経審の点数をもっと上げたい」「公共工事の入札で有利になるにはどうすればいい?」——経営事項審査の対策は、正しい知識があれば中小建設業者でもすぐに実践できるものがあります。

経審の総合評定値(P点)は5つの評価項目で構成されますが、すべてを一度に改善する必要はありません。即効性が高く、比較的低コストで取り組める項目から着手するのが効率的な経審対策の鉄則です。

この記事では、経審の点数を上げるための具体的な方法を、「すぐできる対策5選」と「中長期的な対策」に分けてわかりやすく解説します。

この記事でわかること:

  • 経審の点数を上げるために最初にやるべきこと
  • すぐに取り組める具体的な対策5つ(W点・Z点・X1点)
  • 中長期的に点数を伸ばすための戦略
  • 点数アップの際に注意すべきポイント

なお、経審の制度全体の仕組みについては「経営事項審査(経審)とは?仕組みと評価基準をわかりやすく解説」、P点の計算方法の詳細は「経営事項審査の点数の仕組み|P点・X・Y・Z・Wの計算方法」の記事で解説しています。

経審の点数を上げるための大前提|まず現状を把握する

経審の点数を上げるためにまず必要なのは、自社の現状を正確に把握することです。闇雲に対策を始めても、効果の薄い項目に時間とコストをかけてしまう可能性があります。

P点の構成をおさらいする

経営事項審査の総合評定値(P点)は、以下の計算式で算出されます。

P = 0.25 × X1 + 0.15 × X2 + 0.20 × Y + 0.25 × Z + 0.15 × W

評価項目 記号 配分比率 対策のしやすさ
完成工事高 X1 25% 振り分け最適化で対応可能
自己資本額・利益額 X2 15% 短期改善は難しい
経営状況分析 Y 20% 中長期の財務改善が必要
技術力 Z 25% 資格取得で改善可能
社会性等 W 15% 最も対策しやすい

P点の計算方法の詳細は「経営事項審査の点数の仕組み|P点・X・Y・Z・Wの計算方法」をご覧ください。

結果通知書で「伸びしろ」を見つける

経審の結果通知書には、各評価項目の点数が記載されています。まずはこの通知書を手元に用意し、以下の視点で分析しましょう。

  • W点で加点されていない項目はないか?(建退共・労災上乗せ保険・建設機械など)
  • Z点で技術者の資格が正しく反映されているか?(申告漏れはないか)
  • X1の2年平均と3年平均で有利な方を選んでいるか?

この分析だけで、「やるべきなのにやっていなかった対策」が見つかることは珍しくありません。

「すぐできる対策」と「中長期の対策」を分けて考える

経審対策には、次の決算期までに対応できるものと、数年かけて取り組むものがあります。まずは即効性のある対策から始め、並行して中長期的な改善に取り組むのが効率的です。

【対策1】建退共(建設業退職金共済)に加入する|W点アップ

W点を上げる最も手軽な方法の一つが、建退共(建設業退職金共済制度)への加入です。

建退共とは?

建退共は、建設現場で働く労働者のための退職金制度です。事業主が証紙を購入し、労働者の共済手帳に貼付することで、労働者が退職時に退職金を受け取れる仕組みです。

経審での加点の仕組み

建退共に加入し、証紙の購入実績があることが加点の条件です。単に加入しているだけでなく、審査基準日(決算日)前の事業年度中に証紙を購入していることが必要です。

加点を受けるためには、以下の手順が必要です。

  1. 建退共に加入手続きを行う
  2. 証紙を購入し、労働者の共済手帳に貼付する
  3. 経審の申請時に「履行証明書」を建退共の支部から取得して提出する

加入手続き自体は比較的簡単で、建退共の各都道府県支部で申し込みできます。公共工事を受注する建設業者であれば加入するメリットが大きく、最優先で取り組むべき経審対策の一つです。

【対策2】法定外労働災害補償制度に加入する|W点アップ

法定外労働災害補償制度への加入も、W点の加点項目として即効性の高い対策です。

法定外労働災害補償制度とは?

法定の労災保険(政府労災)に上乗せして、労働者の業務上の災害を補償する制度です。いわゆる「労災上乗せ保険」と呼ばれるものが該当します。

対象となる保険の種類

経審で加点対象となるのは、以下のような制度です。

  • (公財)建設業福祉共済団の建設共済保険
  • (一社)全国建設業労災互助会の労災互助制度
  • 民間の損害保険会社の労災上乗せ保険(法定外労働災害補償特約付き)

加入のタイミングに注意

審査基準日(決算日)の時点で加入していることが条件です。決算日を過ぎてから加入しても、その期の経審には反映されません。次期の経審に向けて、早めに加入手続きを済ませておくことが重要です。

保険料は年間数万円程度からで、コストパフォーマンスの高い経審対策といえます。

【対策3】建設機械の保有台数を申告する|W点アップ

自社で建設機械を保有している場合、その台数を経審で申告することでW点の加点を受けられます。意外と申告漏れが多い項目です。

対象となる建設機械の種類

経審で加点対象となる建設機械は、以下のとおりです。

建設機械の種類 具体例
ショベル系掘削機 油圧ショベル(バックホウ)など
ブルドーザー トラクター(排出ガス規制適合機)
トラクターショベル ホイールローダーなど
移動式クレーン ラフテレーンクレーンなど
大型ダンプ車 土砂等運搬用の大型ダンプ(車検証で確認)
モーターグレーダー 路面整正用のグレーダー

申告の要件

加点を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 自社保有であること(通常のリース・レンタルは対象外)
  • 売買契約付きリース(所有権移転ファイナンスリース)は対象
  • 対象機械について特定自主検査を実施していること(検査記録表の保管が必要)
  • 移動式クレーンは労働安全衛生法に基づく定期検査が必要
  • 大型ダンプ車は有効な車検を受けていること

すでに自社で建設機械を保有しているにもかかわらず、経審で申告していなかったというケースは少なくありません。該当する機械がないか、改めて確認してみてください。

【対策4】技術者の資格取得を支援する|Z点アップ

Z点(技術力)はP点全体の25%を占めるため、改善できたときのインパクトが非常に大きい項目です。技術者の資格取得支援は、中小建設業者にとって最も効果的な経審の点数アップ対策の一つです。

資格のランクと評価点の違い

技術職員の評価は、保有する資格のランクによって大きく異なります。

技術者の区分 1人あたりの評価点 具体例
1級技術者+監理技術者資格者証 6点 1級建築施工管理技士+監理技術者資格者証
1級技術者 5点 1級土木施工管理技士、1級建築士
基幹技能者 3点 登録基幹技能者
2級技術者 2点 2級土木施工管理技士、2級建築士
その他の技術者 1点 実務経験のみ

2級資格者が1級を取得すると、1人あたりの評価点が2点から5点に跳ね上がります。さらに監理技術者資格者証を取得すれば6点です。つまり、たった1人の資格アップで4点分の改善が見込めます。

資格取得費用の助成金を活用する

技術者の資格取得に関しては、以下のような支援制度を活用できます。

  • 人材開発支援助成金(厚生労働省):資格取得のための講習費用等を助成
  • 建設労働者確保育成助成金:建設業の技能実習や資格取得を支援
  • 各都道府県の独自助成制度:自治体によって内容が異なる

助成金を活用すれば、実質的な負担を抑えながらZ点の大幅アップを狙えます。

【対策5】完成工事高の業種振り分けを最適化する|X1点アップ

X1(完成工事高)はP点の25%を占める重要な項目ですが、工事の実績を増やすこと自体はすぐにできるものではありません。しかし、既存の工事実績の「振り分け方」を見直すことで点数を改善できる場合があります。

業種間の振替(積み上げ)制度を活用する

建設業法では、一定の条件のもとで関連する業種間で完成工事高を振り替える(積み上げる)ことが認められています。

たとえば、とび・土工工事業の完成工事高を土木一式工事業に積み上げることで、土木一式のX1点を高めることができます。

振替が認められる主な組み合わせは以下のとおりです。

振替先(積み上げ先) 振替元(積み上げ元)
土木一式工事 とび・土工、舗装、しゅんせつ、水道施設 など
建築一式工事 大工、左官、屋根、タイル、内装仕上 など

入札に参加したい業種に工事高を集中させることで、格付けに直結するP点を効率的に高められます。ただし、振替元の業種のX1点は下がるため、全体のバランスを見ながら判断する必要があります。

2年平均と3年平均の有利選択

X1の算出にあたっては、直近2年間の平均直近3年間の平均のどちらかを選択できます。

  • 直近に大型工事が完了した場合 → 2年平均が有利
  • 一時的に売上が落ちた年がある場合 → 3年平均が有利

毎年の受審時に必ず両方を計算し、有利な方を選択しているか確認してください。この選択一つで数十点の差が出ることもあります。

中長期的に取り組むべき経審対策

ここまで紹介した「すぐできる対策5選」に加え、中長期的な視点での経審対策も重要です。以下の取り組みは効果が出るまでに時間がかかりますが、P点の継続的な向上につながります。

Y点(経営状況分析)の改善

Y点はP点の20%を占めますが、8つの財務指標で算出されるため、財務体質の改善そのものが求められます。

対策 改善される指標 具体的な方法
借入金の圧縮 純支払利息比率・負債回転期間 不要な借入の返済、借換えによる金利引下げ
自己資本の充実 自己資本比率 利益の内部留保、増資の検討
収益性の向上 売上高経常利益率 原価管理の徹底、利益率の高い工事の受注
不要資産の処分 自己資本対固定資産比率 遊休不動産・設備の売却

Y点の改善は経営改善と直結する取り組みであり、経審対策としてだけでなく、会社の財務基盤の強化にもつながります。

W点のさらなる加点を狙う

前述の「すぐできる対策」に加え、以下の項目にも中長期的に取り組むことで、W点をさらに引き上げることができます。

  • ISO 9001(品質)・ISO 14001(環境)の認証取得:取得費用と維持費が必要だが、加点幅が大きい
  • 防災協定の締結:国・地方公共団体との防災活動に関する協定を結ぶ
  • えるぼし・くるみん認定の取得:女性活躍推進や子育て支援の取り組みで加点
  • CPD(継続教育)の取組:技術者の継続的な教育・研修を実施し、実績を記録
  • 建設業経理士の配置:経理担当者に建設業経理士2級以上の資格取得を支援

Z点のさらなる底上げ

  • 若年技術者の採用・育成:35歳未満の技術職員の割合が15%以上であれば加点(W点の要素)
  • 元請工事の比率を高める:Z2(元請完成工事高)に直結する営業戦略
  • 建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用:技能者の能力評価の向上に寄与

経審の点数を上げる際の注意点

経審の点数アップ対策に取り組む際は、以下の点に注意してください。

審査基準日(決算日)時点の状況で判定される

経審の評価は、すべて審査基準日(=決算日)時点の状況で判定されます。決算日を過ぎてから建退共に加入したり、保険に入ったりしても、その期の経審には反映されません。次の決算日に間に合うように、早めに対策を始めることが大切です。

虚偽申請は絶対にNG

経審の申請において虚偽の記載をした場合、建設業法違反として罰則の対象(6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金)となります。さらに、建設業許可の取消処分を受ける可能性もあります。経審対策はあくまで正当な範囲内で行ってください。

入札参加資格の格付けとの整合性を考慮する

P点を上げることだけが目的ではなく、実際に受注したい工事の格付けランクに合った点数を目指すことが重要です。自治体ごとに格付け基準が異なるため、ターゲットとする発注機関の基準を確認した上で対策を立てましょう。

対策コストと入札メリットのバランスを考える

ISOの取得やコンサルティング費用など、対策には一定のコストがかかります。点数アップによって受注できる工事の規模・件数が増えるかを見据え、費用対効果を考慮した上で投資判断を行いましょう。

よくある質問(FAQ)

経審の点数を最短で上げるにはどうすればいいですか?

W点(社会性等)の加点項目から取り組むのが最短ルートです。建退共への加入、法定外労働災害補償制度への加入、建設機械の保有申告など、「加入する・申告する」だけで加点される項目が多く、次回の経審から効果が出ます。ただし、審査基準日(決算日)時点で要件を満たしている必要があるため、早めに手続きを進めることがポイントです。

経審の点数アップに費用はどのくらいかかりますか?

対策の種類によって大きく異なります。建退共の証紙購入は1日あたり320円(令和6年10月改定後)、法定外労災補償は年間数万円程度と比較的低コストです。一方、ISOの取得は数十万円〜数百万円、技術者の資格取得も受験料・講習費用がかかります。費用対効果を考えながら、まずは低コストで加点できる項目から着手するのがおすすめです。

W点の加点項目で最も手軽にできるものは何ですか?

建退共への加入法定外労働災害補償制度への加入が最も手軽です。いずれも加入手続きを行い、所定の条件を満たせば加点されます。すでに建設機械を保有している場合は、その台数を正しく申告するだけで加点される可能性があります。

技術者が少ない会社でも経審の点数は上がりますか?

技術者が少ないからこそ、1人あたりの評価点を最大化する戦略が有効です。2級資格者が1級を取得すれば評価点は2点から5点に上がり、さらに監理技術者資格者証を取得すれば6点になります。少人数でも資格のランクアップで大きな点数改善が見込めます。また、W点の対策は技術者の人数に関係なく取り組めます。

経審の点数アップを行政書士に相談するメリットは?

行政書士は経審の制度と実務に精通しており、自社の状況に合った最適な対策を提案できます。結果通知書の分析、加点漏れの確認、業種の振り分け最適化、シミュレーションの作成など、専門家ならではの視点で効率的な点数アップをサポートします。対策の優先順位がわからない場合や、複数の項目を同時に改善したい場合は、専門家への相談が近道です。

まとめ|経審対策は「すぐできること」から始めよう

経営事項審査の点数は、正しい対策を知っていれば中小建設業者でも着実に上げることができます。改めて、すぐできる対策5選をまとめます。

対策 対象項目 ポイント
1. 建退共に加入する W点 証紙の購入実績と履行証明書の取得が必要
2. 法定外労災補償に加入する W点 年間数万円程度の保険料で加点
3. 建設機械の保有台数を申告する W点 自社保有の対象機械を漏れなく申告
4. 技術者の資格取得を支援する Z点 2級→1級で1人あたり3点アップ
5. 完成工事高の業種振り分けを最適化する X1点 積み上げ制度と有利選択を活用

これらの対策に加え、中長期的にはY点の改善(財務体質の強化)やISO取得などにも取り組むことで、P点の継続的な向上を目指せます。

「経審の点数を効率的に上げたい」「自社にとって最適な対策がわからない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。経験豊富な行政書士が、御社の経審データを分析し、最適な点数アップ戦略をご提案いたします。

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参考文献・外部リンク:
国土交通省「経営事項審査」
e-Gov法令検索「建設業法第27条の23〜第27条の29」
建退共(建設業退職金共済事業本部)

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