最終更新日:2026年4月13日|令和6年改正建設業法(2024年12月施行)対応済み

「電気工事業を営んでいるが、建設業許可は取るべきなのか」「電気工事業の登録と建設業許可は何が違うのか」——元請会社から建設業許可の取得を求められたことをきっかけに、こうしたご相談が増えています。

結論から言えば、電気工事業には「電気工事業法に基づく登録・届出」と「建設業法に基づく建設業許可」の2つの制度があり、それぞれ目的・根拠法・要件が異なります。電気工事を行うためには電気工事業登録が必須ですが、請負金額が500万円以上の工事を受注するには建設業許可も必要です。

この記事では、電気工事業における建設業許可の必要性を軸に、電気工事業登録との制度的な違い、建設業許可の取得要件、実務上どちらが必要になるかを体系的に解説します。

※令和6年(2024年)12月13日施行の改正建設業法により、「専任技術者」の法律上の名称は「営業所技術者等」に変更されました。本記事では、検索される方のわかりやすさを考慮し、旧名称の「専任技術者」も併記しています。

この記事でわかること:

  • 電気工事業登録と建設業許可の制度的な違い
  • 建設業許可が必要になる具体的なケース
  • 電気工事業で建設業許可を取得するための5つの要件
  • 営業所技術者等(旧:専任技術者)に必要な資格一覧
  • 「みなし登録電気工事業者」の届出についての注意点

電気工事業に関わる2つの制度を理解する

電気工事業を営むにあたっては、電気工事業法(電気工事業の業務の適正化に関する法律)建設業法という2つの法律が関わってきます。まずはそれぞれの制度の全体像を整理しましょう。

電気工事業登録(電気工事業法)とは

電気工事業登録とは、電気工事業法に基づき、電気工事業を営む者が都道府県知事または経済産業大臣に対して行う登録です。電気工事の施工品質と安全性を確保するための制度であり、電気工事を行うすべての事業者に義務づけられています

電気工事業登録には以下の4つの区分があります。

区分 対象 有効期間
登録電気工事業者 建設業許可を持たずに電気工事業を営む者 5年(更新が必要)
みなし登録電気工事業者 建設業許可を取得している電気工事業者 建設業許可の有効期間と同じ
通知電気工事業者 自家用電気工作物のみの電気工事を行う者(建設業許可なし) 期限なし
みなし通知電気工事業者 自家用電気工作物のみの電気工事を行う者(建設業許可あり) 建設業許可の有効期間と同じ

重要なポイントは、建設業許可を取得した場合、登録電気工事業者から「みなし登録電気工事業者」への届出の切り替えが必要になるという点です。この届出を怠ると法令違反となりますので注意してください。

建設業許可(建設業法)とは

建設業許可とは、建設業法第3条に基づき、一定規模以上の建設工事を請け負う事業者に対して必要となる許可制度です。電気工事業は建設業法上の29業種のうちの1つとして位置づけられています。

建設業許可が必要となる基準は以下のとおりです。

  • 1件の請負代金が500万円以上(税込)の電気工事を請け負う場合
  • 元請・下請を問わず、上記金額以上の工事には建設業許可が必要

逆に言えば、500万円未満の電気工事のみを請け負う場合は、電気工事業登録だけで営業できます。ただし、実務上は元請会社から建設業許可の取得を求められるケースが増えており、請負金額にかかわらず建設業許可を取得するメリットは大きいと言えます。

電気工事業登録と建設業許可の違いを比較

2つの制度の違いを一覧表で整理します。混同しやすい制度ですので、根拠法・目的・要件をしっかり区別しておきましょう。

比較項目 電気工事業登録 建設業許可(電気工事業)
根拠法 電気工事業法 建設業法
目的 電気工事の安全性・品質の確保 建設工事の適正な施工と発注者の保護
必要なケース 電気工事を行うすべての事業者 500万円以上の電気工事を請け負う場合
技術者要件 主任電気工事士(第一種または第二種電気工事士で3年以上の実務経験)の配置 営業所技術者等(旧:専任技術者)の配置(1級・2級電気工事施工管理技士等)
財産要件 なし 自己資本500万円以上等
有効期間 5年 5年
申請先 都道府県知事または経済産業大臣 都道府県知事または国土交通大臣
手数料 22,000円(登録) 9万円(知事許可・新規)

電気工事業登録と建設業許可は「どちらか一方」ではなく、条件に応じて「両方必要」になるケースがある点が最大のポイントです。建設業許可を取得しても電気工事業登録(みなし登録への切り替え届出)は別途必要ですので、忘れずに手続きを行いましょう。

建設業許可が必要になる3つのケース

電気工事業者が建設業許可の取得を検討すべき具体的なケースを3つ紹介します。

ケース1:500万円以上の工事を請け負う場合

建設業法上、1件の請負代金が500万円以上(税込)の電気工事を請け負うには建設業許可が必須です。これは最も基本的なケースであり、法律上の義務です。無許可で500万円以上の工事を請け負った場合、建設業法第47条により3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。なお、建設業許可制度の詳細については国土交通省「建設業の許可とは」もあわせてご確認ください。

ケース2:元請会社から許可取得を求められた場合

近年、元請会社が下請業者に対して建設業許可の取得を条件にするケースが増えています。コンプライアンス意識の向上や、公共工事への参入要件として、500万円未満の工事であっても建設業許可を持つ下請業者を選ぶ傾向が強まっています。許可を取得することで受注機会の拡大につながります。

ケース3:事業を拡大したい場合

将来的に大規模工事への参入や公共工事の受注を目指す場合、建設業許可は不可欠です。また、経営事項審査(経審)を受けて公共工事の入札に参加するには、建設業許可を取得していることが前提条件となります。

電気工事業の建設業許可を取得するための5つの要件

電気工事業で建設業許可を取得するために必要な5つの要件を解説します。基本的な要件は他の業種と共通ですが、営業所技術者等(旧:専任技術者)の資格要件は電気工事業に特有のものがあります。建設業許可の要件の詳細については「建設業許可の要件とは?取得に必要な5つの条件をわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。

要件1:経営業務の管理責任者がいること

法人の場合は常勤の役員のうち1人が、個人の場合は本人または支配人が、建設業に関する経営業務の管理責任者としての経験を有していることが必要です。

具体的には、以下のいずれかの経験が求められます。

  • 建設業に関する5年以上の経営業務の管理責任者としての経験
  • 建設業に関する5年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位での経験
  • 建設業に関する6年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位での経験(経営業務の執行に関して取締役会の決議を経て取締役会等から具体的な権限委譲を受けた者)

なお、令和2年の法改正により、経験する建設業の業種は電気工事業に限定されず、建設業全般の経験で要件を満たせるようになりました。

要件2:営業所技術者等(旧:専任技術者)がいること

電気工事業の建設業許可で最も重要な要件が、営業所技術者等の確保です。営業所ごとに、電気工事業に対応した資格または実務経験を持つ技術者を常勤で配置する必要があります。

一般建設業と特定建設業で求められる資格が異なります。

許可区分 営業所技術者等として認められる資格・経験
一般建設業 ・1級電気工事施工管理技士
・2級電気工事施工管理技士
・第一種電気工事士
・技術士(建設部門・電気電子部門等)
・電気工事の実務経験10年以上
・指定学科卒業+実務経験(大卒3年、高卒5年)
特定建設業 ・1級電気工事施工管理技士
・技術士(建設部門・電気電子部門等)
・一般建設業の営業所技術者等要件+指導監督的実務経験2年以上

なお、第二種電気工事士は電気工事業登録における主任電気工事士としては認められますが、建設業許可の営業所技術者等としてはそれだけでは認められません。実務経験の要件をあわせて満たす必要がある点に注意してください。

令和6年12月の法改正により、一定の要件を満たせば営業所技術者等が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)の工事現場の監理技術者等を兼務できるようになりました。技術者の配置計画に活用できる制度です。

要件3:誠実性があること

法人の場合は法人自身・役員等・支店長等が、個人の場合は本人・支配人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが求められます。通常の事業者であれば問題になることは少ない要件です。

要件4:財産的基礎があること

建設業を営むにあたって十分な財産的基礎が必要です。

許可区分 財産的基礎の要件
一般建設業 以下のいずれかを満たすこと
・自己資本が500万円以上
・500万円以上の資金調達能力がある
・許可申請直前の過去5年間に許可を受けて継続して営業した実績がある
特定建設業 以下のすべてを満たすこと
・欠損の額が資本金の20%を超えていない
・流動比率が75%以上
・資本金が2,000万円以上
・自己資本が4,000万円以上

建設業許可の取得に必要な費用の詳細については「建設業許可の費用」のページもご参照ください。

要件5:欠格要件に該当しないこと

以下のような欠格要件に該当しないことが必要です。

  • 破産者で復権を得ない者
  • 建設業許可を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者

建設業許可の難易度や取得のハードルについては「建設業許可の難易度」のページで詳しく解説しています。

建設業許可取得後の届出:みなし登録電気工事業者届出

建設業許可を取得した電気工事業者は、「みなし登録電気工事業者」としての届出を行う必要があります。これは建設業許可とは別に、電気工事業法に基づいて必要となる手続きです。

届出のポイントは以下のとおりです。

  • 届出先は都道府県知事(営業所が複数の都道府県にある場合は経済産業大臣)
  • 届出は建設業許可取得後遅滞なく行う必要がある
  • 届出を怠ると1万円以下の過料が科される可能性がある
  • 既存の電気工事業登録は、みなし登録への切り替えにより効力を失う
  • 建設業許可の更新時にも、みなし登録の届出を改めて行う必要がある

建設業許可の取得だけで安心せず、電気工事業法上の届出も忘れずに行いましょう

電気工事業の種類:一般建設業と特定建設業の違い

建設業許可には一般建設業許可特定建設業許可の2種類があります。電気工事業においても、この区分は重要です。

区分 必要なケース 下請代金の上限
一般建設業許可 下請に出す金額が4,500万円未満の場合 4,500万円未満
特定建設業許可 元請として、下請に出す金額が4,500万円以上の場合 制限なし

多くの電気工事業者は一般建設業許可で足りるケースがほとんどです。特定建設業許可が必要になるのは、大規模な元請工事で多額の下請契約を結ぶ場合に限られます。

よくある質問(FAQ)

Q. 電気工事業登録だけで建設業許可は不要ですか?

500万円未満の電気工事のみを請け負う場合は、電気工事業登録だけで営業可能です。ただし、500万円以上の工事を受注する予定がある場合や、元請会社から建設業許可を求められている場合は、建設業許可の取得が必要です。

Q. 第二種電気工事士で建設業許可は取れますか?

第二種電気工事士の資格だけでは、建設業許可の営業所技術者等の要件を直接満たすことはできません。ただし、第二種電気工事士の資格に加えて電気工事の実務経験が一定年数以上ある場合は、実務経験の要件で営業所技術者等になれる可能性があります。

Q. 建設業許可を取得したら電気工事業登録は不要になりますか?

いいえ、建設業許可を取得しても電気工事業法上の届出は必要です。建設業許可の取得後は「登録電気工事業者」から「みなし登録電気工事業者」へ届出を切り替える必要があります。届出を怠ると法令違反となりますのでご注意ください。

Q. 電気工事業と電気通信工事業の違いは何ですか?

電気工事業は発電設備・送配電設備・構内電気設備等の設置工事を扱い、電気通信工事業は電話・LAN・放送設備等の通信設備に関する工事を扱います。建設業法上は別の業種であり、それぞれ別の建設業許可が必要です。

Q. 個人事業主でも電気工事業の建設業許可は取れますか?

はい、個人事業主でも建設業許可の取得は可能です。法人・個人を問わず、5つの要件を満たせば許可を取得できます。ただし、個人事業主の場合は事業主本人が経営業務の管理責任者と営業所技術者等を兼任するケースが多く、要件を満たす人材が限られる点に留意してください。

まとめ:電気工事業者は「2つの制度」を正しく理解しよう

電気工事業で建設業許可が必要かどうかは、請負金額や事業の方向性によって異なります。本記事のポイントをまとめます。

  • 電気工事業には電気工事業登録(電気工事業法)建設業許可(建設業法)の2つの制度がある
  • 電気工事を行うには電気工事業登録が必須、500万円以上の工事には建設業許可も必要
  • 建設業許可の最大のハードルは営業所技術者等(旧:専任技術者)の確保
  • 電気工事業の営業所技術者等には、1級・2級電気工事施工管理技士や第一種電気工事士などの資格が有効
  • 建設業許可取得後はみなし登録電気工事業者への届出を忘れずに行う
  • 建設業許可の有効期間は5年間。期限切れを防ぐため、建設業許可の更新の時期を忘れずに管理する
  • ほとんどの電気工事業者は一般建設業許可で事業を行える

電気工事業の建設業許可は、制度が2つ絡み合うため手続きが複雑になりがちです。特に営業所技術者等の資格・実務経験の確認や、みなし登録電気工事業者への届出など、見落としやすいポイントが多くあります。

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