「経営状況分析って経審とは別の手続きなの?」「どの分析機関に申請すればいいの?」——経営事項審査(経審)の準備を始めた建設業者の方が、最初に戸惑いやすいのが経営状況分析の手続きです。
経営状況分析とは、経審を受ける前に必ず行わなければならない手続きで、登録経営状況分析機関に財務諸表を提出し、Y点(経営状況の評点)を算出してもらうものです。経審本体とは申請先も手続きも別であるため、混同しないよう正しく理解しておく必要があります。
この記事では、経営状況分析の仕組みから分析機関の選び方、必要書類、Y点を改善するポイントまでわかりやすく解説します。
この記事でわかること:
- 経営状況分析の定義と経審との違い
- Y点を構成する8つの経営指標
- 登録経営状況分析機関の一覧と選び方
- 経営状況分析の手数料と必要書類
- 申請から結果通知までの流れ
- Y点を改善するためのポイント
経営状況分析とは?制度の定義と経審との関係
経営状況分析とは、建設業法第27条の24に基づき、登録経営状況分析機関が建設業者の財務状況を分析し、経営状況の評点(Y点)を算出する制度です。
公共工事の入札に参加するためには経審を受ける必要がありますが、経審を申請する際には経営状況分析の結果通知書を添付しなければなりません。つまり、経営状況分析は経審の前段階として必ず受けなければならない手続きです。
手続きの流れを整理すると、以下のようになります。
| 順序 | 手続き | 申請先 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 1 | 決算変更届の提出 | 許可行政庁 | 事業年度終了後の届出(前提手続き) |
| 2 | 経営状況分析 | 登録経営状況分析機関 | 財務諸表をもとにY点を算出 |
| 3 | 経営事項審査(経審) | 許可行政庁 | Y点を含む5項目を総合的に審査しP点を算出 |
経営状況分析と経営事項審査の違い
経営状況分析と経営事項審査は名前が似ているため混同されがちですが、まったく別の手続きです。
| 経営状況分析 | 経営事項審査(経審) | |
|---|---|---|
| 根拠法令 | 建設業法第27条の24 | 建設業法第27条の23 |
| 申請先 | 登録経営状況分析機関 | 許可行政庁(都道府県知事 or 国土交通大臣) |
| 審査内容 | 財務諸表に基づくY点の算出 | X1・X2・Y・Z・Wの5項目を総合評価しP点を算出 |
| 手数料 | 約13,800円 | 11,000円〜(業種数による) |
| 所要期間 | 約2〜3週間 | 約1〜2か月 |
経営状況分析で算出されたY点は、経審の総合評定値(P点)の20%を占めます。Y点の結果が経審全体の点数に直結するため、正確な財務諸表の作成が非常に重要です。
P点の計算方法や各評価項目の詳細については「経営事項審査の点数の仕組み|P点・X・Y・Z・Wの計算方法」で詳しく解説しています。
Y点の仕組み|8つの経営指標から算出される
経営状況分析で算出されるY点は、以下の8つの経営指標をもとに計算されます。これらの指標は大きく4つのカテゴリに分類されます。
| カテゴリ | 指標名 | 記号 | 何を評価するか |
|---|---|---|---|
| 負債抵抗力 | 純支払利息比率 | x1 | 支払利息の負担度合い(低いほど良い) |
| 負債回転期間 | x2 | 負債の返済に要する月数(短いほど良い) | |
| 収益性・効率性 | 総資本売上総利益率 | x3 | 総資本に対する売上総利益の効率(高いほど良い) |
| 売上高経常利益率 | x4 | 売上に対する経常利益の比率(高いほど良い) | |
| 財務健全性 | 自己資本対固定資産比率 | x5 | 固定資産を自己資本でどれだけ賄えているか(高いほど良い) |
| 自己資本比率 | x6 | 総資本に占める自己資本の割合(高いほど良い) | |
| 絶対的力量 | 営業キャッシュフロー | x7 | 営業活動による現金創出力(大きいほど良い) |
| 利益剰余金 | x8 | 過去からの蓄積利益の総額(大きいほど良い) |
これら8つの指標がそれぞれ所定の算式で評点化され、最終的にY点として算出されます。
Y点には上限と下限が設定されており、0点〜1,595点の範囲で算出されます。Y点はP点の計算式において20%のウェイトを占めるため、Y点が100点上がるとP点は約20点上がる計算です。
Y点を構成する指標はすべて財務諸表から算出されるため、日頃からの健全な財務管理と、建設業財務諸表の正確な作成がY点に直結します。
登録経営状況分析機関の一覧と選び方
経営状況分析は、国土交通大臣の登録を受けた経営状況分析機関に申請します。どの機関に申請しても分析方法は統一されており、結果に差はありません。
登録経営状況分析機関の一覧
| 分析機関名 | 手数料(税込) | 電子申請 |
|---|---|---|
| (一財)建設業情報管理センター | 13,800円 | 対応 |
| (株)マネージメント・データ・リサーチ | 13,800円 | 対応 |
| ワイズ公共データシステム(株) | 13,800円 | 対応 |
| (株)九州経営情報分析センター | 13,800円 | 対応 |
| (株)北海道経営情報センター | 13,800円 | 対応 |
| (株)ネットコア | 13,800円 | 対応 |
| (株)経営状況分析センター | 13,800円 | 対応 |
| (株)NKB | 13,800円 | 対応 |
| (株)建設業経営情報分析センター | 13,800円 | 対応 |
| (一社)建設業経営分析支援機構 | 13,800円 | 対応 |
手数料は各機関とも13,800円程度で、大きな差はありません。電子申請を利用した場合に割引が適用される機関もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
分析機関を選ぶ4つのポイント
どの機関に申請しても分析結果は同じですが、以下のポイントで使い勝手に差があります。
- 電子申請への対応状況:電子申請なら郵送の手間が省け、割引が受けられる場合もあります
- 結果通知書の発行までの所要日数:機関によって2週間〜3週間と差があります。経審のスケジュールから逆算して間に合う機関を選びましょう
- サポート体制:電話やメールでの問い合わせ対応が充実しているか。特に初めての申請では、不明点を気軽に相談できると安心です
- 手数料の割引制度:電子申請割引や、継続利用による割引を設けている機関もあります
経営状況分析の手数料を含む経審全体の費用については「経営事項審査の費用はいくら?手数料と行政書士報酬の相場」で詳しく解説しています。
経営状況分析の申請に必要な書類
経営状況分析の申請には、以下の書類が必要です。
| 必要書類 | 備考 |
|---|---|
| 経営状況分析申請書 | 各分析機関の所定の様式 |
| 建設業財務諸表 | 貸借対照表・損益計算書・完成工事原価報告書・株主資本等変動計算書・注記表 |
| 減価償却実施額がわかる書類 | 法人税申告書の別表十六等 |
| 建設業許可通知書の写し | 許可番号・許可業種の確認用 |
| 消費税の申告に関する確認書類 | 税抜方式・税込方式の確認用 |
このうち最も重要なのが建設業財務諸表です。これは税務申告で作成する一般的な決算書とは様式が異なります。建設業法で定められた勘定科目に振り替えて作成する必要があり、この作成の正確さがY点に直結します。
また、分析機関によっては上記以外に追加書類を求められる場合もあります。申請前に、利用する分析機関の手引きで最新の必要書類を確認してください。
経審の申請に必要な書類全体については「経営事項審査に必要な書類一覧と準備のポイント」もあわせてご覧ください。
経営状況分析の申請から結果通知までの流れ
経営状況分析の手続きは、以下の8つのステップで進みます。
ステップ1:決算変更届の提出を先に済ませる
経営状況分析の前提として、決算変更届(事業年度終了届)が許可行政庁に提出済みであることが必要です。決算変更届で作成した建設業財務諸表が、経営状況分析の基礎資料になります。
ステップ2:申請する分析機関を決める
前述の一覧から、申請方法(電子・郵送)や所要日数を比較して分析機関を選びます。毎年同じ機関に申請する必要はなく、年度ごとに変更することも可能です。
ステップ3:必要書類を準備する
建設業財務諸表をはじめとする申請書類を揃えます。建設業財務諸表は税務申告用の決算書から勘定科目を振り替えて作成するため、振替漏れがないか十分に確認してください。
ステップ4:分析機関に申請書類を提出する
書類の準備ができたら、分析機関に郵送または電子申請で提出します。電子申請の方がスピーディーに処理される傾向があります。
ステップ5:手数料を支払う
手数料は約13,800円です。支払方法は分析機関によって異なります(振込・クレジットカード等)。
ステップ6:分析機関が財務諸表を審査・分析
分析機関が提出された財務諸表の内容を確認し、8つの経営指標に基づいてY点を算出します。書類に不備がある場合は補正を求められるため、申請前の確認が重要です。
ステップ7:経営状況分析結果通知書を受領する
申請から約2〜3週間で結果通知書が届きます。通知書にはY点のほか、8つの経営指標の個別評点も記載されています。
ステップ8:経審の申請時に結果通知書(原本)を添付する
受領した結果通知書は、経審の申請時に原本を添付します。コピーでは受理されないため、原本の保管には注意してください。
経審の申請手順全体については「経営事項審査の申請の流れ|初めてでもわかる手順ガイド」で詳しく解説しています。
Y点を改善するための6つのポイント
Y点は財務諸表から算出されるため、財務体質の改善がそのまま点数アップにつながります。以下の6つのポイントを意識してみてください。
1. 自己資本比率を改善する
自己資本比率(x6)は、Y点に大きく影響する指標です。内部留保の蓄積(利益を社内に残す)や増資によって、自己資本比率を高めることができます。
2. 純支払利息比率を改善する
純支払利息比率(x1)は低いほど有利です。借入金を圧縮することで、支払利息の負担を減らし、この指標を改善できます。不要な借入がないか見直しましょう。
3. 売上高経常利益率を改善する
売上高経常利益率(x4)は、利益率の向上がカギです。原価管理の徹底や不採算工事の見直しなど、利益体質への改善が求められます。
4. 不要な固定資産を処分する
自己資本対固定資産比率(x5)は、固定資産が少ないほど有利です。使用していない土地・建物・機械などの固定資産を処分することで、この指標が改善します。
5. 営業キャッシュフローを改善する
営業キャッシュフロー(x7)は、営業活動で生み出した現金の量を示します。工事代金の回収サイトを短縮したり、支払条件を見直したりすることで改善できます。
6. 建設業財務諸表を正確に作成する
意外と見落とされがちなのが、建設業財務諸表の作成精度です。税務申告の決算書から建設業財務諸表へ勘定科目を振り替える際に、振替漏れがあるとY点が本来よりも低くなる可能性があります。特に完成工事原価報告書の各勘定科目は、正確に振り替えることが重要です。
Y点の改善を含む経審全体の点数アップ対策については「経営事項審査の点数を上げる方法|すぐできる対策5選」もあわせてご覧ください。
経営状況分析でよくあるミス・注意点
経営状況分析の手続きで特に注意すべきポイントを5つ紹介します。
建設業財務諸表と税務申告の決算書を混同する
経営状況分析に提出する財務諸表は「建設業財務諸表」であり、税務申告で使用する一般的な決算書とは様式が異なります。勘定科目の体系も異なるため、税務申告の決算書をそのまま提出することはできません。必ず建設業法所定の様式に振り替えて作成してください。
完成工事原価報告書の勘定科目の振替漏れ
損益計算書の「売上原価」を建設業財務諸表の「完成工事原価」に振り替える際、材料費・労務費・外注費・経費への振り分けが不正確だと、Y点に影響が出る場合があります。特に兼業がある場合は、建設業とそれ以外の売上・原価の区分にも注意が必要です。
減価償却を実施していない
減価償却を実施していない場合、Y点が大幅に下がる原因になります。分析機関は減価償却の実施状況を確認しており、未実施の場合はみなし計算(減価償却を実施したものとして再計算)が行われ、結果的に不利な数値になることがあります。毎期きちんと減価償却を行いましょう。
結果通知書の原本管理に注意する
経審の申請時には、経営状況分析結果通知書の原本を提出する必要があります。コピーでは受理されません。結果通知書を受領したら、経審の申請まで原本を紛失しないよう大切に保管してください。
経審のスケジュールから逆算して早めに申請する
経営状況分析の結果通知書が届くまでには約2〜3週間かかります。結果通知書がないと経審の申請ができないため、経審の有効期間が切れないよう逆算してスケジュールを組むことが重要です。決算後は速やかに決算変更届を提出し、間をおかず経営状況分析を申請しましょう。
よくある質問(FAQ)
経営状況分析とは何ですか?
経営状況分析とは、建設業法第27条の24に基づき、登録経営状況分析機関が建設業者の財務状況を分析し、Y点(経営状況の評点)を算出する手続きです。経営事項審査(経審)を受けるための前段階として必ず行う必要があり、結果通知書は経審の申請時に原本を添付します。
経営状況分析と経営事項審査の違いは何ですか?
経営状況分析は、登録経営状況分析機関が財務諸表をもとにY点を算出する手続きです。一方、経営事項審査(経審)は許可行政庁がX1・X2・Y・Z・Wの5つの評価項目を総合的に審査し、P点を算出する手続きです。申請先も審査内容も異なる別々の手続きであり、経営状況分析を先に受けたうえで経審に進みます。
経営状況分析機関はどこを選べばいいですか?
国土交通大臣の登録を受けた分析機関は全国に10機関あります。どの機関に申請しても分析方法は統一されており、結果に差はありません。電子申請への対応状況、結果通知書の発行スピード、サポート体制などを比較して選ぶとよいでしょう。手数料はいずれの機関も約13,800円でほぼ同額です。
経営状況分析の手数料はいくらですか?
各登録経営状況分析機関の手数料は約13,800円です。機関による手数料の差はほとんどありませんが、電子申請を利用した場合に割引が適用される機関もあります。なお、この手数料は経審の審査手数料(11,000円〜)とは別にかかる費用です。費用の全体像については「経営事項審査の費用はいくら?手数料と行政書士報酬の相場」をご参照ください。
経営状況分析のY点を上げるにはどうすればいいですか?
Y点は財務諸表から算出されるため、財務体質の改善が基本です。具体的には、自己資本比率の向上(内部留保の蓄積)、借入金の圧縮(純支払利息比率の改善)、利益率の向上、不要な固定資産の処分などが有効です。また、建設業財務諸表の作成精度を高めることで、本来の実力が正しくY点に反映されるようにすることも重要です。
まとめ|経営状況分析は経審の土台となる重要な手続き
経営状況分析のポイントを整理します。
- 経営状況分析は経審の前段階として必須の手続き(建設業法第27条の24)
- 登録経営状況分析機関に財務諸表を提出し、Y点(経営状況の評点)を算出してもらう
- Y点はP点の20%を占め、8つの経営指標から算出される
- 分析機関は全国に10機関あり、手数料は各機関約13,800円
- 申請から結果通知まで約2〜3週間。経審のスケジュールから逆算して早めに申請する
- Y点の改善には財務体質の強化と建設業財務諸表の正確な作成が不可欠
経営状況分析は経審全体の土台となる手続きです。Y点が低いままでは、ほかの項目でいくら対策をしてもP点の伸びに限界があります。「Y点をもっと上げたい」「建設業財務諸表の作成に不安がある」という方は、ぜひ一度ご相談ください。経験豊富な行政書士が、財務諸表の作成から経営状況分析・経審の申請まで一括でサポートいたします。
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参考文献・外部リンク:
・国土交通省「経営事項審査」
・e-Gov法令検索「建設業法第27条の24」
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