建設業に従事する人々にとって、建設業許可は必要不可欠な要素です。
しかし、すべての工事において必ずしも許可が必要なわけではありません。
建設業法では、「軽微な工事」と呼ばれる、許可を必要としない例外的な工事が定められています。
本記事では、「軽微な工事」とは何か、どのような工事がそれに該当するのか、建設業法の基本とともにわかりやすく解説します。
建設業許可とは?
まず、建設業を営むためには原則として「建設業許可」を取得する必要があります。
建設業許可とは、一定規模以上の建設工事を受注・施工する際に国土交通大臣または都道府県知事から発行される許可のことです。
この許可を取得することで、事業者は適切な施工体制と技術を保持し、法令を遵守した事業運営が可能になります。
建設業許可が必要な工事の基準は、「軽微な工事」として定義されているものを除き、すべての工事に適用されます。つまり、軽微な工事であれば許可を取得せずに工事を行うことができるのです。
軽微な工事とは?
建設業法第3条では、一定規模以下の工事を「軽微な工事」と定義し、建設業許可を必要としないと規定しています。これにより、小規模な工事や限定的な範囲の作業を許可なしで行うことが認められています。
軽微な工事は以下の2つに分類されます。
建築一式工事:請負金額が1,500万円未満(消費税を含む)の工事、または延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅の建築工事がこれに該当します。
建築一式工事以外の工事:請負金額が500万円未満(消費税を含む)の工事が軽微な工事とされます。
これらの基準に該当する工事は、建設業許可を取得しなくても、法的に正当な形で請負・施工が可能です。
軽微な工事の具体例
軽微な工事に該当する代表的な例を挙げると、以下のようなものが該当します。
住宅のリフォーム:たとえば、住宅の内装リフォームや、バスルームの改修工事などが請負金額500万円未満で行われる場合、建設業許可は不要です。
小規模な修繕工事:ビルやアパートの一部修繕や、設備の交換工事も、金額が500万円未満であれば許可が不要です。
木造住宅の小規模建設:延べ面積150平方メートル未満の木造住宅を建てる場合、請負金額に関わらず軽微な工事として扱われます。
軽微な工事のメリットと注意点
軽微な工事の最大のメリットは、建設業許可を取得するための煩雑な手続きを省略できる点です。
許可を取得するためには、経営経験や専任技術者の確保、財務状況などの要件を満たす必要がありますが、軽微な工事に限ってはこうした要件を満たすことなく事業を開始できます。
これにより、個人事業主や小規模な事業者でも比較的簡単に工事を請け負うことが可能です。
しかし、注意が必要なのは、軽微な工事であっても契約金額が増えると許可が必要になるという点です。
たとえば、最初は500万円未満の工事を請け負っていたものの、追加工事によって請負金額が500万円を超える場合、許可が必要になるケースがあります。
この場合、許可を取得していない事業者が施工を続行すると、違法行為となり罰則の対象になる可能性があります。
また、軽微な工事であっても、契約書の作成や法令遵守は非常に重要です。特に消費者との取引においては、トラブル防止のために契約内容を明確にし、適正な施工を行うことが求められます。
許可が不要でも注意すべき工事
軽微な工事に該当する場合でも、特定の法律に基づいて別途許可や届出が必要となるケースがあります。
たとえば、電気工事や浄化槽工事、解体工事などは建設業法以外の法律によって規制されています。
これらの工事は、軽微なものであっても技術的な要件や資格が求められることがあるため、事前に適切な確認が必要です。
電気工事業:電気工事業法に基づき、電気工事を行うには別途「電気工事業の届出」が必要です。たとえ軽微な工事であっても、無資格での施工は違法となります。
浄化槽工事業:浄化槽法に基づき、浄化槽設置に関わる工事も、一定の資格と届出が必要です。軽微な工事であってもこの法律を遵守する必要があります。
解体工事業:解体工事業についても、一定規模を超える工事の場合には「解体工事業の登録」が必要です。建設リサイクル法など関連する法律もあるため、注意が必要です。
軽微な工事に関する今後の法改正動向
軽微な工事は、小規模事業者にとって重要な役割を果たしてきましたが、近年の法改正により一部の工事に対して新たな規制が設けられる可能性もあります。
例えば、リフォーム業者によるトラブル増加を受けて、国土交通省が軽微な工事に対する規制を強化する方向で検討しているケースもあります。こうした動向を注視し、法令に従った事業運営を心掛けることが重要です。
軽微な工事における適正な運営のポイント
軽微な工事を適正に行うためには、まず法律や規則を正しく理解し、適切な契約書を作成することが大切です。
契約内容を明確にし、顧客との間でのトラブルを未然に防ぐためにも、書面による契約は不可欠です。
また、施工においては、法律を遵守し、工事内容に応じた資格を持つ技術者を配置することで、信頼を得ることができます。
さらに、軽微な工事であっても、顧客や発注者との信頼関係を築き、適正な施工を提供することが事業の成長につながります。
まとめ
軽微な工事は、建設業許可が不要であるため、比較的簡単に事業を開始できる反面、工事内容や契約金額に注意が必要です。
許可が不要だからといって、法令を軽視することなく、適正な手続きと施工を行うことが重要です。建設業者としての信頼を築くためにも、軽微な工事における法令遵守を徹底し、質の高い施工を心掛けることが成功へのカギとなります。
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