最終更新日: 2026年8月14日
結論から。国土交通省の「CCUSレベル別年収」が令和8年4月に改定されました。関東ブロックの全職種平均は次のとおりです。
- レベル1:標準値418万円 〜 目標値567万円以上
- レベル2:標準値470万円 〜 目標値635万円以上
- レベル3:標準値500万円 〜 目標値704万円以上
- レベル4:標準値606万円 〜 目標値800万円以上
この2つの数字は役割が違います。目標値は「これ以上を推奨」、標準値は下回ると請負契約で労務費ダンピングの恐れがないか重点的に確認されるラインです。なお、この金額に法的拘束力はありません。
令和8年4月、CCUSの能力評価分野は43分野から46分野に増え、適用される公共工事設計労務単価も令和8年3月のものに更新されました。
数字が動いたということは、比べられる基準が動いたということです。自社の賃金台帳と並べたとき、どこに立っているのか。
この記事は、公表された数字そのものと、その数字が実務でどう効くのかを整理します。
この記事でわかること:
- 令和8年4月改定で何が変わったのか(46分野・令和8年3月単価)
- 全国と関東ブロックの、レベル別の具体的な金額
- 「目標値」と「標準値」の役割の違いと、下回ったときに起きること
- 関東ブロックの分野別(職種別)の水準
- レベル判定を受けていない技能者がどう扱われているか
目次
CCUSレベル別年収とは|令和8年4月改定で変わった2点

CCUSレベル別年収は、国土交通省が公表している試算値です。
CCUSの能力評価に応じた賃金の実態を踏まえ、公共工事設計労務単価が賃金として支払われた場合に考えられるレベル別年収を算出したもの、と位置づけられています。
目的は明快です。技能者の経験に応じた処遇を示し、若い世代がキャリアパスの見通しを持てる産業にすること。要するに「10年やればここまでいく」を数字で見せる仕組みです。
令和8年4月改定のポイント
| 項目 | 令和7年12月改定 | 令和8年4月改定 |
|---|---|---|
| 能力評価分野の数 | 43分野 | 46分野 |
| 追加された分野 | — | 都市トンネル/道路等法面保護工事/斜面防災 |
| 適用する設計労務単価 | 令和7年3月単価 | 令和8年3月単価 |
もとになっているデータは公共事業労務費調査(令和7年10月調査)です。実際に支払われている賃金の調査結果を、CCUSの能力評価分野・レベル別に分析して作られています。
机上の理想値ではなく、実態の統計から引いた線だという点は押さえておいてください。
全国と関東ブロックの数字

まず全職種平均を、全国と関東で並べます。埼玉県の建設業者が見るべきなのは関東ブロックの列です。
| レベル | 全国(標準値〜目標値) | 関東ブロック(標準値〜目標値) |
|---|---|---|
| レベル1 | 395 〜 535万円以上 | 418 〜 567万円以上 |
| レベル2 | 444 〜 599万円以上 | 470 〜 635万円以上 |
| レベル3 | 472 〜 664万円以上 | 500 〜 704万円以上 |
| レベル4 | 572 〜 754万円以上 | 606 〜 800万円以上 |
関東は全国平均より、どのレベルでも高く出ています。レベル4の目標値では約46万円の差です。
地域ブロックで水準が違うのは、設計労務単価そのものが地域別に設定されているためです。「全国の数字を見ていたら自社は足りていた」という誤解が起きやすい箇所なので、必ず関東で見てください。
他ブロックとの比較
参考までに、レベル3の標準値〜目標値を並べます。
- 関東:500 〜 704万円以上
- 東北:498 〜 701万円以上
- 中部:498 〜 701万円以上
- 近畿:462 〜 651万円以上
- 中国:403 〜 568万円以上
関東が最も高い水準です。同じ職種・同じレベルでも、地域で100万円以上の差がつくことがあります。
「目標値」と「標準値」は役割が違う

ここがこの制度のいちばん重要な部分です。2つの数字は、単なる上限・下限ではありません。
| 区分 | 作り方 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 目標値 | 労務費調査の各レベルの標本において平均以上の水準 | 適正な賃金として、これ以上の支払いを推奨 |
| 標準値 | 当該ブロックの下位15%程度の年収相当 | 下回る事業者は、請負契約において労務費ダンピングの恐れがないか重点的に確認 |
つまり標準値は「最低賃金」ではなく、チェックが入る境界線として設計されています。
労務費ダンピングという言葉が出てくる以上、これは賃金の話であると同時に請負代金の話です。安く受けた工事のしわ寄せが職人の年収に出ていないか、という視点で見られます。
法的拘束力はない、が無視もできない
国土交通省は資料の中で明記しています。「本資料に示す金額に法的拘束力はなく、支払いを義務付けるものではない」。
この一文は正確に理解してください。払わなければ罰則、という制度ではありません。
一方で、令和7年12月に施行された労務費に関する基準は、著しく低い労務費による見積り・契約を禁止しています。年収の水準と請負代金の水準は、別々の話ではなくなりました。
罰則の有無で判断するのは、経営としては筋が悪い。見られる基準が公表された、という事実のほうが重要です。
関東ブロックの分野別(職種別)の水準

全職種平均は目安にすぎません。実際は分野によって大きく開きます。関東ブロックから、中小建設業に多い分野を抜き出します。
| 能力評価分野 | レベル1(標準値〜目標値) | レベル4(標準値〜目標値) |
|---|---|---|
| 建築大工 | 420 〜 568万円以上 | 611 〜 811万円以上 |
| 型枠 | 447 〜 604万円以上 | 650 〜 862万円以上 |
| 鉄筋 | 453 〜 612万円以上 | 658 〜 873万円以上 |
| 左官 | 479 〜 650万円以上 | 685 〜 909万円以上 |
| 内装仕上工事 | 472 〜 638万円以上 | 686 〜 910万円以上 |
| 電気工事 | 393 〜 563万円以上 | 588 〜 823万円以上 |
| 配管 | 368 〜 528万円以上 | 551 〜 771万円以上 |
| 鳶・土工 | 442 〜 598万円以上 | 643 〜 853万円以上 |
| 解体 | 430 〜 581万円以上 | 623 〜 819万円以上 |
| 建築板金 | 490 〜 663万円以上 | 713 〜 946万円以上 |
同じレベル1でも、配管の368万円と左官の479万円では100万円以上の開きがあります。「業界の相場」で語れる話ではありません。
なお標本数が不足している分野は年収が算定されていません。その場合は他ブロックの同分野が参考になるとされています。
能力評価基準が未策定の職種や、対応する設計労務単価の職種が存在しない場合も算定されておらず、参考値として「特殊作業員」「普通作業員」の年収が示されています。
そのレベル判定は、どう決まっているのか

ここで疑問が出ます。労務費調査の対象になった技能者が、全員CCUSのレベル判定を受けているわけではありません。
国土交通省は、レベル評価されていない標本について経験年数と資格をもとにレベルを推定しています。
| 推定されたレベル | 基準 |
|---|---|
| レベル1相当 | 経験5年未満 |
| レベル2相当 | 経験5年以上10年未満 |
| レベル3相当 | 経験10年以上 または 一級技能士 |
| レベル4相当 | 登録基幹技能者 |
この推定基準は、自社の技能者がどのあたりに位置するかを見積もるときに使えます。CCUSの能力評価(レベル判定)を受けていなくても、おおよその見当はつきます。
ただし推定はあくまで統計処理上の話です。経審の加点も、元請からの評価も、実際にレベル判定を受けていなければ動きません。
レベル4の目標値が800万円と示されても、そのレベル4は登録基幹技能者という具体的な資格を指しています。数字だけ見て「うちのベテランも同じ」とはなりません。
埼玉の中小建設業が、いま打てる手

数字を見たあと、何から着手するか。順番を間違えると原資が続きません。
①レベルの分布を把握する
まず自社の技能者がどのレベルに何人いるかを出します。CCUSに登録していない技能者がいれば、そこが起点です。
登録が済んでいれば、能力評価の申請でレベルが確定します。この段階では賃金を動かす必要はありません。地図を作る作業です。
②レベル別の賃金テーブルに落とす
次に、レベルと賃金の対応を社内で決めます。レベル別賃金テーブルの作り方で扱っている手順です。
ここで公表値をそのまま自社の基準に据える必要はありません。標準値との距離を把握し、どこから埋めるかを決めるのが実務です。
③請負代金の側を整える
賃金は原資がなければ上がりません。だから最後は見積の話になります。
労務費に関する基準は、単価×歩掛×数量で労務費を積算する考え方を示しています。値引きの調整弁を労務費に置かない、という一点だけでも変わります。
あわせて令和8年7月1日施行の経審改正も確認してください。CCUS関連の配点が変わり、労務費見積尊重宣言による加点が新設されています。
この業界の「見えにくさ」は、そのまま機会でもある
建設業は、賃金水準が外から見えにくい産業でした。だから若い人が入ってこない、という循環が長く続いています。
公表値が出たということは、その見えにくさが崩れ始めたということです。求職者は、この数字を見て応募先を選びます。
やる気で人を集める時代ではありません。レベルを判定し、テーブルを作り、数字で示す。仕組みを整えた会社から順に、採用で先に立ちます。
CCUSレベル別年収に関するよくある質問(FAQ)
Q1. CCUSレベル別年収とは何ですか?
国土交通省が、CCUSの能力評価に応じた賃金の実態を踏まえ、公共工事設計労務単価が賃金として支払われた場合に考えられるレベル別年収を算出して公表しているものです。公共事業労務費調査の結果をもとに作成されています。
Q2. 目標値と標準値はどう違いますか?
目標値は各レベルの標本の平均以上の水準で、これ以上の支払いが推奨されます。標準値は下位15%程度の年収相当で、下回る事業者は請負契約において労務費ダンピングの恐れがないか重点的に確認されます。
Q3. 関東ブロックの金額を教えてください。
全職種平均で、レベル1が418〜567万円以上、レベル2が470〜635万円以上、レベル3が500〜704万円以上、レベル4が606〜800万円以上です(令和8年4月改定)。
Q4. この金額を支払う法的義務はありますか?
ありません。国土交通省は「本資料に示す金額に法的拘束力はなく、支払いを義務付けるものではない」と明記しています。ただし標準値を下回る場合の確認の仕組みは示されています。
Q5. 令和8年4月改定では何が変わりましたか?
能力評価分野が43分野から46分野へ増え(都市トンネル・道路等法面保護工事・斜面防災を追加)、適用する設計労務単価が令和7年3月単価から令和8年3月単価に更新されました。
Q6. レベル判定を受けていない技能者はどう扱われていますか?
統計上は経験年数と資格で推定されています。レベル1相当が経験5年未満、レベル2相当が5年以上10年未満、レベル3相当が10年以上または一級技能士、レベル4相当が登録基幹技能者です。
Q7. 自社の賃金が標準値を下回っていたら、すぐ違反になりますか?
直ちに違反となる制度ではありません。ただし請負契約において労務費ダンピングの恐れがないか重点的に確認する対象になるとされているため、見積・契約の記録を整えておくことをおすすめします。
Q8. 何から手をつければよいですか?
順番は、①技能者のCCUS登録と能力評価でレベル分布を把握、②レベル別賃金テーブルの設計、③請負代金側で労務費を確保する見積への切り替え、です。原資の確保より先に賃金だけ動かすと続きません。
まとめ:数字は出た。次は自社の位置を測る
要点を整理します。
- CCUSレベル別年収が令和8年4月に改定。43分野→46分野、設計労務単価は令和8年3月単価を適用
- 関東ブロック全職種平均は、レベル1が418〜567万円以上、レベル4が606〜800万円以上
- 目標値=平均以上の水準で、これ以上の支払いを推奨
- 標準値=下位15%程度。下回ると請負契約で労務費ダンピングの恐れがないか重点的に確認される
- 金額そのものに法的拘束力はない(国土交通省が明記)
- レベル4相当は登録基幹技能者。数字だけ見て自社のベテランを当てはめない
公表されたのは、比較のための物差しです。物差しが出た以上、測られる側になります。元請にも、発注者にも、求職者にも。
当事務所は朝霞市・志木市・新座市を拠点に、埼玉県の建設業者のCCUS登録・能力評価・経審を支援しています。技能者名簿とレベルの棚卸しから、経審での加点設計までまとめて対応します。
まずは自社の技能者が何人いて、そのうち何人がレベル判定を受けているか。この2つの数字が出せるかどうかが、最初の分かれ目になります。
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参考にした一次情報
- 国土交通省「CCUSレベル別年収の概要(令和8年4月改定)」ブロック別・分野別の目標値/標準値、算出の考え方、改定のポイント(令和8年7月1日訂正)(国土交通省 労務費ポータル掲載資料(PDF))
- 国土交通省 報道発表「建設キャリアアップシステム(CCUS)におけるレベル別年収の公表」公表の目的と試算の前提(国土交通省公式サイト)
- 建設キャリアアップシステム 公式サイト(CCUS公式サイト)