頼んでいた行政書士が廃業しても、亡くなっても、あなたの建設業許可は消えません。許可は建設業者(会社・個人)のものであり、手続きを代理していた行政書士に紐づくものではないからです。

「担当の先生がいなくなったら許可も無効になるのでは」と身構えてしまいますが、その心配は要りません。消えるのは行政書士との委任関係だけで、許可そのものは建設業者の側に残り続けます。

だから決算変更届や更新の手続きは、別の行政書士へ自由に引き継げます。行政書士に専属義務はなく、依頼先はいつでも選び直せます。

唯一の注意点は、手続きを止めて放置しないことです。決算変更届や更新には法定の期限があり、担当者がいなくなった時期から申請が滞っているおそれがあります。

この記事では、許可が消えない理由と別の行政書士への引き継ぎ手順、そして控えが手元にないときの復元方法までを行政書士の視点で整理します。

この記事でわかること:

  • 行政書士が廃業・死亡しても建設業許可が消えない理由(許可は「建設業者」のもの)
  • なぜ別の行政書士に引き継げるのか(委任契約と民法第653条の関係)
  • 引き継ぎに必要なものと、控えが手元にないときの復元方法
  • 新しい行政書士への引き継ぎ手順(5ステップ)
  • 「死亡」の場合に特有の注意点(原本・実印を預けたままのケース)
  • 混同注意:建設業者「本人」が死亡した場合は相続の承継認可という別の手続き
  • 費用の目安と問い合わせ窓口

目次

大前提|建設業許可は「建設業者」のもので、行政書士に紐づかない

額入りの証書=建設業許可は行政書士でなく建設業者(会社・個人)に帰属することのイメージ

不安を解消する出発点は、建設業許可が誰のものかを正しく理解することです。ここを押さえれば、行政書士の廃業・死亡を過度に恐れる必要はなくなります。

建設業許可は、許可を受けた建設業者(法人または個人事業主)に帰属します。会社であれば会社が、個人事業主であればその個人が、許可の名義人です。

手続きを代理していた行政書士は、あくまで申請・届出を代わりに行う専門家にすぎません。許可が行政書士に「預けられている」わけでも、行政書士名義になっているわけでもありません。

したがって、行政書士が廃業・死亡しても、許可そのものは建設業者の側に残り続けます。無効になったり、自動的に取り消されたりすることはありません。

消えるのは「許可」ではなく、その行政書士との「委任関係」だけです。だからこそ、別の行政書士へ委任し直せば手続きを続けられます。

結論(直答)|別の行政書士に自由に引き継げる。放置だけは避ける

あらためて結論です。依頼先の行政書士はいつでも自由に変更でき、廃業・死亡した場合も別の行政書士に引き継げます

行政書士に「専属義務」のようなものはなく、どの行政書士に頼むかは建設業者が自由に選べます。前の担当者から引き継ぎを受けられなくても問題ありません。

唯一気をつけたいのは、手続きを止めて放置してしまうことです。決算変更届(毎事業年度後4か月以内)や更新(有効期限の30日前まで)には法定の期限があります。

担当者がいなくなった時期から、これらの手続きが止まっているおそれがあります。放置すると、最悪の場合は許可の失効につながるため、早めに引き継ぎ先を決めることが大切です。

なお、担当者が「廃業・死亡」ではなく単に「連絡が取れない」だけのケースは、対処の切り口が少し異なります。その場合は担当の行政書士と連絡が取れないときの対処法をご覧ください。

なぜ引き継げるのか|委任契約は受任者の死亡等で終了する(民法第653条)

契約書と万年筆=委任契約は民法第653条で受任者の死亡等により終了することのイメージ

「別の行政書士に引き継げる」ことには、明確な法的な裏づけがあります。委任契約の終了に関する民法のルールです。

民法第653条|委任は当事者の死亡・破産等で終了する

行政書士に手続きを依頼する契約は、法律上は「委任(正確には準委任)」にあたります。この委任は、次の事由で終了すると定められています。

委任が終了する事由 根拠
委任者または受任者の死亡 民法第653条第1号
委任者または受任者が破産手続開始の決定を受けたこと 民法第653条第2号
受任者が後見開始の審判を受けたこと 民法第653条第3号

行政書士への依頼は法律行為でない事務の委託を含むため、厳密には「準委任」ですが、民法第656条により第653条が準用されます。つまり受任者である行政書士が死亡すれば、その委任は終了します。

委任は終わっても「許可」は残るので、委任し直せる

ここで重要なのは、終了するのは委任契約であって、許可ではないという点です。前述のとおり、許可は建設業者に帰属したまま残ります。

だからこそ、従来の委任が終わっても、建設業者は新たな受任者(別の行政書士)に委任し直すことで手続きを続けられます。これが「引き継げる」ことの法的な仕組みです。

廃業の場合は委任契約を合意で解除する形が一般的ですが、いずれにせよ、建設業者はいつでも新しい行政書士に依頼できます。

引き継ぎに必要なもの|控えがなくても対応できる

まとめた書類の束=別の行政書士への引き継ぎに必要な書類のイメージ

別の行政書士に引き継ぐとき、手元にあると引き継ぎがスムーズになる書類があります。まずは探してみてください。

あると望ましい書類 用途
建設業許可通知書(原本) 許可番号・有効期限・許可業種の確認
過去の申請書の副本(受付印のある控え) これまでの申請内容・技術者等の確認
直近の決算変更届・変更届の控え 提出済み年度・未提出年度の把握
定款・登記事項証明書・納税証明書など 会社情報・要件の確認

ただし、これらがすべて揃っていなくても引き継ぎは可能です。控えが手元にない、前任者に預けたまま回収できない、という状態でも心配はいりません。

許可の記録は許可行政庁(都道府県など)に残っているため、そこから現状を確認して書類を組み直せます。次の章で具体的な方法を説明します。

控えが手元にない・亡くなった行政書士に預けたままのとき

廃業・死亡のケースでは、「必要書類を前の担当者に預けたまま、返してもらえない」という状況が起こりがちです。それでも復元できます。

許可行政庁で自社の許可・届出状況を確認できる

知事許可なら都道府県の建設業許可担当課(埼玉県知事許可なら埼玉県庁 県土整備部 建設管理課)で、自社の状況を確認できます。本人確認のうえ、次のような情報を把握できます。

  • 許可番号・許可年月日・有効期限・許可業種
  • 決算変更届の提出状況(未提出年度)
  • 届出済みの役員・技術者・営業所などの内容

さらに、都道府県によっては過去の申請書副本の閲覧や写しの交付を受けられます。許可通知書についても、運用により再交付や内容確認に応じてもらえる場合があります。

ただし、閲覧・写し交付・再交付の可否や手続きは都道府県ごとに運用が異なるため、まずは自社の許可行政庁に確認してください。

新しい行政書士が「現状の復元」を代行できる

これらの確認作業は、委任状を出せば新しい行政書士がまとめて代行できます。行政庁の記録や閲覧制度を使って、現在の許可・届出の状況を復元します。

そのうえで、未提出の届出を洗い出し、必要な書類を作り直して申請していきます。「控えがないから引き継げない」ということはありません。

新しい行政書士への引き継ぎ手順|5ステップ

ノートと並んだフォルダ=新しい行政書士への引き継ぎ手順のイメージ

実際に別の行政書士へ引き継ぐときの流れを、5つのステップで整理します。順番どおりに進めるのが安全です。

ステップ1|現状把握(許可通知書で有効期限を確認)

まず手元の許可通知書で、有効期限と許可番号を確認します。有効期限が近い(半年〜数か月以内)ほど、引き継ぎを急ぐ必要があります。

あわせて、決算月から数えて直近の決算変更届の期限が過ぎていないかも見ておきます。通知書が見当たらない場合は、次のステップで行政庁に確認します。

ステップ2|許可行政庁で許可・届出状況を確認する

許可行政庁に問い合わせ、許可番号・有効期限・決算変更届の未提出年度・届出済みの内容を確認します。控えが一切なくても、ここで現状を正確に把握できます。

この確認は、次のステップで委任する新しい行政書士に代行してもらうこともできます。

ステップ3|未提出の届出を洗い出す

確認した情報をもとに、未提出の決算変更届や変更届がないかを洗い出します。担当者がいなくなった時期以降、届出が数年分たまっているケースは珍しくありません。

未提出が複数年分あると更新申請が受理されないため、更新前に片づける必要があります。詳しくは事業年度終了届を出さないとどうなる?で解説しています。

ステップ4|委任契約・委任状を交わす

引き継ぎ先の行政書士と委任契約を結び、委任状を交付します。これにより、行政庁への確認・書類の復元・未提出分の作成をまとめて任せられます。

前任者との契約は死亡・廃業で終了しているため、新たに委任関係を作り直す形になります。

ステップ5|順次、届出・更新を申請する

未提出分の届出を古い年度から順に提出し、必要に応じて更新申請へ進みます。有効期限が迫っている場合は、未提出分の提出と更新準備を並行して進めます。

これで手続きの流れが正常化し、以後は新しい行政書士が継続的にサポートできる体制になります。

「死亡」の場合の注意点|原本・実印を預けたままのとき

担当の行政書士が亡くなった場合は、廃業とは違う特有の注意点があります。書類や物品の回収が難しくなりがちな点です。

亡くなった行政書士に許可通知書の原本・重要書類・会社の実印などを預けたままだと、遺族や事務所の後任者から返してもらう交渉が必要になり、時間がかかることがあります。

回収が難しい場合でも、多くは再取得・再作成で対応できます。許可通知書は行政庁で状況確認や再交付を相談でき、印鑑登録証明書などは市区町村で取り直せます。

実印を預けていて所在が不明な場合は、悪用防止の観点から改印(登録印の変更)を検討すると安心です。個人情報や機密書類の取り扱いにも配慮しましょう。

いずれにせよ、原本が戻らないことが引き継ぎの決定的な障害になることは多くありません。行政庁の記録をもとに、新しい行政書士が現状を立て直せます。

混同注意|「建設業者本人(個人事業主)が死亡」した場合は別の話

ここで、必ず区別してほしい重要なポイントがあります。「手続きを頼んでいた行政書士」の死亡と、「許可を受けている建設業者本人」の死亡は、まったく別の問題です。

本記事がここまで扱ってきたのは、あくまで依頼先の行政書士が廃業・死亡したケースです。この場合、許可は建設業者に残り、別の行政書士へ引き継げます。

個人事業主本人の死亡は「相続の承継認可」の問題

一方、許可を受けている個人事業主本人が亡くなった場合は、話が変わります。個人事業の建設業許可はその個人に帰属するため、そのままでは相続人が引き継げません。

この場合、相続人は建設業法第17条の3に基づく「相続の承継認可」を申請します。認可を受ければ、許可を切らさずに事業を引き継げます。

誰が亡くなったか 問題の性質 期限
依頼先の行政書士 委任の終了(民法第653条)。許可は残り、別の行政書士に引き継ぐ 委任側に法定期限なし(届出・更新の期限は通常どおり)
建設業者本人(個人事業主) 相続の承継認可(建設業法第17条の3) 被相続人の死亡後30日以内に認可申請

この「30日以内」は個人事業主本人が亡くなったときの相続承継のルールであり、行政書士の死亡とは無関係です。二つの「死亡」を混同しないよう注意してください。

建設業者本人が亡くなった場合の手続きは、建設業許可の相続・承継認可で詳しく解説しています。

費用の目安|切り替え自体に特別費用はない

電卓と契約フォルダ=行政書士切り替えの費用の目安のイメージ

別の行政書士への切り替えを不安に思う理由の一つが費用ですが、切り替えそのものに特別な費用はかかりません

新しい行政書士に支払うのは、実際に依頼する手続きの通常報酬です。目安として決算変更届は3〜8万円程度、更新はそれ以上が一般的で、事務所や難易度により幅があります。

ただし、未提出の届出が複数年分たまっていると、その年度分の作業が加わります。放置期間が長いほど負担が増えるため、早めに現状を確認して依頼するほど費用も抑えやすくなります。

問い合わせ窓口|どこに相談すればよいか

相談窓口カウンター=建設業許可の問い合わせ窓口のイメージ

自社の許可の状況を確認する窓口は、許可の種類によって異なります。営業所の所在地で判断します。

許可の種類 窓口
埼玉県知事許可(営業所が埼玉県内のみ) 埼玉県庁 県土整備部 建設管理課
大臣許可(複数の都道府県に営業所がある) 関東地方整備局
電子申請 建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)

注意点として、県内各地にある県土整備事務所は、県管理の道路・河川の工事に関する窓口であり、建設業許可の受付窓口ではありません。許可の相談は建設管理課(知事許可)が窓口です。

自社が知事許可か大臣許可かわからないときは、まず許可通知書の記載を確認してください。埼玉県での申請の基礎は埼玉県の建設業許可もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 頼んでいた行政書士が廃業・死亡しました。建設業許可も無効になりますか?

無効になりません。建設業許可は許可を受けた建設業者(法人・個人事業主)に帰属するもので、手続きを代理していた行政書士に紐づくものではありません。

行政書士が廃業・死亡しても許可そのものは残ります。ただし決算変更届や更新には法定期限があるため、別の行政書士に引き継ぐか自社で申請し、手続きを止めないことが重要です。

Q. 別の行政書士に自由に変更(引き継ぎ)できますか?

できます。行政書士に専属義務はなく、依頼先はいつでも変更できます。従来の委任契約は受任者である行政書士の死亡等で終了しますが(民法第653条)、許可は残っています。

そのため、新たに別の行政書士へ委任し直せば手続きを続けられます。前任者の協力が得られなくても引き継ぎは可能です。

Q. 許可通知書や過去の申請書の控えが手元にありません。引き継げますか?

引き継げます。控え(副本)が手元になくても、許可行政庁で自社の許可番号・有効期限・届出の提出状況を確認できます。

都道府県によっては過去の申請書類の閲覧や写しの交付を受けられるため、それをもとに新しい行政書士が現状を復元できます。まずは許可行政庁への確認が出発点です。

Q. 建設業者の社長本人が亡くなった場合も同じ扱いですか?

別の話です。手続きを頼んでいた行政書士の死亡と、許可を受けている建設業者本人(個人事業主)の死亡は区別します。

個人事業主本人が亡くなった場合は、相続人が建設業法第17条の3の相続の承継認可を、死亡後30日以内に申請する必要があります。この30日は行政書士の死亡とは無関係です。

Q. 別の行政書士に切り替えると費用は余計にかかりますか?

切り替えそのものに特別な費用はかかりません。新しい行政書士に支払うのは、決算変更届や更新など実際に依頼する手続きの通常報酬です。

目安として決算変更届は3〜8万円程度、更新はそれ以上が一般的です。未提出年度が複数たまっているとその分の作業が増えるため、早めの依頼ほど負担を抑えられます。

関連記事(内部リンク)

まとめ|行政書士が廃業・死亡しても、許可は消えない。落ち着いて引き継ぎを

本記事の要点を整理します。

  • 建設業許可は建設業者(会社・個人)に帰属し、行政書士に紐づかない。行政書士が廃業・死亡しても許可は消えない
  • 依頼先の行政書士はいつでも自由に変更でき、別の行政書士へ引き継げる
  • 従来の委任は受任者の死亡等で終了する(民法第653条)が、許可は残るので委任し直せる
  • 許可通知書や控えが手元になくても、許可行政庁の記録・閲覧制度で復元できる
  • 「死亡」の場合は原本・実印を預けたままだと回収が難しいことがあるが、再取得・再作成で対応できる
  • 混同注意:建設業者本人(個人事業主)の死亡は、建設業法第17条の3の相続承継認可(死亡後30日以内)という別の手続き

いちばん避けたいのは、「担当がいなくなったから」と手続きを止めて放置することです。許可の期限は担当者の事情と関係なく進むため、早めに引き継ぎ先を決めて現状を確認することが、許可を守る最大のポイントになります。

前任の先生が廃業・死亡して途方に暮れている、控えが一切なく何から動けばいいか分からない、更新期限が目前に迫っている——どれか一つでも当てはまるなら、建設業許可を扱う行政書士に早めに声をかけてください。

当事務所は、前任者からの引き継ぎ、行政庁での現状確認、未提出分のまとめ提出、更新申請までを新しい担当として通しで引き受けます。埼玉県を中心にお受けし、初回のご相談は無料です。抱え込まず、まずは状況をお聞かせください。


免責事項:本記事は2026年7月時点の法令(建設業法・建設業法施行規則、令和6年12月13日施行の改正建設業法、および民法)に基づき、一般的な情報提供を目的として作成しています。法律上のアドバイスを構成するものではありません。

申請書副本の閲覧・写し交付、許可通知書の再交付の可否など運用の細部は都道府県で異なります。個別の案件については、行政書士等の専門家または管轄の行政庁にご相談ください。条文の最新の正確な文言はe-Gov法令検索(建設業法)およびe-Gov法令検索(民法)でご確認ください。

この記事をシェアする