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解体工事業の建設業許可とは?取得要件・必要資格・解体工事業登録との違いを解説
最終更新日:2026年4月22日|法令確認時点:2026年4月(建設業法・建設リサイクル法/令和6年12月13日施行の改正建設業法を反映)
「解体工事業登録と建設業許可のどちらを取ればよいのか」「とび・土工事業の許可で解体工事も請け負えるのか」——当事務所にも、解体工事業に関する相談が増えています。
結論として、1件の請負代金が500万円(税込)以上の解体工事を請け負うには「解体工事業」の建設業許可が必要です。500万円未満の解体工事のみを行う事業者は建設リサイクル法に基づく「解体工事業登録」で営業できます。解体工事業は2016年(平成28年)6月1日の建設業法改正で「とび・土工・コンクリート工事業」から独立した比較的新しい専門工事業種で、業種独立の経緯や技術者要件の経過措置など、他業種と異なる論点が多い分野です。
この記事では、解体工事業 建設業許可を軸に、解体工事業登録との制度比較、取得要件、営業所技術者等(旧:専任技術者)の資格一覧、業種追加の実務ポイント、無許可営業のリスクまで、行政書士の視点で解説します。
※令和6年(2024年)12月13日施行の改正建設業法により、「専任技術者」の法律上の名称は「営業所技術者等」に変更されました。本記事では、検索される方のわかりやすさを考慮し、旧名称の「専任技術者」も併記しています。
この記事でわかること:
- 解体工事業の定義と2016年に業種として独立した経緯
- 建設業許可(解体工事業)と解体工事業登録(建設リサイクル法)の違い
- 500万円(税込)を境にした許可必要性の判定基準
- 解体工事業の建設業許可で必要となる5つの要件と技術者資格一覧
- 主任技術者・監理技術者の配置要件
- 業種追加で解体工事業を取得する場合の実務上の注意点
- 無許可解体工事の罰則とリスク
解体工事業とは?2016年に独立した新しい専門工事業種
解体工事業とは、工作物の解体を行う工事を指す建設業法上の業種です。具体的には、ビル・住宅・橋梁・煙突などの建築物・工作物を取り壊す工事が該当します。
国土交通省告示では、解体工事業の工事内容は「工作物の解体を行う工事」とされ、建築物に限らず土木構造物なども含まれます。ただし、新設・増設に伴う取り壊しは付帯工事として扱われる場合があります。
2016年6月1日:解体工事業が独立業種に
解体工事業は、2016年(平成28年)6月1日施行の改正建設業法により、それまで「とび・土工・コンクリート工事業」に含まれていた解体工事が、29番目の専門工事業種として独立しました。老朽インフラの解体需要増加、アスベスト等の適正処理、建設リサイクル法による分別解体義務化、施工管理の専門性確保などが背景です。
技術者要件の経過措置は2021年3月末で終了
解体工事業の独立にあたっては、2016年6月1日から2021年(令和3年)3月31日までの5年間、技術者要件について経過措置が設けられていました。経過措置期間中は、従来の「とび・土工・コンクリート工事業」で営業所技術者等の要件を満たしていた者は、解体工事業についても同等に扱われる運用がありました。
現在はこの経過措置は既に終了しており、解体工事業の営業所技術者等となるには、解体工事業に対応した資格または実務経験の要件を明確に満たす必要があります。これから新規に取得する事業者は、後述する資格要件を正確に確認することが不可欠です。
建設業許可(解体工事業)と解体工事業登録の違い
解体工事業に関しては、根拠法の異なる2つの制度が併存しています。この住み分けを理解することが、解体工事を始める上での出発点です。
解体工事業登録(建設リサイクル法第21条)とは
解体工事業登録は、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)第21条に基づき、解体工事を請け負う事業者が工事施工地の都道府県知事に行う登録です。分別解体と再資源化の適正確保が目的で、建設業許可(土木・建築・解体)を持たずに解体工事を営む事業者を対象とし、1件500万円(税込)未満の工事に限り営業できます。5年ごとの更新制で、工事を行う都道府県ごとの登録が必要です。
建設業許可(解体工事業)とは
建設業許可(解体工事業)は、建設業法第3条に基づく許可制度で、都道府県知事または国土交通大臣から受けます。取得すれば1件500万円(税込)以上の解体工事を請け負うことができ、有効期間は5年です。
2つの制度の比較表
両制度の違いを一覧で整理します。
| 比較項目 | 解体工事業登録 | 建設業許可(解体工事業) |
|---|---|---|
| 根拠法 | 建設リサイクル法 第21条 | 建設業法 第3条 |
| 目的 | 分別解体・再資源化の適正確保 | 建設工事の適正な施工と発注者の保護 |
| 対応できる工事規模 | 1件500万円(税込)未満 | 金額上限なし(500万円以上も可) |
| 技術者要件 | 技術管理者(解体工事施工技士等) | 営業所技術者等(旧:専任技術者) |
| 財産的要件 | なし | 自己資本500万円以上等 |
| 申請先 | 工事施工地の都道府県知事 | 都道府県知事または国土交通大臣 |
| 有効期間 | 5年 | 5年 |
| 登録・許可単位 | 工事を行う都道府県ごと | 主たる営業所の所在地で1件 |
重要なポイントは、建設業許可(土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれか)を保有している事業者は、解体工事業登録は不要という点です。建設業許可が解体工事業登録の代替として機能するため、両方の登録を行う必要はありません。ただし、登録から許可へ切り替える際には、既存の解体工事業登録の廃業届を提出する運用が一般的です。
解体工事業の建設業許可が必要になるケース
解体工事業者が建設業許可を取得すべき代表的なケースを整理します。
ケース1:500万円以上の解体工事を請け負う場合
建設業法上、1件の請負代金が500万円(税込)以上の解体工事を請け負うには、解体工事業の建設業許可が必須です(建設業法第3条、軽微な建設工事を除く)。これは発注者が民間・公共を問わず、また元請・下請の立場も問われません。
この「500万円」の判定は、同一の発注者から同一の場所で同時期に行う解体工事は一体として計算されるのが原則です。契約を形式的に分割して500万円未満に見せかける行為は、建設業法の潜脱として問題になる可能性があります。軽微な建設工事の範囲については「軽微な建設工事とは」もあわせてご覧ください。
ケース2:元請から建設業許可保有を求められた場合
元請ゼネコンやハウスメーカーが下請選定時に、500万円未満の解体工事でも建設業許可の保有を要件とするケースが増えています。コンプライアンス強化や産廃マニフェストの信頼性確保が背景です。
ケース3:公共工事の入札参加や広域展開を目指す場合
公共工事の入札参加には経営事項審査(経審)の受審が前提で、経審には建設業許可が必要です。また、解体工事業登録が都道府県ごとの登録であるのに対し、建設業許可は全国で施工可能なため、広域展開する事業者にもメリットがあります。
解体工事業の建設業許可に必要な5つの要件
解体工事業の建設業許可を取得するには、他業種と共通の5つの要件を満たす必要があります。ここでは特に解体工事業に特有の論点を中心に解説します。全般的な要件は「建設業許可の要件とは?取得に必要な5つの条件」を参考にしてください。
要件1:経営業務の管理責任者(経管)がいること
法人は常勤役員の1人、個人は本人または支配人が、建設業に関する5年以上の経営業務の管理責任者経験等を有することが求められます。令和2年10月の改正で、経験業種は解体工事業に限らず建設業全般の経営経験で足ります。
要件2:営業所技術者等(旧:専任技術者)がいること
解体工事業の建設業許可における最大のハードルが、営業所技術者等の確保です。営業所ごとに、解体工事業に対応した資格または実務経験を有する常勤の技術者を配置する必要があります。
2021年3月末までの経過措置が終了した現在、解体工事業の営業所技術者等として認められる資格・経験は以下のとおりです(一般建設業)。
| 区分 | 資格・経験の内容 | 追加要件 |
|---|---|---|
| 国家資格(施工管理技士) | 1級土木施工管理技士(種別「土木」) | 平成27年度以前合格者は登録解体工事講習の修了が必要 |
| 1級・2級建築施工管理技士(種別「建築」または「躯体」) | 平成27年度以前合格者は登録解体工事講習の修了が必要 | |
| 技術士 | 技術士(建設部門・総合技術監理部門「建設」) | — |
| 技術士(農業部門「農業土木」・水産部門「水産土木」・森林部門「森林土木」) | — | |
| 建築士 | 1級建築士/2級建築士 | — |
| 解体工事関連資格 | 登録解体工事試験合格者(解体工事施工技士) | — |
| 実務経験 | 解体工事業に関する10年以上の実務経験 | 指定学科卒業者は高卒5年以上、大卒3年以上の実務経験に短縮可 |
特に注意すべき実務ポイントは次のとおりです。
- 2級土木施工管理技士は「土木」種別に限定。「薬液注入」種別は解体工事業の技術者としては認められません。
- 平成27年度以前合格の施工管理技士は「登録解体工事講習」の受講修了が追加要件。平成28年度以降の合格者は原則として追加講習不要です。
- とび・土工・コンクリート工事業の実務経験は、解体工事業の実務経験として自動的には代用できません。解体工事そのものの経験が必要で、行政庁により判断が分かれます。
特定建設業の解体工事業は、1級土木・1級建築施工管理技士・技術士のいずれか(平成27年度以前合格の1級保有者は登録解体工事講習修了が必要)、または一般要件+元請として発注者から直接請け負う4,500万円以上の工事に関する2年以上の指導監督的実務経験が必要です。詳細は「主任技術者・監理技術者の要件」をご確認ください。
要件3〜5:誠実性・財産的基礎・欠格要件
誠実性:法人・役員・個人事業主本人等が請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと。
財産的基礎(一般建設業):次のいずれかを満たすことが必要です。自己資本(純資産)500万円以上/500万円以上の資金調達能力(残高証明書等)/直前過去5年間に許可を受けて継続営業した実績。特定建設業は資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上・流動比率75%以上・欠損比率20%以下等のより厳格な基準が課されます。費用総額は「建設業許可の費用」をご参照ください。
欠格要件:役員・個人事業主本人等が、破産手続開始決定を受けて復権を得ない者、許可取消しから5年を経過しない者、禁錮以上の刑の執行終了から5年を経過しない者、暴力団員等、建設業法第8条に定める欠格要件に該当しないこと。
主任技術者・監理技術者の配置要件(解体工事の現場)
解体工事の請負金額や立場に応じて、現場に主任技術者または監理技術者を配置する義務があります(建設業法第26条)。
| 区分 | 配置が必要な現場 | 資格 |
|---|---|---|
| 主任技術者 | 建設業許可業者が請け負うすべての解体工事現場(下請含む) | 解体工事業の営業所技術者等と同等の資格・実務経験 |
| 監理技術者 | 元請として発注者から直接請け負い、下請契約の合計額が4,500万円以上となる解体工事現場 | 1級国家資格者または同等以上の資格者 |
公共性のある施設や多数の者が利用する施設の重要な工事(個人住宅を除き、建築一式4,000万円・その他2,500万円以上)では専任配置が求められます。令和6年12月13日施行の改正建設業法では、営業所技術者等が一定要件下で現場の監理技術者等を兼務できる特例(請負金額1億円未満、建築一式2億円未満)が整備され、人材が限られる解体業者にも活用余地があります。
解体工事業の建設業許可を取得する流れ
新規取得の基本的な流れは次のとおりです。(1) 要件の事前確認、(2) 必要書類の収集(登記事項証明書・身分証明書・納税証明書・決算書・実務経験証明書等)、(3) 申請書類の作成(様式第1号・経管および営業所技術者等の証明書類・財務諸表)、(4) 管轄行政庁への申請、(5) 審査・補正対応(知事許可の標準処理期間は30〜90日、大臣許可は90〜120日)、(6) 許可通知書の受領(5年間有効)。詳細は「建設業許可の取り方」をご覧ください。
営業所技術者等の要件を実務経験で立証する場合、過去10年分の解体工事実績を契約書・請書・請求書・施工写真・産廃マニフェスト等で証明する必要があります。解体後は現場が残らないため、当時の資料保管が要件充足立証のカギです。
業種追加で解体工事業を取得するケース
すでにとび・土工・コンクリート工事業や建築一式工事業の建設業許可を持つ事業者が、解体工事業の許可を業種追加で取得するケースは非常に多いパターンです。
業種追加の申請手数料は知事許可で50,000円(新規は90,000円)と抑えられていますが、既存許可と有効期間が別々になるのが原則で、管理を一本化するには「許可の一本化」手続きを活用します。業種追加全般は「建設業許可の業種追加」をご覧ください。
とび・土工から解体への移行で特に注意すべき点は次のとおりです。
- とび・土工の実務経験10年は、解体工事業の実務経験に自動算入されない(解体工事そのものの経験が必要)
- 2級土木施工管理技士(種別「土木」)の平成27年度以前合格者は登録解体工事講習の修了が必要
- 技術士や1級建築士など包括的資格保有者は、追加講習なしで解体にも対応可能
実務上は、解体工事業の要件を満たす有資格者を新たに確保するか、既存技術者に登録解体工事講習を受講してもらうのが現実的な選択肢です。
無許可で解体工事を請け負った場合のリスクと罰則
500万円以上の解体工事を解体工事業の建設業許可なしに請け負うことは、建設業法違反であり、重い罰則の対象となります。
| 違反類型 | 根拠条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 無許可営業(500万円以上の解体工事を無許可で請負) | 建設業法第47条第1号 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
| 無登録営業(建設リサイクル法の登録なしで500万円未満の解体工事を行う) | 建設リサイクル法第51条 | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 虚偽申請による許可取得 | 建設業法第47条第2号 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
| 無許可業者への下請発注(注文者側) | 建設業法第28条等 | 指示処分、情状により営業停止処分等 |
また、法人の場合は両罰規定(建設業法第53条)により、行為者個人だけでなく法人にも罰金刑が科されます。罰則を受けた場合、5年間は建設業許可を取得できなくなるため、将来の事業展開にも大きな影響があります。罰則の詳細は「建設業許可に関する罰則」も参考にしてください。
法令の原文については、建設業法(e-Gov法令検索)および建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)をご参照ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 解体工事業登録と建設業許可の両方を取る必要はありますか?
原則として両方を取る必要はありません。建設業許可(土木・建築・解体のいずれか)を保有する事業者は、建設リサイクル法第21条第1項括弧書きにより、解体工事業登録の対象外です。許可取得時に既存登録は廃業届を出す運用が一般的です。
Q. 解体工事業の実務経験10年はどのように証明しますか?
工事請負契約書・注文書・請書・請求書・施工写真・産廃マニフェスト等を組み合わせて立証します。解体後は現場が残らないため、施工当時の資料の保管状況が審査の成否を左右します。行政庁により求められる証拠水準が異なる点にも注意が必要です。
Q. とび・土工事業の許可で、500万円以上の解体工事を請け負えますか?
原則としてできません。2016年6月1日以降、500万円以上の解体工事は解体工事業の建設業許可が必要です。新設・改修工事に付帯する小規模な取り壊し部分は、主たる工事の付帯工事として扱える場合がありますが、取り壊しが主目的であれば解体工事業の許可が必要です。
Q. 個人事業主でも解体工事業の建設業許可は取得できますか?
可能です。ただし、経営業務の管理責任者と営業所技術者等を本人1人で兼ねる場合、5年以上の経営経験と解体工事の資格または実務経験を同時に満たす必要があります。該当しない場合は、要件を満たす常勤従業員の雇用や法人化による取締役招聘などを検討します。
Q. アスベスト含有建材の解体工事にも建設業許可は同じですか?
建設業許可上は通常の解体工事業の許可で対応しますが、アスベスト(石綿)含有建材の解体には、大気汚染防止法・石綿障害予防規則に基づく事前調査・届出・作業主任者の選任など別法令が重畳的に適用されます。許可とは別に、石綿関連の法令遵守体制の整備が必要です。
まとめ:解体工事業の建設業許可は「制度の使い分け」がカギ
解体工事業の建設業許可について、本記事のポイントをまとめます。
- 解体工事業は2016年6月1日施行の改正建設業法で独立した29番目の業種
- 技術者要件の経過措置は2021年3月31日で既に終了、現在は解体工事業固有の要件充足が必要
- 500万円(税込)未満は建設リサイクル法の解体工事業登録、500万円以上は建設業許可(解体工事業)の住み分け
- 建設業許可保有者は解体工事業登録が不要(二重登録不要)
- 営業所技術者等には施工管理技士・技術士・建築士・解体工事施工技士・10年実務経験等の選択肢がある
- 平成27年度以前合格の施工管理技士は登録解体工事講習の修了が追加要件
- 業種追加の際はとび・土工の実務経験が解体に自動流用されない点に注意
- 無許可営業は3年以下の懲役または300万円以下の罰金(建設業法第47条)の対象
解体工事業は業種独立からの年数が浅く、技術者要件や経過措置の取り扱いなど他業種と比べて確認すべき論点が多い分野です。特に実務経験による要件立証や資格の種別・合格年度に応じた追加講習要否は、行政庁や個別ケースで解釈が分かれることも少なくありません。
「解体工事業登録のままでよいか、建設業許可に切り替えるべきか判断がつかない」「とび・土工から解体を業種追加したいが技術者要件を満たせるか不安」という方は、建設業許可を専門とする行政書士にご相談ください。要件の事前診断から申請・許可後の届出までサポートいたします。
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