経営事項審査の点数の仕組み|P点・X・Y・Z・Wの計算方法
「経審のP点はどうやって計算されるの?」「どの項目を対策すれば点数が上がるの?」——経営事項審査の点数の仕組みを正しく理解することは、公共工事の受注拡大に直結します。
経営事項審査(経審)の総合評定値(P点)は、X1(完成工事高)・X2(自己資本額・利益額)・Y(経営状況)・Z(技術力)・W(社会性等)の5項目を所定の係数で合算して算出されます。各項目には配分比率が決まっており、どこに注力すれば効率よく点数が上がるかは計算構造を理解すればわかるのです。
この記事では、経審のP点の計算方法を項目ごとに具体的な数値例を交えながら解説します。
この記事でわかること:
- P点の計算式と5つの評価項目の配分比率
- X1・X2・Y・Z・W各項目の具体的な算出方法
- Y点を構成する8つの経営指標の内容
- W点で加点できる項目の一覧
- 点数アップのための優先順位の考え方
なお、経審の制度全体の仕組みや申請フローについては「経営事項審査(経審)とは?仕組みと評価基準をわかりやすく解説」の記事で詳しく解説しています。
総合評定値(P点)の計算式と配分比率
経審の点数は、最終的に「総合評定値(P点)」という1つの数値に集約されます。P点は公共工事の入札参加資格の格付けに直接使われるため、この点数をいかに高めるかが重要です。
P点の計算式は以下のとおりです。
P = 0.25 × X1 + 0.15 × X2 + 0.20 × Y + 0.25 × Z + 0.15 × W
各項目の配分比率をまとめると、以下の表のとおりです。
| 評価項目 | 記号 | 審査内容 | 配分比率 |
|---|---|---|---|
| 経営規模(完成工事高) | X1 | 工事種類別の年間平均完成工事高 | 25% |
| 経営規模(自己資本額・利益額) | X2 | 自己資本額および利払前税引前償却前利益 | 15% |
| 経営状況 | Y | 財務諸表に基づく8つの経営指標 | 20% |
| 技術力 | Z | 技術職員数および元請完成工事高 | 25% |
| 社会性等 | W | 社会保険加入・建退共・ISO・防災活動など | 15% |
注目すべきは、X1(完成工事高)とZ(技術力)がそれぞれ25%ずつで、合計50%を占めるという点です。つまり、工事の実績と技術者の質・量がP点の半分を決めることになります。一方で、W(社会性等)は15%ですが、対策がしやすく短期間で加点できるため、費用対効果の面で注目される項目です。
以下、各項目の計算方法を詳しく見ていきます。
X1(完成工事高)の計算方法|配分25%
X1は、業種ごとの年間平均完成工事高を点数化した評価項目です。完成工事高が大きいほど点数が高くなり、企業の経営規模を示す指標として機能します。
2年平均と3年平均の選択制
X1の算出にあたっては、直近2年間の年間平均完成工事高と直近3年間の年間平均完成工事高のどちらかを選択できます。
| 選択肢 | 計算方法 | 有利になるケース |
|---|---|---|
| 2年平均 | 直近2事業年度の完成工事高の合計 ÷ 2 | 直近に大型工事が完了した場合 |
| 3年平均 | 直近3事業年度の完成工事高の合計 ÷ 3 | 一時的に売上が落ちた年がある場合 |
どちらが有利かは企業ごとの工事実績によって異なります。たとえば、直近の決算期に大きな工事を完了した場合は2年平均のほうが高くなり、逆に直近の実績が少ない場合は3年平均で平準化したほうが有利です。
評点テーブルの仕組み
年間平均完成工事高は、国土交通省が定める評点テーブルによって点数に変換されます。完成工事高のレンジごとに点数が設定されており、一定の金額ごとに段階的に点数が上がる仕組みです。
X1の評点は業種ごとに個別に算出されます。建設業許可を受けている全業種について経審を受審する場合、それぞれの業種でX1が計算され、業種ごとにP点が出ることになります。
X1の評点範囲は390点〜2,309点です。
X2(自己資本額・利益額)の計算方法|配分15%
X2は、企業の財務的な体力を評価する項目です。自己資本額の評点(X21)と利益額の評点(X22)の平均値で算出されます。
X2 =(X21 + X22)÷ 2
X21:自己資本額の評点
自己資本額とは、貸借対照表における純資産合計のことです。自己資本額が大きいほど評点が高くなります。
X21については、直近の決算期の自己資本額と直近2期の平均自己資本額のうち、有利な方を選択できます。
X22:利払前税引前償却前利益(EBITDA)の評点
利払前税引前償却前利益は、いわゆるEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)に相当する指標です。計算式は以下のとおりです。
利払前税引前償却前利益 = 営業利益 + 減価償却実施額
X22についても、直近の決算期のみの値と直近2期の平均値のうち、有利な方を選択できます。
X2の評点範囲は454点〜2,280点です。
X2は企業の蓄積された財務基盤を反映するため、短期的な改善が難しい項目です。ただし、不要な借入金の返済や減価償却の適切な計上など、財務戦略を見直すことで改善の余地はあります。
Y(経営状況分析)の計算方法|配分20%
Y点は、登録経営状況分析機関が財務諸表をもとに算出する点数です。経審本体とは別の手続きとして、分析機関に申請する必要があります。
8つの経営指標
Y点は以下の8つの経営指標から算出されます。各指標は4つのカテゴリに分類されています。
| カテゴリ | 記号 | 経営指標 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 負債抵抗力 | x1 | 純支払利息比率 | 売上高に対する純支払利息の割合(低いほど良い) |
| x2 | 負債回転期間 | 負債の返済に要する月数(短いほど良い) | |
| 収益性・効率性 | x3 | 総資本売上総利益率 | 総資本に対する売上総利益の割合(高いほど良い) |
| x4 | 売上高経常利益率 | 売上高に対する経常利益の割合(高いほど良い) | |
| 財務健全性 | x5 | 自己資本対固定資産比率 | 固定資産を自己資本でどれだけ賄えているか(高いほど良い) |
| x6 | 自己資本比率 | 総資本に占める自己資本の割合(高いほど良い) | |
| 絶対的力量 | x7 | 営業キャッシュフロー | 営業活動による現金の流入額(大きいほど良い) |
| x8 | 利益剰余金 | 創業以来の蓄積利益(大きいほど良い) |
Y点の算出と範囲
8つの指標はそれぞれ所定の計算式で評点化され、最終的に合算されてY点が算出されます。
Y点の範囲は0点〜1,595点です。上限・下限が設定されており、財務内容がどれほど良くても1,595点を超えることはなく、逆にどれほど悪くても0点を下回ることはありません。
Y点は財務状況を直接反映するため、日頃からの健全な財務管理が点数に直結します。特に純支払利息比率(x1)と自己資本比率(x6)は影響が大きく、借入金の削減や利益の蓄積が有効な対策となります。
Z(技術力)の計算方法|配分25%
Z点は、技術職員数の評点(Z1)と元請完成工事高の評点(Z2)の平均値で算出されます。P点に占める配分が25%と最も高い項目の一つであり、経審の点数を大きく左右します。
Z =(Z1 + Z2)÷ 2
Z1:技術職員数の評点
Z1は、審査基準日時点で在籍する技術職員の人数と保有資格によって算出されます。資格のレベルに応じて、1人あたりの評価点が異なります。
| 技術者の区分 | 1人あたりの評価点 | 該当する資格の例 |
|---|---|---|
| 1級技術者(監理技術者資格者証保有) | 6点 | 1級建築施工管理技士+監理技術者資格者証 |
| 1級技術者 | 5点 | 1級土木施工管理技士、1級建築士など |
| 基幹技能者(登録基幹技能者講習修了) | 3点 | 登録基幹技能者 |
| 2級技術者 | 2点 | 2級土木施工管理技士、2級建築士など |
| その他の技術者 | 1点 | 実務経験のみの技術者 |
1級技術者は2級の2.5〜3倍の評価を受けるため、従業員の資格取得支援は中長期的に非常に効果的な点数アップ対策です。
Z2:元請完成工事高の評点
Z2は、元請として施工した完成工事高を評価する項目です。X1と同様に2年平均と3年平均を選択できますが、X1の選択と連動するため、X1で2年平均を選べばZ2も2年平均となります。
元請比率が高い企業ほどZ2の点数は高くなります。下請け中心の企業がZ点を上げるには、元請工事の比率を高める営業戦略が必要です。
Z点の評点範囲は450点〜2,366点です。
W(社会性等)の計算方法|配分15%
W点は、企業の社会的な取り組みを幅広く評価する項目です。他の項目と比べて加点項目が多く、取り組み次第で比較的短期間に点数を上げられるのが特徴です。
W点を構成する評価項目一覧
| 評価項目 | 加点・減点 | 内容 |
|---|---|---|
| 社会保険の加入 | 未加入で大幅減点 | 健康保険・厚生年金・雇用保険の加入状況 |
| 建設業退職金共済制度(建退共) | 加点 | 建退共への加入と証紙購入の実績 |
| 退職一時金制度・企業年金制度 | 加点 | 中小企業退職金共済等の退職金制度の導入 |
| 法定外労働災害補償制度 | 加点 | 法定の労災保険に上乗せする補償制度への加入 |
| 営業継続の状況(営業年数) | 加点 | 建設業の営業年数が長いほど加点(上限35年) |
| 防災協定の締結 | 加点 | 国・自治体との防災協定を結んでいる場合 |
| 法令遵守の状況 | 減点あり | 営業停止処分・指示処分がある場合に減点 |
| 建設業の経理の状況 | 加点 | 公認会計士・税理士・建設業経理士等の配置 |
| 研究開発費 | 加点 | 会計監査人設置会社で研究開発費を計上している場合 |
| 建設機械の保有台数 | 加点 | 一定の建設機械(ショベル系掘削機等)の保有 |
| ISO認証の取得 | 加点 | ISO 9001(品質)・ISO 14001(環境)の認証取得 |
| 若年技術者の育成・確保 | 加点 | 35歳未満の技術職員の割合が15%以上等 |
| CPD(継続教育)の取組状況 | 加点 | 技術者の継続的な教育・研修への取り組み |
| 知識及び技術又は技能の向上に関する取組 | 加点 | 建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用等 |
| ワーク・ライフ・バランスに関する取組 | 加点 | えるぼし・くるみん・ユースエール認定等の取得 |
W点の評点範囲は0点〜2,136点です。
特に重要なのは社会保険の加入です。健康保険・厚生年金保険・雇用保険のいずれかが未加入の場合、大幅な減点(各項目マイナス40点)を受けます。まだ加入していない場合は、W点対策の最優先事項として対応してください。
P点の計算シミュレーション|具体例で理解する
ここでは、小規模建設業者を想定したP点の計算例を見てみましょう。実際の数値で計算することで、各項目がP点にどの程度影響するかがわかります。
想定条件(小規模建設業者A社)
- 年間完成工事高:約8,000万円
- 自己資本額:約2,000万円
- 技術職員:2級資格者2名、実務経験のみ1名
- 建退共加入済、社会保険完備
各項目の評点と計算結果
| 項目 | 評点 | 係数 | P点への寄与 |
|---|---|---|---|
| X1(完成工事高) | 630点 | × 0.25 | 157.5点 |
| X2(自己資本額・利益額) | 580点 | × 0.15 | 87.0点 |
| Y(経営状況) | 700点 | × 0.20 | 140.0点 |
| Z(技術力) | 600点 | × 0.25 | 150.0点 |
| W(社会性等) | 850点 | × 0.15 | 127.5点 |
| 合計(P点) | — | — | 662点 |
この例では、P点は662点となります。仮にW点対策を進めて850点から1,050点に200点上がった場合、P点への寄与は30点増の692点になります。同様にZ点が200点上がれば50点増の712点です。
このように、同じ200点のアップでも配分比率の違いにより、P点への影響度が異なることがわかります。
経審の点数アップ|優先順位の考え方
経審のP点を効率的に上げるには、「対策のしやすさ」と「P点への影響度」のバランスを見ることが重要です。以下、優先度の高い順に対策の方向性を紹介します。
優先度1:W点(社会性等)の対策
W点は「やるかやらないか」で差がつく項目が多いため、最も取り組みやすい対策です。
- 社会保険の完備:未加入があれば最優先で対応(減点解消の効果が大きい)
- 建退共への加入:加入手続きを行い、証紙の購入実績を作る
- 退職金制度の導入:中小企業退職金共済(中退共)などへの加入
- 法定外労働災害補償制度への加入:上乗せ労災保険の加入
- 防災協定への参加:地元自治体との防災協定への参加検討
- 建設業経理士の配置:経理担当者の資格取得を支援
優先度2:Z点(技術力)の対策
Z点は配分比率25%と大きいため、改善できればP点への影響が非常に大きい項目です。
- 資格取得支援:2級から1級への取得支援(1人で2〜3点分の差が出る)
- 監理技術者資格者証の取得:1級技術者は監理技術者証も取得して6点評価に
- 技術者の採用・定着:資格を持つ技術者の採用と離職防止
優先度3:X1(完成工事高)の対策
- 2年平均・3年平均の有利選択:毎年の受審時に有利な方を選ぶ
- 業種の振り分けの最適化:工事の計上業種を適切に振り分ける
優先度4:Y点(経営状況)の対策
Y点の改善は財務体質の改善そのものであり、中長期的な課題です。
- 借入金の圧縮:不要な借入を返済し、純支払利息比率を改善
- 利益率の向上:原価管理の徹底や収益性の高い工事の受注
- 自己資本の充実:利益を内部留保として蓄積する
点数アップ対策は企業ごとの状況によって最適な組み合わせが異なります。現在の評点と改善の余地を正確に把握した上で、戦略的に取り組むことが重要です。
よくある質問(FAQ)
経審のP点はどのように計算されますか?
P点は「P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W」の計算式で算出されます。X1(完成工事高)、X2(自己資本額・利益額)、Y(経営状況分析)、Z(技術力)、W(社会性等)の5項目を、それぞれの配分比率で加重合計したものが総合評定値(P点)です。
経審の点数を最も効率よく上げるにはどの項目を対策すべきですか?
まずはW点(社会性等)の対策から始めるのが効率的です。社会保険の完備、建退共への加入、退職金制度の導入など、「やるかやらないか」で点数が変わる項目が多く、短期間で効果が出ます。次に、Z点(技術力)として従業員の資格取得支援に取り組むと、配分比率25%の大きなリターンが見込めます。
経審のY点(経営状況分析)を上げるにはどうすればいいですか?
Y点は8つの財務指標で算出されるため、財務体質の改善が直接的な対策になります。特に効果が大きいのは、借入金の圧縮による純支払利息比率の改善、利益を内部留保して自己資本比率を高めること、そして収益性の向上です。ただし、いずれも短期間での大幅改善は難しく、中長期的な経営戦略として取り組む必要があります。
技術職員が少ない会社でもZ点を上げる方法はありますか?
既存の技術者の資格ランクを上げることが有効です。たとえば、2級資格者(2点評価)が1級を取得すれば5点評価になり、1人で3点分の上昇が見込めます。さらに監理技術者資格者証を取得すれば6点評価です。人数が少ないからこそ、1人あたりの評価を最大化する戦略が重要です。
経審のW点で加点される項目にはどんなものがありますか?
W点の加点項目は15項目以上あります。代表的なものは、建退共への加入、退職一時金制度の導入、法定外労働災害補償制度への加入、防災協定の締結、建設業経理士の配置、ISO認証の取得、若年技術者の育成・確保、えるぼし・くるみん認定の取得などです。逆に、社会保険の未加入は大幅な減点対象となります。
まとめ|経審の点数構造を理解して戦略的に対策しよう
経営事項審査の点数は、5つの評価項目がそれぞれ異なる配分比率でP点に反映されます。改めてポイントを整理します。
- P点の計算式:P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W
- X1とZが各25%で合計50%を占め、工事実績と技術力がP点の半分を決める
- Y点は8つの経営指標で算出され、財務体質が直接反映される
- W点は対策しやすく、社会保険の完備・建退共加入などから着手可能
- 同じ点数アップでも配分比率の違いでP点への影響度は異なる
経審の点数を上げるには、自社の現状を正確に把握し、どの項目で何点のアップが見込めるかを具体的にシミュレーションすることが大切です。
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参考文献・外部リンク:
・国土交通省「経営事項審査」
・e-Gov法令検索「建設業法第27条の23〜第27条の29」
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