結論:令和8年7月1日施行の経営事項審査改正で、CCUSの就業履歴蓄積に対する加点は民間を含む全工事で15点→10点、公共工事のみで10点→5点に引き下げられました。

ただし同時に、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」の宣言の有無が5点の加点項目として新設されています。両方に取り組む会社にとって、差し引きの点数は変わりません。

そしてこの改正は審査基準日ではなく「令和8年7月1日以降の申請」で適用されます。決算が6月以前でも、これから出す申請には新しい配点が効きます。

「CCUSを頑張ってきたのに、経審の点数が減らされた」——そう聞こえる改正です。実際は違います。

減った5点と同額の5点が、別の名前で新設されました。取りに行けば元に戻ります。

ただし新設された5点は、CCUSから降りる会社のための救済ではありません。むしろCCUSにもう一歩踏み込んだ会社だけが取れる5点です。中身を見ると、その設計が明確に読み取れます。

この記事では、令和8年7月1日施行の経審改正について、公布資料の原文に当たりながら「何が減り、何が増え、いつから効くのか」を整理します。

令和8年7月1日施行|経審改正の全体像は4項目

官公庁の庁舎を見上げた外観。令和8年7月1日施行の経営事項審査改正の全体像を示すイメージ

今回の改正は、令和8年2月6日に公布されました(国土交通省令第6号・国土交通省告示第262号)。施行は令和8年7月1日です。

国土交通省が示した改正の視点は3つ。①担い手の育成・確保、②災害対応力の強化、③建設業許可要件の改正を踏まえた見直しです。

この3つの視点から、実際の審査項目は次の4点が動きました。いずれも「その他審査項目(社会性等)=W」の中の変更です。

改正項目 改正前 改正後
就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況(CCUS)/民間工事を含む全ての建設工事 15点 10点
同上/全ての公共工事 10点 5点
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無 5点(新設)
建設機械の保有状況(W7) 9機種 不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャを追加
雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況(W1-1〜W1-3) 未加入で各▲40点 審査項目から削除

出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」

そして最も見落とされやすいのが、適用のタイミングです。

改正資料は各ページの右上に「令和8年7月1日以降の申請で適用」と明記しています。基準は審査基準日(決算日)ではなく申請日です。

つまり3月決算の会社が、令和8年3月31日を審査基準日として今から申請しても、適用されるのは新しい配点です。「決算が改正前だから旧配点」という理解は誤りになります。

CCUS加点(W1-10)が15点→10点に|何が起きたのか

現場休憩所で作業員が壁の読み取り端末に手をかざす様子。CCUSの就業履歴蓄積(W1-10)のイメージ

今回の主役は「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」、いわゆるW1-10です。

この項目は審査基準日が令和5年8月14日以降である場合に評価されるもので、CCUSの現場運用を経審に反映させる入口として機能してきました。

改正による点数の動きは次のとおりです。

実施範囲 改正前 改正後
民間工事を含む全ての建設工事 15点 10点 ▲5点
全ての公共工事 10点 5点 ▲5点

加点の要件そのものは変わっていません。①CCUS上での現場・契約情報の登録、②技能者が直接入力によらない方法で就業履歴を蓄積できる体制、③経審申請時の誓約書の提出——この3つがそろって初めて評価されます。

②の「直接入力によらない方法」とは、要するにカードリーダーや顔認証端末のことです。技能者が自分で入力する運用では要件を満たしません。

ここが実務で最もつまずく点です。事業者登録と技能者登録まで済ませて安心してしまい、現場に読み取り機器が入っていないまま経審を迎える会社が少なくない領域です。

詳しい仕組みはCCUSは経営事項審査で加点される?W評価の仕組みで解説していますが、点数の水準については本記事の数字が最新です。

新設された5点|「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」とは

経営者が万年筆で書面に署名する手元。建設技能者を大切にする企業の自主宣言(職人いきいき宣言)のイメージ

減った5点の受け皿として新設されたのが、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無という評価項目です。加点は5点。

愛称は「職人いきいき宣言」。令和7年12月3日に国土交通省が報道発表し、令和7年12月12日から申請受付が始まりました。

制度の背景には、令和6年7月に策定された「建設キャリアアップシステム利用拡大に向けた3か年計画」があります。改正建設業法に基づく取組とCCUSを活用した取組を一体として処遇改善を図る、という方向づけです。

宣言の手続きは、国土交通省のポータルサイト(jishusengen.mlit.go.jp)から行います。押さえておきたい前提は次のとおりです。

  • 代表者の名前で宣言するもの
  • 登録後は企業名・代表者名を含む宣言文がポータルサイトに公開される
  • 立場は元請事業者・下請事業者・発注者のいずれか一つを選択(重複して宣言することはできない)
  • 取組開始日は申請時に設定する1年以内の日。将来実施予定の内容を宣言することも可能だが、取組開始日までにすべての取組が開始されている必要がある
  • 宣言企業はシンボルマークと愛称を自社ホームページ等で使用でき、国交省サイトで公表される

経審での加点要件は、審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書が提出されていることです。誓約の内容は、宣言した取組について取組開始日以降に行う、または行っている旨の誓約とされています。

ここが実務上の分岐点になります。加点は「宣言した日」ではなく「審査基準日との前後関係」で決まるため、次の決算日までに宣言を済ませておかないと、その回の経審には間に合いません。

自主宣言の必須項目|結局CCUSを深くやることになる

更衣室のロッカー列の前に立つ作業員。雇用する全技能者の詳細型技能者登録のイメージ

「宣言するだけで5点」と読めてしまいますが、宣言の中身には必須項目があります。ガイドラインは3つの分類を掲げています。

分類 必須項目の内容(抜粋)
ア)労務費確保・賃金支払い等のための取組 自社様式の見積書に労務費・材料費等の内訳を明示/下請から提出された内訳明示の見積書の内容を考慮・尊重/技能者の適切な処遇を確保するための取組/担い手の育成/国が行う調査への協力
イ)CCUSの活用 元請は「全ての現場でCCUS利用技能者が就業履歴を蓄積するよう環境整備・履歴蓄積の促進」または「CCUS利用技能者が就業履歴を蓄積できる環境整備」のいずれかが必須。技能者を雇用している場合は「雇用する全ての技能者の詳細型技能者登録」も必須。下請は雇用する全技能者の詳細型登録が必須
ウ)宣言企業との取引優先 取引先の選定に当たり、宣言を行っていることを考慮すること

注目すべきはイ)です。自主宣言の必須項目に、CCUSの環境整備と詳細型の技能者登録が組み込まれています。

つまり「CCUSの点が減ったから自主宣言で埋めよう」と考えて申請に進むと、その入口でCCUSの深掘りを求められる設計になっています。

詳細型の技能者登録は、簡略型(2,500円)より高い4,900円がかかり、保有資格や社会保険の情報まで登録するものです。CCUSの技能者登録を簡略型で済ませてきた会社は、ここで登録内容の切り替えが必要になります。

制度の狙いは明快です。登録しただけの会社と、現場で動かして処遇改善につなげている会社を、点数で分ける。W1-10の配点を下げて自主宣言に振り分けたのは、その線引きを一段はっきりさせる措置だと読めます。

ウ)の「取引先の選定に当たり宣言を行っていることを考慮する」という項目も見逃せません。宣言企業が増えるほど、下請として選ばれる側にも宣言の有無が効いてくる構造になっています。

社会保険の減点(各▲40点)が消えた影響

夕方の住宅街で作業服の男性を子どもが出迎える様子。社会保険加入と暮らしの土台のイメージ

今回の改正でもう一つ大きいのが、社会保険加入に関する評価項目の削除です。

改正前は、雇用保険(W1-1)・健康保険(W1-2)・厚生年金保険(W1-3)の未加入について、それぞれマイナス40点の減点が設けられていました。3つそろって未加入なら合計マイナス120点です。

これが令和8年7月1日以降の申請では、審査項目から削除されました。

理由は制度の重複です。令和2年10月1日以降、建設業許可・更新の要件に社会保険加入が追加されました。許可の更新期間は5年ですから、令和7年10月1日以降に許可を保有する業者は、社会保険加入を当然に満たしていることになります。

経審の段階で改めて確認する必要が乏しくなったため、申請事務の効率化の観点も含めて削除された、というのが国土交通省の説明です。

点数の枠組みは次のように変わりました。

区分 改正前(最高/最低) 改正後(最高/最低)
W1:担い手の育成及び確保に関する取組の状況 77/▲120 77/0
その他審査項目(社会性等)合計 237/▲210 237/▲90
W評点 最高2,073/最低▲788
総合評定値P 最高2,159/最低163

ここで一つ、経営者として押さえておきたい含意があります。

減点項目が消えるということは、きちんと社会保険に入っている会社が持っていた「差」も消えるということです。守っている側の相対的な優位が一つ減りました。

これまでは未加入業者が自動的に沈んでいたぶん、加入しているだけで順位が上がる面がありました。これからは加点項目で差をつけるしかありません。自主宣言5点が新設されたのは、その代替の差別化軸を用意したという見方もできます。

建設機械の加点対象が拡大|不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャ

機械置き場に整然と並ぶ建設機械を俯瞰した様子。建設機械の保有状況(W7)の加点対象拡大のイメージ

W7「建設機械の保有状況」にも変更が入りました。加点対象となる機械に、不整地運搬車アスファルト・フィニッシャが追加されています。

国土交通省は、災害時における一定の活用実績が確認され、かつ令和6年能登半島地震において活用実績が確認された機械として評価することとした、と説明しています。

改正前の対象は次の9機種でした。

  • ショベル系掘削機/ブルドーザー/トラクターショベル/締固め用機械/解体用機械(特定自主検査)
  • 高所作業車/モーターグレーダー(特定自主検査)
  • 移動式クレーン(つり上げ荷重3トン以上・製造時検査又は性能検査)
  • ダンプ(土砂の運搬が可能な全てのダンプ・自動車検査)

加点は保有台数に応じた評価で、14台以上を保有する場合に最大15点です。

舗装工事を手掛ける会社にとっては見逃せない変更です。これまで台数に入らなかったアスファルト・フィニッシャが、今後は評価対象として算入されます。

保有台数が加点の境界付近にある会社ほど、実質的な影響は大きくなります。定期検査により保有・稼働が確認できることが前提ですので、検査記録の整理も併せて確認しておきたいところです。

今から何をするか|審査基準日から逆算する手順

夜明け前の事務所の窓辺に立つ経営者の後ろ姿。審査基準日から逆算した準備のイメージ

施行日はすでに過ぎています。今から経審を受ける会社が取れる手は、次の順序で考えると整理しやすくなります。

ステップ1:自主宣言を先に済ませる。加点の要件は「審査基準日が宣言日以降」です。次の決算日より前に宣言を完了させないと、その回の5点は取れません。

申請はポータルサイトから行います。公表されている制度資料に申請手数料の定めは示されていません。

ステップ2:詳細型の技能者登録を点検する。自主宣言の必須項目に含まれるため、簡略型のままの技能者がいる場合は切り替えを検討します。1人あたり4,900円です。

ステップ3:現場の読み取り環境を確認する。W1-10は「直接入力によらない方法」での蓄積が要件です。カードリーダーや顔認証端末が全現場に入っているか、就業履歴が実際に蓄積されているかを、審査基準日までに確認します。

ステップ4:立場の選択を決める。元請・下請・発注者のうち一つしか宣言できません。元請として宣言すると、必須項目のハードルは下請より高くなります。

自社の受注形態に合った立場を選ぶ必要があります。

ステップ5:建設機械の台数を数え直す。不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャを保有していれば、台数に加えられます。

費用の面では、CCUS側の負担も自治体の発注制度でカバーされる場合があります。

たとえば埼玉県県土整備部のCCUS活用モデル工事では、令和8年4月1日以降に公告する原則すべての工事が対象とされ、登録技能者率60%以上などの実施基準を満たすと工事成績評定の「5.創意工夫」で加点されます。

さらにカードリーダー等の購入費用や現場でのカードタッチ費用を、実績に応じて共通仮設費として積み上げ計上し、変更契約を行う取扱いも示されています(出典:埼玉県「CCUS活用モデル工事について」)。

読み取り機器の費用がネックで踏み切れなかった会社は、発注者側の制度と合わせて設計し直す余地があります。公共工事全般でのCCUSの効き方はCCUSと公共工事の関係で整理しています。

よくある質問(FAQ)

令和8年6月30日までに申請していれば、旧配点のままですか?

はい。適用の基準は申請日です。令和8年6月30日以前に申請したものは改正前の配点で審査されます。

ただし施行日はすでに過ぎているため、これから出す申請はすべて新配点です。旧配点での結果通知を持っている会社は、次回更新時に点数が動く前提で入札等級を見ておく必要があります。

自主宣言に費用はかかりますか?

国土交通省が公表している制度資料に、申請手数料の定めは示されていません。ただし宣言した必須項目を実行するための費用——詳細型の技能者登録料やカードリーダーの導入費——は自社負担になります。

「宣言は無料だが、宣言の中身にはコストがかかる」と捉えるのが実態に近い理解です。

一人親方や技能者を雇用していない会社でも宣言できますか?

できます。CCUSの必須項目のうち「雇用する全ての技能者について詳細型の技能者登録を行う」は、技能者を雇用している場合に必須とされる条件付きの項目です。

雇用していない場合の取扱いは、申請時の選択肢で整理されています。自社の実態に合わせて、ポータルサイトの申請画面で確認してください。

CCUSの点が減ったなら、CCUSをやめても同じではありませんか?

同じにはなりません。やめれば10点(公共のみなら5点)を丸ごと失い、さらに自主宣言の必須項目も満たせなくなるため5点も取れません。

合計で15点(公共のみなら10点)の差になります。Wのウェイトは0.15ですから、P点への影響も無視できない水準です。

経審の点数が下がると、入札参加資格の等級はすぐ変わりますか?

すぐには変わりません。入札参加資格の格付は、各発注者が定める期間ごとの資格審査で決まります。多くの自治体では2年ごとの定期受付が基本です。

したがって点数の変動は、次の資格審査のタイミングで等級に反映されます。逆にいえば、次の定期受付までの期間が対策の猶予になります。入札参加資格の仕組みと併せて確認してください。

宣言した後に取組をやめてしまった場合はどうなりますか?

経審の加点は、宣言した取組を取組開始日以降に行う、または行っている旨の誓約が前提です。誓約の内容と実態が食い違えば、加点の根拠を失うことになります。

宣言文は企業名・代表者名とともにポータルサイトで公開されます。取引先や技能者から見える状態に置かれる以上、実行できる範囲で宣言することが結果的に安全です。

まとめ:減点ではなく、線引きの引き直し

令和8年7月1日施行の改正を、CCUSの評価が下がった改正だと読むのは正確ではありません。

W1-10で5点を削り、自主宣言で5点を新設する。合計は動かさず、5点ぶんの重心を「登録・蓄積」から「処遇改善への関与」へ移した——それが今回の設計です。

そして自主宣言の必須項目には、詳細型の技能者登録と現場の環境整備が組み込まれています。CCUSから離れる道は用意されていません。

もう一つ、社会保険の減点項目が消えた意味も小さくありません。守っているだけで差がついた時代が終わり、加点を取りに行った会社だけが差をつけられる構造になりました。

建設業界は、こうした制度変更の情報が現場まで届くのに時間がかかる業界です。だからこそ、制度の設計意図を先に読んだ会社が、数年後の等級で静かに前へ出ます。

やるべきことの順番ははっきりしています。次の審査基準日より前に宣言を済ませ、技能者登録の型を確認し、現場に読み取り環境があるかを点検する。難しい話ではなく、期日から逆算できるかどうかの問題です。

自社の審査基準日から逆算して何が間に合うか、立場は元請と下請のどちらで宣言すべきか——判断に迷う場面があれば、お気軽にご相談ください。

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