建設業を営むにあたり、建設業許可は欠かせない要素です。許可を取得することで、事業規模を拡大し、信頼性を高め、新たなビジネスチャンスを掴むことが可能になります。
しかし、建設業許可の申請は複雑で、申請の準備が不足していると、許可が下りないばかりか、申請に時間がかかり、事業運営に大きな影響を与える可能性もあります。
今回は、社長として建設業許可申請を行う際に押さえておくべき5つの重要なポイントを解説します。
経営経験と経営責任者の選定
建設業許可申請の第一歩として、経営業務の管理責任者(経営責任者)を決定することが非常に重要です。この責任者は、建設業の経営に関する十分な経験が求められます。具体的には、以下の条件のいずれかを満たしている必要があります。
1.許可を受けようとする建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験(注1)を有する者
2.許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
3.許可を受けようとする建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって次のいずれかの経験を有する者
-経営業務の執行に関して、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受け、かつ、その権限に基づき、執行役員等として5年以上建設業の経営業務を総合的に管理した経験
-6年以上経営業務を補佐した経験
経営経験を証明するために、登記簿謄本や法人税の申告書、役員としての職務内容に関する詳細な資料を提出する必要があります。
これらの書類が不十分だと、経営責任者として認められない可能性があるため、事前にしっかりと確認しておくことが肝要です。
また、経営責任者が退任した場合や、交代があった場合は、許可の継続のために新たな経営責任者を速やかに選定し、変更申請を行うことも忘れないようにしましょう。
専任技術者の確保と資格の確認
建設業許可を申請する際、技術者の存在も大きなポイントです。建設工事の適正な施工を確保するため、申請者は専任技術者を配置しなければなりません。
専任技術者は、各営業所ごとに1名以上常勤で配置することが義務付けられています。
専任技術者は、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
1.一定の資格または実務経験がある
2.営業所で常時勤務ができる
3.営業所の専任になっている
また、技術者が配置される営業所が適正であることも重要です。専任技術者が事務所に常駐していなければならないため、他の事業所や現場に頻繁に出向いていると、要件を満たしていないと判断されることがあります。
申請の際には、資格証明書や実務経験証明書を用意し、確実に専任技術者の要件を満たすことを確認することが必要です。
事業所の要件と適正な運営体制の確認
建設業許可を取得するためには、申請する法人や個人が営業所を適切に運営しているかどうかが問われます。営業所には、以下の条件を満たす事務所が必要です。
1.外部から来客を迎え入れ、商談や契約ができるスペースがあること。
2.電話やファックス、机などの設備が整っていること。
3.事務所が自宅と明確に区分されており、独立して運営されていること(自宅兼事務所でも、明確な仕切りがある必要があります)。
4.看板や表札など、外部から営業所として認識できる表示があること。
これらの要件が満たされていない場合、申請が認められない可能性があるため、特に「自宅兼事務所」や「共同オフィス」を利用する場合は慎重に準備を進めることが求められます。
また、営業所の所在地や管理体制に関する証明書類も必要となるため、契約書や写真などの用意も忘れないようにしましょう。
財務的基盤の証明と安定性の確保
建設業許可を取得するためには、法人や個人の財務的な基盤がしっかりしていることが求められます。申請時には、申請者が適切な資金力を持っていることを示すために、以下の財務情報を提出します。
1.決算書(直近のもの2期分)。
2.納税証明書。
3.資本金の証明。
法人の場合、資本金が500万円以上であるか、または500万円以上の資金調達能力を証明することが必要です。これに加え、財務諸表や税務署からの確認書類など、会社の財政状態を示す資料を用意し、しっかりと審査基準を満たすようにしましょう。
また、これらの書類は「財務的に健全で、許可を受けた後も経営が安定して続けられるかどうか」を判断されるため、万が一財務状況が不安定な場合は、融資や増資を検討し、早めに対応しておくことが大切です。
申請書類の正確な作成と提出手続きの徹底
建設業許可の申請には、非常に多くの書類が必要です。これらの書類の不備や誤記があると、許可取得までに大きな遅延が生じる可能性があるため、書類の作成に関しては慎重に行うことが求められます。提出する書類には以下のようなものがあります。
1.建設業許可申請書。
2.法人の登記簿謄本や定款の写し。
3.専任技術者の資格証明書や実務経験証明書。
4.決算書や納税証明書。
また、許可を受けるまでのプロセスでは、都道府県ごとに異なる手続きや提出書類が要求されることもあるため、提出先の窓口に直接確認することが重要です。
特に初めて建設業許可を申請する場合は、行政書士や専門のコンサルタントに依頼するのも有効な手段です。手続きがスムーズに進むよう、事前準備を徹底し、必要書類を一つ一つ丁寧に整えることが、成功への鍵となります。
まとめ
建設業許可を取得するためには、経営者の経験、技術者の配置、営業所の適正な運営、財務的基盤、そして正確な書類作成といった多くの要件を満たす必要があります。
これらの要件を一つでも満たさなければ、許可が下りず、事業運営に大きな支障を来す可能性があります。社長として、事業の安定と成長のために、早めに準備を進め、建設業許可申請に臨むことが大切です。
適切な準備を行い、建設業許可をスムーズに取得することで、会社の信頼性を高め、新たなビジネスチャンスを掴むことができるでしょう。
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