最終更新日:2026年4月20日|令和6年改正建設業法(2024年12月施行)対応済み

建設業許可難易度はどのくらい高いのか?」「自分でも取れるのか?」——建設業を営む事業者からよく寄せられる質問です。取得後の仕事の幅は大きく広がる一方で、「要件が厳しい」「書類が膨大」といった情報が飛び交い、最初の一歩を踏み出しづらい方が多いのも事実です。

結論から言えば、建設業許可に「合格率」はありません。国家試験とは異なり、定められた5つの許可要件を立証できれば必ず取得できる制度です。つまり難易度の正体は、「要件を満たすこと」そのものではなく、「要件を満たしていることを書類で立証する手間」にあります。

この記事では、建設業許可の難易度を5つの許可要件ごとに★評価で可視化し、それぞれの「難しさの正体」と「難易度を下げる対策」を、現役行政書士の視点で整理します。自社で取得できるのか、あるいは専門家に依頼すべきか——判断材料として活用してください。

この記事でわかること:

  • 建設業許可に「合格率」が存在しない理由
  • 5つの許可要件ごとの難易度(★評価)
  • もっとも難しいのはどの要件か
  • 難易度を下げる5つの実践的対策
  • 自分で申請するのが難しいケース/問題ないケース

目次

建設業許可の難易度は「合格率」では測れない

建設業許可を初めて調べる方がまず疑問に思うのが「合格率は何%か?」という問いですが、建設業許可に合格率という概念は存在しません

建設業許可は建設業法第7条・第15条に定められた許可要件を全て満たせば、行政庁は必ず許可を与えなければならない「羈束(きそく)行政処分」です。試験のように「上位◯%を通す」制度ではないため、以下のように整理できます。

比較対象 合格の基準 難易度の正体
国家試験(例:宅建士) 合格点以上の得点 知識量・判断力
建設業許可 5要件の充足+書類での立証 要件の該当性と書類の整備
経営事項審査 客観的評点(P点)の算出 決算内容・技術者数

つまり建設業許可の難易度は、「要件に該当するか」と「該当を書類で示せるか」の2段階で決まります。とくに後者の「立証作業」こそが、実務で多くの事業者がつまずくポイントです。

建設業許可の5つの要件と難易度★評価

建設業許可の要件は、大きく次の5つに整理されます。それぞれの難易度を★(1〜5)で評価し、概要を一覧にまとめました。

要件 内容 難易度 つまずきやすさ
①経営業務管理責任者(経管) 建設業の経営経験5年以上を持つ役員等が常勤 ★★★★☆ 高い(経験の証明がネック)
②営業所技術者等(旧:専任技術者) 資格または実務経験10年の技術者が営業所に常勤 ★★★★★ 最も高い
③財産的基礎 自己資本500万円以上(一般)または資本金2,000万円等(特定) ★★☆☆☆ 低い〜中程度
④誠実性 請負契約に関して不正・不誠実な行為がないこと ★☆☆☆☆ 低い
⑤欠格要件に該当しないこと 禁固以上の刑・暴力団関係者等ではないこと ★☆☆☆☆ 低い

※令和6年(2024年)12月13日施行の改正建設業法により、「専任技術者」の法律上の名称は「営業所技術者等」に変更されました。本記事では検索のわかりやすさを考慮し、旧名称も併記しています。

ご覧のとおり、難易度が高いのは①経営業務管理責任者と②営業所技術者等の2つに集中しており、③〜⑤は通常の事業運営ができていれば問題になりにくい項目です。以下、難易度の高い順に「難しさの正体」を掘り下げます。

【難易度★★★★★】営業所技術者等の要件はなぜ最も難しいのか

営業所技術者等(旧:専任技術者)は、建設業許可のなかで最も難易度が高い要件です。難しさの正体は3つに分解できます。

難しさ①:実務経験10年の「証明資料」を揃える手間

資格を持たない技術者が要件を満たすには、原則許可を取りたい業種で10年以上の実務経験が必要です。しかもその10年を、以下のような客観資料で証明しなければなりません。

  • 工事請負契約書(10年分)
  • 工事請書・注文書
  • 請求書・入金記録
  • 在籍当時の健康保険被保険者証(常勤性の証明)
  • 源泉徴収票・厚生年金記録

10年前の契約書を捨ててしまった、前職で証明協力を得られない、といった理由で立証に行き詰まるケースが最も多いのがこの要件です。

難しさ②:業種ごとに経験年数をカウントする必要

実務経験は業種ごとに独立してカウントされます。たとえば「内装工事業と塗装工事業の両方の許可を取りたい」場合、それぞれで10年、合計20年相当の経験立証が必要です(例外あり)。複数業種を同時取得する場合、難易度は一気に上がります。

難しさ③:指定学科卒業や資格取得での短縮条件の理解

以下のいずれかに該当すると、実務経験年数を短縮できます。

パターン 必要な実務経験年数
指定学科を卒業(高卒) 5年
指定学科を卒業(大卒・高専卒) 3年
一級国家資格(例:一級建築士・一級施工管理技士) 0年(即該当)
二級国家資格 業種による(0年または3年)

自社の技術者が保有する資格が要件業種と対応しているかを把握するだけでも、専門知識が必要です。「建設業許可の主任技術者・管理技術者の要件」も参照してください。

【難易度★★★★☆】経営業務管理責任者(経管)の要件

2番目に難しいのが、経営業務管理責任者の要件です。建設業の経営経験を有する者が常勤の役員等として在籍している必要があります。

原則:建設業の経営経験5年以上

「建設業の経営経験」とは、法人なら役員、個人なら事業主または支配人としての経験を指します。5年間、建設業を営む会社の取締役として登記されていた、あるいは個人事業主として建設業を営んでいた実績が求められます。

難しさの正体:過去の登記・確定申告での立証

経管の要件は、次のような書類で証明します。

  • 商業登記簿謄本(5年分遡及)
  • 確定申告書(建設業の売上が確認できるもの)
  • 工事請負契約書(当該期間に建設業を営んでいた証拠)

個人事業主から法人成りして日が浅い、登記簿に記録が残っていない、確定申告書を紛失したといったケースでは立証が困難になります。

緩和された「類似する地位」の認定

令和2年の建設業法改正以降、経営業務の補佐経験執行役員等としての経営管理経験でも、一定条件下で要件充足と認められるようになりました。過去に「自分は役員ではなかったから」と諦めていた方でも、現行制度では認定される可能性があります。

【難易度★★☆☆☆】財産的基礎の要件

一般建設業許可では、自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力が必要です(建設業法第7条第4号)。以下のいずれかで証明できます。

  • 直前の決算書で純資産の額が500万円以上
  • 金融機関発行の500万円以上の残高証明書(申請直前1か月以内)
  • 500万円以上の融資証明書

申請直前に金融機関で残高証明書を発行してもらうことで比較的容易にクリアできます。特定建設業許可の場合は「資本金2,000万円以上」「自己資本4,000万円以上」など基準が高くなるため、別途検討が必要です。

【難易度★☆☆☆☆】誠実性・欠格要件

残り2つの要件は、通常の事業運営をしていれば自動的にクリアされます。

誠実性の要件

請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが求められます。具体的には、過去に建設業法違反や宅地建物取引業法違反で免許取消処分を受けていないことなどが判断材料です。

欠格要件に該当しないこと

以下のいずれにも該当しないことが必要です。

  • 成年被後見人・被保佐人
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 暴力団員・暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
  • 建設業法違反等で許可取消処分を受けてから5年を経過しない者

該当しない旨の誓約書と、役員等の身分証明書・登記されていないことの証明書で確認されます。

建設業許可の難易度を下げる5つの対策

「要件の該当性」そのものは変えられなくても、「立証の手間」は工夫で大きく減らせます。以下、効果の大きい順に5つの対策を紹介します。

対策1:10年より短い期間で済む「資格者ルート」を検討する

一級建築士・一級施工管理技士等の一級国家資格保有者がいれば、実務経験年数の証明は不要になり、営業所技術者等の要件は即座に充足します。社内に資格者がいる場合は、まず資格と業種の対応表で要件該当性を確認するのが最短ルートです。

対策2:過去書類を早めに棚卸しする

難易度を下げる最大の鍵は、書類の早期棚卸しです。具体的には以下を申請検討の段階で確認しておきます。

  • 過去10年分の工事請負契約書・注文書・請求書
  • 過去5年分の法人登記簿謄本(閉鎖登記含む)
  • 過去の確定申告書
  • 健康保険被保険者証・源泉徴収票

書類がないと判明した時点で代替証明の準備(取引先への協力依頼等)が始められ、結果的にスケジュールを大幅に短縮できます。

対策3:業種を最初は1つに絞る

同時に複数業種の許可を取ろうとすると、業種ごとの実務経験証明が必要で難易度が跳ね上がります。まず最も需要の高い1業種で新規申請し、事業拡大に合わせて業種追加で増やすほうが、立証書類も時間も大幅に節約できます。

対策4:改正後の緩和ルールを活用する

令和2年改正・令和6年改正により、経管要件・営業所技術者等要件ともに、類似地位の認定補佐経験の合算など、昔より柔軟な運用になっています。古い情報で「自分は無理だ」と諦めてしまうのは最大の機会損失です。最新の運用基準に基づき判定を受けましょう。

対策5:複雑なケースは早めに行政書士へ相談する

資格ルートが使えず実務経験10年で立証する必要があるケースや、経管の経験が複数の会社にまたがるケースでは、要件の整理だけでも数週間かかります。経験豊富な行政書士に早めに要件判定を依頼すれば、書類収集の段取りまで一気に進められます。費用の詳細は「建設業許可の行政書士費用を節約する7つの方法」もご参照ください。

自分で申請するのが難しいケース/問題ないケース

「結局、自分で申請できるのか?」という最終的な疑問に、ケース別で回答します。

状況 自己申請の難易度 推奨
社内に一級国家資格者がおり、経管候補も明確 比較的容易 時間があれば自己申請も可
資格なし・実務経験10年で証明が必要 高い 行政書士への依頼推奨
経管候補の経歴が複数社にまたがる 非常に高い 行政書士への依頼推奨
個人事業主からの法人成り直後 高い 事前相談が有効
2回目以降の更新・業種追加 低い 自己申請も十分可能

新規申請で要件立証に不安がある場合は、まず要件判定だけを依頼するという選択肢もあります(報酬1〜3万円程度の事務所が多い)。

よくある質問(FAQ)

Q1. 建設業許可の合格率は何%ですか?

A. 建設業許可に「合格率」という概念は存在しません。5つの要件を書類で立証できれば必ず許可が出る制度です。「難易度」は要件立証の手間の大きさで判断されます。

Q2. もっとも難しい要件はどれですか?

A. 営業所技術者等(旧:専任技術者)の要件です。資格がない場合、実務経験10年分の契約書・請求書を揃える必要があり、書類収集で行き詰まるケースが最多です。

Q3. 実務経験10年はどうやって証明しますか?

A. 工事請負契約書・注文書・請求書・入金記録・健康保険被保険者証などの客観資料で証明します。書類が失われている場合、当時の取引先に協力を依頼して代替資料を集めます。

Q4. 無資格でも建設業許可は取れますか?

A. 取れます。実務経験10年以上(指定学科卒業で5年や3年に短縮)があれば、営業所技術者等の要件は資格なしでも満たせます。

Q5. 建設業許可を取れない人の典型例は?

A. ①経管の経験を客観資料で示せない、②実務経験10年分の書類が残っていない、③欠格要件(禁固以上の刑を受けて5年未満など)に該当する、のいずれかに当てはまるケースです。①②は時間をかければ対処可能、③は原則取得できません。

Q6. 建設業許可の申請から取得までどのくらいかかりますか?

A. 要件整理・書類収集を含めて新規申請は2〜3か月が目安です。知事許可の審査期間は30〜60日、大臣許可は90〜120日程度です。

まとめ:建設業許可の難易度の正体は「立証作業」にある

建設業許可の難易度をまとめると、次のとおりです。

  • 「合格率」という概念はなく、5要件を満たせば必ず取得できる
  • もっとも難しいのは営業所技術者等(難易度★★★★★)、次に経営業務管理責任者(★★★★)の要件
  • 難しさの正体は「要件の該当性」ではなく「書類での立証作業」
  • 資格ルート活用・書類の早期棚卸し・業種の絞り込み・改正後の緩和ルール活用・専門家相談で難易度は大きく下がる

「難しいから無理」ではなく、「どこが難しく、どう対処するか」を要件ごとに分解して考えれば、建設業許可は現実的に手の届く選択肢です。本記事の★評価と対策を、取得判断の出発点として活用してください。

要件判定だけのご相談も承っています。ご自身のケースが許可要件を満たすか不安な方は、まずは現状整理からお気軽にお問い合わせください。

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