「県の承継認可が下りた。これで三郷市の入札もそのまま引き継げる」——いいえ、引き継げません。
建設業許可の承継認可は埼玉県への手続き、三郷市の入札参加資格の承継は三郷市長への別手続きです。しかも三郷市の規程は「営業の一切を継承した日から90日以内」という独自の期限を定めています。
県の認可に安心して市への申請を忘れると、許可は繋がったのに指名が来ない、という事態が起こり得ます。
三郷市は埼玉県の東南端にあり、東は江戸川を隔てて千葉県流山市・松戸市、南は大場川と小合溜井を境に東京都葛飾区、西は中川を境に草加市・八潮市、北は吉川市と接しています。
三郷インターチェンジを中心に首都高速6号三郷線・常磐自動車道・東京外かく環状道路が集まり、平成17年のつくばエクスプレス開通以降は三郷中央土地区画整理事業や新三郷ららシティ地区の整備が進んできました。令和8年8月1日現在の人口は141,850人、69,932世帯です。
この立地は、市内の建設業者に「三郷市・草加市・八潮市・葛飾区・松戸市の仕事を1社で回す」という営業圏をもたらしました。裏を返せば、代替わりのときに関わる役所が多いということでもあります。
この記事では、三郷市で建設業を営む会社の代替わり・M&A・相続を検討している経営者と後継者に向けて、埼玉県への承継認可と三郷市への入札参加資格の承継を、一次情報にもとづいて整理します。
この記事でわかること:
- 三郷市の建設業者が事業承継で関わる3つの役所と、その役割分担
- 県の承継認可と、三郷市の入札参加資格の承継が別手続きである理由
- 取り違えやすい「30日」と「90日」の期限の整理
- 承継で引き継げるもの・引き継げないもの(監督処分も含む)
- 三郷市特有の5業種上限・等級区分・隔年度審査が承継に与える影響
- 逆算スケジュールの組み方
目次
三郷市の建設業者が事業承継で関わる3つの役所

まず、どこに何を出すのかを整理します。三郷市の建設業者が代替わりするとき、関わる役所は最大で3つです。
| 役所 | 担当すること | 担当しないこと |
|---|---|---|
| 埼玉県 県土整備部 建設管理課 建設業担当 | 建設業許可の承継認可(事前相談・申請の受付・審査) | 市の入札参加資格 |
| 三郷市(市長) | 三郷市の入札参加資格の承継申請の受付 | 建設業許可そのもの |
| 越谷県土整備事務所 | 三郷市を含む県東部の道路・河川などの県土整備行政 | 建設業許可・承継認可の受付 |
ここで誤解が生まれやすいのが、越谷県土整備事務所の位置づけです。三郷市は春日部市・草加市・越谷市・八潮市・吉川市・松伏町とともに越谷県土整備事務所の管轄区域に入っています。
しかし建設業許可や承継認可の窓口は県庁の建設管理課であり、県土整備事務所ではありません。「県土整備事務所が近いからそこへ」という発想は、この手続きでは通用しません。
埼玉県の手引きによれば、申請先が埼玉県になるのは、ア 承継元が埼玉県知事許可を受けている、イ 承継後の営業所がすべて埼玉県内にある、の両方を満たす場合です。
三郷市の会社が江戸川や中川を越えて東京都・千葉県に営業所を出しているケースでは、この「イ」を満たさなくなります。その場合の提出先は、承継後の主たる営業所の所在地を管轄する国土交通省の地方整備局です。都県境の街だからこそ、事前の確認が要ります。
県の承継認可と、三郷市の入札参加資格は別レイヤー

建設業許可の承継認可は、建設業法第17条の2(事業譲渡・合併・分割)と第17条の3(相続)にもとづく制度です。認可を受けると、承継先は承継元の建設業者としての地位を引き継ぎます。
ここでいう地位とは、許可を受けたことによって発生する権利と義務の総体を指します。つまり法律上の許可の話であって、個々の発注者が持つ入札参加者名簿とは別の世界です。
三郷市の入札参加資格は、市の規程がまったく独立に定めています。根拠は三郷市建設工事請負等入札参加者の資格等に関する規程(平成6年11月30日告示第127号)です。
この規程の第11条第1項は、次のように定めています。
合併又は営業譲渡により、資格審査を申請した者から当該営業の一切を継承した者が、その参加資格を承継しようとするときは、関係書類を添えて、営業の一切を継承した日から90日以内に市長に申請しなければならない。
県が認可したかどうかとは無関係に、市長への申請が別途必要です。しかも90日という期限が明記されています。
注意したいのは、この90日は「継承した日から」の事後カウントだという点です。県の承継認可が「事実発生日より前」に済ませる事前手続きであるのと、時間の向きが逆になります。
そして市の規程の書きぶりは、市ごとに本当に違います。近隣でいえば八潮市の規程には承継申請の期限の定めがありません。「隣の市と同じはず」という前提が、この分野では最も危険です。
「30日」と「90日」を取り違えない

事業承継の相談で最も多い取り違えが、期限の混線です。似た数字が別の意味で登場するため、整理して覚えるしかありません。
| 手続き | 期限 | 向き | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 事業譲渡・合併・分割の承継認可 | 承継の事実発生日の30日前までに申請を完了 | 事前 | 埼玉県の手引き(運用) |
| 相続による承継認可 | 被相続人の死亡後30日以内に申請 | 事後 | 建設業法第17条の3 |
| 営業所技術者等を承継予定日に変更する場合の変更届 | 承継の日から2週間以内 | 事後 | 埼玉県の手引き |
| 三郷市の入札参加資格の承継申請 | 営業の一切を継承した日から90日以内 | 事後 | 三郷市規程第11条第1項 |
「30日前」は法定の期限ではない
ここは特に誤解が多いところです。事業譲渡・合併・分割について、建設業法が定めているのは「承継の事実が発生する前に認可を受けること」であって、「30日前までに申請せよ」という法定期限ではありません。
埼玉県の手引きは、実務上の運用として「遅くとも、承継の事実発生日の30日前までに申請を完了させてください。不足書類がある場合、受付は一切できません」と求めています。
したがって30日前は「法律の締切」ではなく「県の受付の締切」です。ほかの都道府県では別の運用値が使われており、そのまま持ち込むと合いません。
相続の「30日以内」は死亡日が起算点
相続の場合、建設業法第17条の3は「被相続人の死亡後三十日以内」に認可を受けなければならないと定めています。
起算点は相続の開始を知った日ではなく、死亡日です。ここを読み違えると、数日の差で受理されず新規許可の申請からやり直しになります。
相続は突然起きます。だからこそ、社長が現役のうちに書類の所在と手続きの流れを共有しておくことが、実務上いちばん効きます。
承継で引き継げるもの・引き継げないもの

「許可が引き継げる」と聞くと、会社にまつわる一切が繋がるように感じますが、実際には線引きがあります。
| 項目 | 承継認可で引き継げるか |
|---|---|
| 承継元が受けていた建設業許可 | 引き継げる |
| 承継元が受けた経営事項審査の結果 | 引き継ぐ(地位に当然に含まれる) |
| 承継元が受けた監督処分 | 引き継ぐ(地位に当然に含まれる) |
| 法に定める罰則 | 引き継がない(違法行為を実際に行った者に適用) |
| 三郷市の入札参加資格 | 自動では引き継がない(市長への申請が必要) |
見落とされがちなのが、監督処分まで引き継ぐという点です。M&Aで会社を譲り受ける側は、相手方の処分歴を必ず確認してください。
また、承継には形式面の制約もあります。埼玉県の手引きは、承継元が営んでいた建設業の全部を承継させる場合に限り承継が可能で、一部の業種のみを承継させることはできないとしています(認可申請の前に一部の業種を廃業し、残りを全て承継させるのは差し支えありません)。
さらに、承継元と承継先が同じ業種の許可を持っている場合は、一般・特定の区分が同じときに限り承継できます。1つの業者が同一業種で一般と特定を同時に持つことはできないためです。
技術者の面も要注意です。承継予定日以降の営業所技術者等は、原則として従前の者が引き続き常勤している必要があります。承継予定日に技術者を入れ替える場合は、承継の日から2週間以内に変更届の提出が求められます。
三郷市の入札を続けるなら知っておきたい3つの規程

承継後も三郷市の公共工事を受注していくつもりなら、市の規程そのものを読んでおく必要があります。特に効いてくるのが次の3点です。
1. 登録できるのは5業種まで
規程第3条第5項は、資格審査を受けることができる業種の数を「主たる営業所及び代理人を置く営業所と合算して5以内」と定めています。営業所ごとに同じ業種で資格審査を受けることもできません。
ここが承継と直結します。2社が合併して許可業種が7業種・8業種になっても、三郷市の入札に登録できるのは5業種までです。
つまり承継のタイミングは、「どの業種で市の仕事を取りにいくか」を選び直す機会でもあります。許可を増やすことと、入札で使えることは別問題だ、という発想の切り替えが要ります。
2. 等級は工事の種類で段数が違う
規程第6条により、土木工事業と建築工事業はA級・B級・C級・D級の4級に、それ以外の建設工事はA級・B級・C級の3級に区分されます。
そして第13条第1項が、等級ごとの発注標準額を定めています。承継によって経営事項審査の結果が引き継がれる以上、等級の位置づけも承継元の実績を土台に決まっていくことになります。
3. 定期の資格審査は隔年度
規程第3条第1項は、建設工事の請負に係る定期の資格審査を「隔年度に実施するものとする。ただし、市長が必要と認める場合は、随時実施することができる」と定めています。
毎年の受付ではないという点が実務では重い意味を持ちます。定期審査のサイクルと承継のタイミングが噛み合わないと、次の機会まで待つことになりかねません。
なお、規程第2条第3項により、名簿に登載されていても、その業種について建設業法第3条第1項の許可を受けていないとき、または同法第27条の23第1項の経営事項審査を受けていないときは、当該業種の競争入札に参加できません。許可と経審は入口条件です。
三郷市の会社で事業承継が止まる典型パターン

「県が認可したから終わり」で止まる
いちばん多いのがこれです。県の認可通知書が届いた時点で手続きが完了したと思い込み、市への申請をしないまま90日が過ぎてしまう。
認可通知書は全ての申請者に郵送されますが、再発行はできません。承継先が許可を有していることの証明は、承継の事実発生後に窓口で「建設業許可証明書」(400円/枚)を取ることになります。
営業所を都県境の外に動かしてしまう
三郷市の会社は、葛飾区や松戸市・流山市に事務所を構える判断がしやすい立地にあります。
ところが承継後の営業所が1つでも埼玉県外にあると、承継認可の提出先が埼玉県ではなく地方整備局になります。承継と拠点移転を同時に走らせると、窓口ごと変わるという事故が起きます。
持参できる人の手が空いていない
埼玉県の承継申請は、すべて持参による受付です。郵送および電子申請による受付は行われていません。受付時間は月曜日から金曜日(祝日・12月29日から1月3日を除く)の午前9時から11時、午後1時から4時15分です。
手数料はかかりませんが、県庁まで人が出向く時間は必ず要ります。現場が動いている会社ほど、この段取りが後回しになりがちです。
三郷市の事業承継スケジュールを逆算する

ここまでの期限を、実際の順番に並べ替えます。事業譲渡・合併・分割のケースを想定した組み立てです。
- 承継予定日を決める。ここが全ての起点になります。
- 県の建設管理課建設業担当に事前相談する。手引きは、事前相談なく申請すると不備の補正に時間がかかり、承継の事実発生までに認可ができないおそれがあると明記しています。
- 承継予定日の30日前までに申請を完了させる。不足書類があると受付されないため、書類は前倒しで揃えます。
- 許可番号をどちらにするか決める。原則は承継元の番号ですが、承継前から承継先も埼玉県知事許可を受けている場合は選択でき、一度選んだら変更できません。
- 承継日を迎える。有効期間の起算点は承継の日の翌日(建設業法第17条の2第7項)なので、次の更新までの許可期間は5年と1日になります。
- 技術者を入れ替えるなら、承継の日から2週間以内に変更届を出します。
- 継承した日から90日以内に、三郷市長へ入札参加資格の承継を申請する。ここまでやって、ようやく一連の手続きが終わります。
建設業は、制度が複雑なわりに情報が現場に降りてこない業界です。だからこそ、順番と期限を紙に書き出せている会社だけが、代替わりの年に仕事を落とさずに済みます。
やる気で乗り切る話ではなく、逆算表を1枚作れば済む話です。
三郷市の建設業の事業承継に関するよくある質問(FAQ)
Q. 三郷市の建設業者が事業承継するとき、許可の承継認可はどこに申請しますか?
承継元が埼玉県知事許可を受けていて、承継後の営業所がすべて埼玉県内にある場合、提出先は埼玉県県土整備部建設管理課建設業担当です。
三郷市役所や越谷県土整備事務所は、建設業許可・承継認可の窓口ではありません。申請はすべて持参による受付で、郵送および電子申請による受付は行われていません。
Q. 県の承継認可を受ければ、三郷市の入札参加資格もそのまま引き継げますか?
引き継げません。三郷市の規程第11条第1項は、合併または営業譲渡により営業の一切を継承した者がその参加資格を承継しようとするときは、関係書類を添えて営業の一切を継承した日から90日以内に市長に申請しなければならないと定めています。
県への承継認可とは別に、市長への申請が必要です。期限も向きも違うため、両方をスケジュールに載せてください。
Q. 承継認可はいつまでに申請すればよいですか?
事業譲渡・合併・分割は、承継の事実が発生する前に認可を受ける必要があります。埼玉県の手引きでは、遅くとも承継の事実発生日の30日前までに申請を完了させるよう求めています。
相続の場合は、被相続人の死亡後30日以内の申請です。前者は事前・後者は事後と方向が逆なので、混同しないでください。
Q. 事業承継で業種が増えても、三郷市の入札登録はすべての業種でできますか?
できません。三郷市の規程第3条第5項は、資格審査を受けることができる業種の数を、主たる営業所および代理人を置く営業所と合算して5以内と定めています。
承継で許可業種が増えても市の入札に登録できるのは5業種までのため、どの業種を登録するかを選ぶ必要があります。
Q. 承継元が受けた監督処分も引き継ぐことになりますか?
引き継ぎます。埼玉県の手引きは、承継先が承継する「建設業者としての地位」には、承継元が受けていた許可だけでなく、承継元が受けた監督処分や経営事項審査の結果も当然に含まれると明記しています。
ただし法に定める罰則は、違法行為を実際に行った者に対して適用されるため、承継の対象にはなりません。
Q. 承継の手数料はいくらかかりますか?
埼玉県の手引きは、承継認可の申請手数料について「手数料はかかりません」としています。新規許可の申請手数料とは扱いが異なります。
ただし承継後に建設業許可証明書が必要になる場合は、1枚400円の手数料がかかります。
まとめ:三郷市の事業承継は「県」と「市」の二段構え
三郷市で建設業を承継するときの要点を、もう一度まとめます。
- 建設業許可の承継認可は埼玉県 建設管理課へ。三郷市役所でも越谷県土整備事務所でもない
- 事業譲渡・合併・分割は事実発生日の30日前までに申請完了(県の運用)。相続は死亡後30日以内(法第17条の3)
- 三郷市の入札参加資格は継承した日から90日以内に市長へ申請(規程第11条第1項)。自動では繋がらない
- 承継は建設業の全部が対象。監督処分も経審の結果も引き継ぐ
- 市の入札登録は5業種まで。承継で許可が増えても増枠されない
- 県への申請は持参のみ・手数料無料。事前相談が前提
都県境に位置する三郷市の会社ほど、営業圏が広いぶん関わる役所が増えます。承継の年に窓口を1つ取りこぼすと、それまで積み上げた指名の実績が一度切れてしまいかねません。
逆に言えば、順番さえ間違えなければ、許可も経審の結果も等級の土台も、そのまま次の代へ渡せます。渡せる資産を持っている会社が、それを知らないまま畳んでしまうのがいちばんもったいない。
三郷市・吉川市・八潮市・草加市など県東部で建設業を営んでいて、代替わりや譲渡を検討されている方は、承継予定日が固まる前の段階でご相談ください。県への事前相談と市への申請を1本のスケジュールに落とし込むところから、お手伝いします。
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