「建設業許可は取得したけれど、公共工事を受注するにはどうすればいいの?」——建設業許可を取得した事業者から、次のステップとしてこのような質問を多くいただきます。

結論から言えば、公共工事を受注するためには経営事項審査(経審)を受けなければなりません。経営事項審査とは、建設業許可業者の経営規模・経営状況・技術力・社会性などを客観的に数値化する審査制度です。この審査結果をもとに、各発注機関が入札参加資格の等級格付けを行います。

この記事では、経営事項審査の仕組みから審査項目、申請の流れ、費用、入札参加資格取得までの全体像をわかりやすく解説します。公共工事への参入を検討している事業者の方は、ぜひ最後までお読みください。

この記事でわかること:

  • 経営事項審査(経審)の制度概要と目的
  • 審査項目(経営状況分析Y・経営規模等評価X・総合評定値P)の仕組み
  • 経審の申請から入札参加資格取得までの流れ(6ステップ)
  • 経審にかかる費用
  • 経審に必要な書類一覧
  • 総合評定値(P点)を上げるためのポイント

経営事項審査(経審)とは?

経営事項審査(通称:経審)とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業許可業者が必ず受けなければならない審査です(建設業法第27条の23、e-Gov法令検索)。

公共工事の各発注機関(国・都道府県・市区町村など)は、競争入札に参加しようとする建設業者に対して資格審査を行うことが義務付けられています。この資格審査のうち、客観的事項の審査にあたるのが経営事項審査です。

経審の目的

経営事項審査は、建設業者の施工能力を客観的な数値で評価し、発注機関が適切な業者を選定できるようにすることを目的としています。具体的には以下の役割を果たしています。

  • 公平な競争環境の確保:すべての業者を同じ基準で評価する
  • 発注機関の業者選定:等級格付け(ランク付け)の客観的根拠となる
  • 公共工事の品質確保:一定水準以上の施工能力を持つ業者を確認する
  • 建設業の健全な発展:経営基盤や技術力の向上を促す

経審が必要な工事・不要な工事

経審が必要になるのは、公共工事を発注者から直接請け負う場合(元請)です。以下の区分を確認してください。

工事の種類 経審の要否
公共工事を元請として受注する場合 必要
公共工事を下請として受注する場合 不要
民間工事のみを行う場合 不要

つまり、民間工事のみを行う建設業者には経審は不要です。ただし、将来的に公共工事の受注を視野に入れているのであれば、早い段階で経審の仕組みを理解しておくことをおすすめします。

経営事項審査の審査項目

経営事項審査は、大きく「経営状況分析」「経営規模等評価」の2つに分かれています。この2つの結果を組み合わせて算出されるのが「総合評定値(P点)」です。

全体の計算式

総合評定値(P点)は以下の計算式で求められます。

評価項目 記号 配点ウェイト 審査機関
経営規模(完成工事高) X1 0.25(25%) 許可行政庁
経営規模(自己資本額・利払前税引前償却前利益) X2 0.15(15%) 許可行政庁
技術力(技術職員数・元請完成工事高) Z 0.25(25%) 許可行政庁
社会性等(労働福祉・建設業の営業年数等) W 0.15(15%) 許可行政庁
経営状況(財務分析8指標) Y 0.20(20%) 登録経営状況分析機関

P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.25×Z + 0.15×W + 0.20×Y

P点が高いほど入札参加資格の等級格付けで有利になり、より大規模な公共工事への入札が可能になります。

経営状況分析(Y点)の詳細

経営状況分析は、登録経営状況分析機関が財務諸表をもとに8つの指標で企業の経営状態を数値化するものです。

区分 指標名 評価のポイント
負債抵抗力 純支払利息比率 借入金利の負担度。低いほど良い
負債回転期間 負債の返済スピード。短いほど良い
収益性・効率性 総資本売上総利益率 資本に対する利益の効率。高いほど良い
売上高経常利益率 売上に対する経常利益の割合。高いほど良い
財務健全性 自己資本対固定資産比率 固定資産を自己資本でカバーできているか
自己資本比率 総資本に占める自己資本の割合。高いほど良い
絶対的力量 営業キャッシュフロー 営業活動から生み出す現金。多いほど良い
利益剰余金 過去の利益の蓄積。多いほど良い

Y点の評価範囲は0点〜1,595点です。経営状況分析は許可行政庁ではなく、国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関に申請して受ける必要があります。

経営規模等評価(X・Z・W点)の詳細

経営規模等評価は、許可行政庁(都道府県知事または国土交通大臣)が審査を行います。

X1(完成工事高):業種ごとの完成工事高を評価します。直前2年平均または直前3年平均のいずれか有利な方を選択できます。評価範囲は118点〜2,309点です。

X2(自己資本額・利払前税引前償却前利益):自己資本額と利益額の2項目を評価します。評価範囲は454点〜2,280点です。

Z(技術力):許可業種に対応する技術職員の人数と、元請完成工事高を評価します。1級資格者ほど高い評価を受けます。評価範囲は456点〜2,441点です。

W(社会性等):以下の項目を総合的に評価します。評価範囲は0点〜2,136点です。

  • 労働福祉の状況:雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入、建設業退職金共済制度への加入等
  • 建設業の営業年数:長いほど加点
  • 防災活動への貢献:防災協定の締結等
  • 法令遵守の状況:営業停止処分の有無等
  • 建設業の経理の状況:公認会計士・税理士の関与等
  • 研究開発の状況:研究開発費の額
  • 建設機械の保有状況:ショベル系掘削機等の保有台数
  • ISO認証取得状況:ISO9001・ISO14001の取得
  • 若年技術者の育成・確保:35歳未満の技術者の割合等
  • 知識及び技術又は技能の向上に関する取組:CPD(継続教育)等
  • ワーク・ライフ・バランスに関する取組:えるぼし・くるみん認定等

経審の申請から入札参加資格取得までの流れ

経営事項審査を受けて入札参加資格を取得するまでには、以下の6つのステップを踏む必要があります。

ステップ1:決算変更届の提出

経審を受ける大前提として、直近の事業年度の決算変更届(事業年度終了届)が提出済みであることが必要です。決算変更届は事業年度終了後4か月以内に許可行政庁に届け出なければなりません。未提出の場合は経審の申請を受け付けてもらえないため、最優先で対応しましょう。

ステップ2:経営状況分析の申請

登録経営状況分析機関に経営状況分析(Y点)の申請を行います。申請には決算変更届に使用した財務諸表を提出します。分析結果は通常2〜3営業日程度で通知されます(電子申請の場合)。

主な登録経営状況分析機関には以下があります。

  • (一財)建設業情報管理センター(CIIC)
  • (株)マネージメント・データ・リサーチ
  • ワイズ公共データシステム(株)
  • (株)九州経営情報分析センター
  • (株)北海道経営情報センター
  • (株)ネットコア
  • (株)経営状況分析センター
  • (株)NKB
  • (株)建設業経営情報分析センター
  • (一社)建設業よろず相談室

ステップ3:経営規模等評価の申請(経審本体)

経営状況分析の結果通知書を受け取ったら、許可行政庁に経営規模等評価の申請を行います。これが一般的に「経審を受ける」と言われる手続きです。知事許可の場合は都道府県、大臣許可の場合は地方整備局が申請先となります。

申請後、通常30日〜60日程度で審査結果(経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書)が届きます。

ステップ4:総合評定値通知書の受領

審査が完了すると総合評定値通知書が交付されます。この通知書には業種ごとのP点が記載されており、有効期間は審査基準日(決算日)から1年7か月です。公共工事を継続的に受注するためには、毎年経審を受け直して有効期間を切らさないことが重要です。

ステップ5:入札参加資格申請

総合評定値通知書を取得したら、公共工事を受注したい発注機関入札参加資格申請を行います。国の機関、都道府県、市区町村などそれぞれに申請が必要です。

入札参加資格の申請時期は発注機関ごとに異なりますが、多くの場合定期受付(1〜2年ごと)随時受付があります。申請スケジュールは各発注機関のウェブサイトで確認してください。

ステップ6:等級格付けの決定・入札参加

発注機関は、経審の総合評定値(P点)と独自の主観的審査(工事成績、地域貢献度など)を組み合わせて等級格付け(Aランク・Bランク・Cランクなど)を決定します。格付けに応じて入札可能な工事の規模が決まり、いよいよ公共工事の入札に参加できるようになります。

経営事項審査の費用

経営事項審査の費用は、大きく「経営状況分析の手数料」「経営規模等評価の審査手数料」「行政書士への依頼費用」の3つに分かれます。

費用の項目 金額 備考
経営状況分析手数料 13,000円〜14,000円 分析機関により異なる。電子申請で割引がある場合も
経営規模等評価手数料 11,000円+業種数×2,500円 1業種なら13,500円、5業種なら23,500円
行政書士への依頼費用 10万円〜20万円 経審+入札参加資格申請をまとめて依頼する場合の目安

たとえば、3業種で経審を受け、行政書士に依頼する場合の費用イメージは以下のとおりです。

  • 経営状況分析手数料:約13,500円
  • 経営規模等評価手数料:11,000円+2,500円×3=18,500円
  • 行政書士報酬:約15万円
  • 合計:約18万円〜19万円程度

経審は毎年受ける必要があるため、年間のランニングコストとして予算に組み込んでおくことが大切です。建設業許可にかかる費用とあわせて、全体のコスト計画を立てましょう。

経営事項審査の必要書類

経営事項審査に必要な書類は多岐にわたります。主な書類を以下にまとめます。

経営状況分析の必要書類

  • 経営状況分析申請書
  • 建設業財務諸表(貸借対照表・損益計算書・完成工事原価報告書・株主資本等変動計算書・注記表)
  • 建設業許可通知書の写し

経営規模等評価の必要書類

書類名 備考
経営規模等評価申請書・総合評定値請求書 許可行政庁所定の様式
工事種類別完成工事高・工事種類別元請完成工事高 業種ごとの施工実績
技術職員名簿 資格・実務経験を証明する書類も必要
その他の審査項目(社会性等) 各加点項目に応じた証明書類
経営状況分析結果通知書 ステップ2で取得したもの
建設業許可通知書の写し 有効な許可の確認
決算変更届の副本(控え) 直近の届出が完了していることの証明
消費税確定申告書・納税証明書 税抜き工事高の確認に使用
社会保険加入を証明する書類 健康保険・厚生年金・雇用保険の加入証明
建設業退職金共済契約者証の写し W点の加点項目として必要な場合

※都道府県によって必要書類や提出部数が異なります。必ず申請先の行政庁が発行する手引きで最新の情報を確認してください。

総合評定値(P点)を上げるためのポイント

P点は入札参加資格の等級格付けに直結するため、少しでも高いP点を取ることが公共工事の受注拡大につながります。以下に、比較的取り組みやすい改善ポイントを紹介します。

W点(社会性等)の加点項目を確実に押さえる

W点は自社の取り組み次第で改善しやすい項目です。特に以下は優先的に対応を検討しましょう。

  • 建設業退職金共済制度(建退共)への加入:従業員が1名でも加入可能で、W点の加点対象
  • 社会保険への適正な加入:健康保険・厚生年金・雇用保険の未加入は減点対象
  • 防災活動への貢献:地域の防災協定への参加で加点
  • 若年技術者の確保:35歳未満の技術者がいれば加点の可能性
  • CPD(継続教育)単位の取得:技術者のスキルアップで加点
  • えるぼし・くるみん認定の取得:ワーク・ライフ・バランスの取り組みで加点

Z点(技術力)の向上

技術職員の資格取得を推進することがZ点向上の近道です。1級施工管理技士は2級施工管理技士の約5倍のポイントがつくため、既存社員の1級資格取得を支援する体制を整えましょう。また、監理技術者資格者証の取得もZ点の加点要素です。

Y点(経営状況)の改善

Y点は財務指標に基づくため、中長期的な経営改善が必要です。特に効果が大きいのは以下の項目です。

  • 有利子負債の削減:純支払利息比率の改善
  • 利益率の向上:売上高経常利益率の改善
  • 自己資本の充実:利益剰余金の積み上げ

経審の有効期間と注意点

経審の結果(総合評定値通知書)の有効期間は審査基準日から1年7か月です。公共工事を継続的に受注するためには、この有効期間が途切れないよう毎年経審を受け直す必要があります。

有効期間を切らさないためのスケジュール管理のポイントは以下のとおりです。

  • 決算終了後すみやかに決算変更届を提出する
  • 決算変更届の提出後、速やかに経営状況分析を申請する
  • 分析結果が届いたらすぐに経営規模等評価を申請する
  • 毎年同じ時期にルーティンとして組み込む

なお、建設業許可の更新(5年ごと)と経審(毎年)は別の手続きです。経審の手続きで忙しくても、許可の更新期限を見落とさないよう注意してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 経営事項審査は建設業許可があれば誰でも受けられますか?

はい、建設業許可を受けている事業者であれば、法人・個人を問わず経審を受けることができます。ただし、直近の決算変更届が提出済みであることが前提条件です。また、建設業許可の要件を満たし、有効な許可を保持していることが必要です。

Q. 経審の結果が出るまでどのくらいかかりますか?

経営状況分析は2〜3営業日程度、経営規模等評価は申請から30〜60日程度が一般的です。ただし、申請時期や都道府県によって前後します。繁忙期(決算が集中する3月〜6月頃)は通常より時間がかかる場合があります。

Q. 経審を受けずに公共工事を受注する方法はありますか?

元請として直接受注する場合、経審は法律上の義務であり、省略することはできません。ただし、元請業者の下請として公共工事に携わる場合は経審不要です。まずは下請として実績を積み、準備が整ってから元請参入を目指す方法もあります。

Q. 特定建設業許可でないと経審は受けられませんか?

一般建設業許可でも経審は受けられます。特定建設業許可は下請代金の合計が一定額以上の場合に必要な許可区分であり、経審の受審要件とは別の制度です。公共工事の規模や下請への発注金額に応じて、どちらの許可が必要か判断してください。

Q. 経審を毎年受け直す必要がある理由は?

総合評定値通知書の有効期間が審査基準日から1年7か月のためです。有効な経審結果がない状態では入札に参加できません。公共工事を継続的に受注するためには、毎年の決算ごとに経審を受け直し、有効期間を途切れさせないことが重要です。

まとめ

経営事項審査(経審)は、建設業許可業者が公共工事を元請として受注するために欠かせない制度です。経営状況分析(Y)・経営規模等評価(X・Z・W)を経て算出される総合評定値(P点)が、入札参加資格の等級格付けの基礎となります。

経審から入札参加までの重要ポイントを改めて整理します。

  • 前提条件:建設業許可の保持+決算変更届の提出完了
  • 費用の目安:分析手数料約13,500円+評価手数料(11,000円+業種数×2,500円)+行政書士報酬
  • 有効期間:審査基準日から1年7か月(毎年の受審が必要)
  • P点向上のカギ:W点(社会性等)の加点確保、技術者の資格取得推進、財務体質の改善

公共工事への参入は、安定した受注基盤の確保や企業の信頼性向上につながります。「どこから手をつければいいかわからない」という方は、まず建設業許可の要件を確認し、決算変更届の提出状況を整理することから始めましょう。経審の手続きに不安がある場合は、建設業許可に詳しい行政書士への相談をおすすめします。

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