの範囲まで蓄積体制を取るかで点数が変わるため、1現場だけの運用では上位区分に届きません。
Q8. 補助金でカードリーダー代をまかなえますか?
時期や地域によって使える制度が変わるため、一律には言えません。埼玉県の県土整備部発注工事については、モデル工事の枠組みで共通仮設費として計上する道が用意されています。
まとめ:無償だった入口が閉じた。次は自社の現場条件から逆算する
要点を整理します。
- CCUSカードリーダーモニターは2026年8月4日で終了。新規登録した元請への1台無償貸与(返却不要)だった
- 募集数は2,000社。内訳はパソコン活用型700台、iPhone/iPad活用・ロギング機能活用型1,300台
- カードリーダーは元請事業者が現場に用意する。入退場デバイスの選択も元請が現場ごとに行う
- 正規ルートは①建レコ+カードリーダーと②認定API連携システム(20件)の2つ
- 建レコ対応機種の参考価格は約3,250円〜約30,000円(税別)。差は性能ではなく設置条件
- 直接入力は就労翌月末まで・元請承認必要。経審W1-10の加点要件(直接入力によらない方法)は満たさない
- 令和8年7月1日以降の申請は全建設工事10点/公共工事のみ5点
- 埼玉県の県土整備部工事なら、機器代とカードタッチ費用を共通仮設費で積み上げ変更契約できる
この業界は、機器やソフトの導入が最後まで後回しになりがちです。やる気の問題ではなく、判断材料が手元に無いからそうなる。今回のように「無償だったものが有料になった」タイミングは、その判断材料が一番はっきりする瞬間でもあります。
当事務所は朝霞市・志木市・新座市を拠点に、埼玉県の建設業者のCCUS登録・現場運用・経営事項審査を支援しています。事業者登録から施工体制技能者登録の設定、経審での加点設計までまとめて対応します。
まず確認していただきたいのは2つです。自社が元請として持っている現場に入退場デバイスがあるか。そして、そこで貯まった履歴が経審の申請に使える形になっているか。
この2つが揃っていなければ、10点は取りこぼしたままになります。
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参考にした一次情報
- 建設キャリアアップシステム事業本部「CCUSカードリーダーモニター終了のお知らせ」2026年8月4日(CCUS公式サイト掲載PDF)
- 一般財団法人建設業振興基金 建設キャリアアップシステム事業本部「CCUSカードリーダーのモニター募集を延長」2025年3月24日。募集期間・対象者・募集数2,000社・機種の内訳・返却不要の記載(CCUS公式サイト掲載PDF)
- 一般財団法人建設業振興基金「建設キャリアアップシステム 技能者向け手引き【就業履歴蓄積のポイント】」2021年11月1日作成・国土交通省建設市場整備課監修。入退場デバイスの2方式、元請が用意する旨、直接入力の期限と承認の記載(国土交通省公式サイト(PDF))
- 就業履歴登録アプリケーション「建レコ」カードリーダー情報。対応機種・電源・推奨利用環境・ロギング機能・参考価格(建レコ公式サイト)
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- 国土交通省「〈令和8年7月1日施行〉経営事項審査の主な改正事項」W1-10の配点変更と申請日基準(国土交通省公式サイト(PDF))
- 建設業情報管理センター(CIAC)W1-10 の加点要件。「直接入力によらない方法でCCUS上に就業履歴を蓄積できる体制の整備」および元請受注実績の要件(CIAC公式サイト)
- 埼玉県「CCUS活用モデル工事」対象工事・実施基準・共通仮設費での費用計上(埼玉県公式サイト)