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建設業の事業承継にかかる費用総額シミュレーション|M&A仲介・株価評価・税理士・行政書士・経営者保証解除まで会社規模別に行政書士が試算【2026年版】
最終更新日:2026年5月29日|経営者保証ガイドライン2023年4月改正運用/特例事業承継税制2027年12月期限/事業承継・引継ぎ補助金2026年度公募対応
「事業承継したいのは分かっている。けれど、結局いくらかかるのかが分からないから踏み切れない」——建設業の60代経営者から最も多く寄せられるのが、この一言です。建設業の事業承継費用の総額は、会社規模・承継スキーム・補助金活用の有無で50万円から1億円超まで200倍以上の幅があり、ネットで断片的に出てくる「相場感」だけでは自社のケースに当てはまりません。
本記事では、年商1億円/3億円/10億円の建設業を想定し、親族内承継/親族外(従業員)承継/M&Aの3スキーム別に費用総額を積み上げ計算します。M&A仲介手数料(レーマン方式)、株価評価、税理士顧問、行政書士の許可承継認可・株式譲渡契約、経営者保証解除関連、登録免許税・印紙税、DD(デューデリジェンス)、PMI(統合作業)まで一覧化したうえで、事業承継・引継ぎ補助金や特例事業承継税制(2027年12月31日期限)を差し引いた実質負担額まで算出しました。
承継費用を曖昧にしたまま先送りすると、後継者にデジタル化投資の原資が残らず、業界のITギャップ・人手不足にさらに沈み込みます。承継を決断できないのはやる気の問題ではなく、総額の見える化という仕組みが無いだけです。本記事を読めば、自社の年商規模と承継方針から「来年度予算にいくら載せるべきか」を1時間以内に算出できる状態を目指します。
この記事でわかること:
- 会社規模別(年商1億/3億/10億)×スキーム別(親族内/親族外/M&A)の費用総額レンジ
- M&A仲介手数料(レーマン方式)・株価評価・税理士・行政書士・経営者保証解除など費用項目別の単価相場
- 事業承継・引継ぎ補助金、特例事業承継税制(2027年12月期限)適用後の実質負担額
- 行政書士が担える範囲と税理士・M&A仲介に出すべき範囲の費用区分け表
- 支払いタイミング・キャッシュフローへの影響と、最初に相談すべき士業の選び方
本記事の対象読者:年商1〜10億円規模の建設業(個人・中小法人)の60代経営者および後継候補の方。建設業の事業承継相談先記事で相談先の役割分担を確認した方や、経営者保証解除と事業承継で保証問題を整理した方が、次のステップで「自社の総額がいくらになるか」を把握するための実務記事です。
結論:会社規模別×スキーム別の事業承継費用総額レンジ表(2026年版)
先に結論から示します。建設業の事業承継費用の総額は、補助金・税制特例を活用する前のグロスベースで以下のレンジに収まります。実費(行政庁手数料・士業報酬・税金)の合算で、M&Aの場合は仲介手数料を含みます。
| 会社規模 | 親族内承継 | 親族外(従業員)承継 | M&A(第三者承継) |
|---|---|---|---|
| 年商1億円(純資産5,000万円) | 50万〜200万円 | 150万〜400万円 | 2,500万〜3,500万円 |
| 年商3億円(純資産1.5億円) | 200万〜600万円 | 400万〜1,000万円 | 2,800万〜5,000万円 |
| 年商10億円(純資産5億円) | 800万〜2,500万円 | 1,500万〜3,500万円 | 4,500万〜1億2,000万円 |
このレンジを読むときの注意点は3つあります。第一に、M&A仲介手数料の最低報酬2,000万〜2,500万円が年商規模に関係なく固定で乗るため、年商1億円規模ではM&Aが極端に割高になります。第二に、親族内承継は特例事業承継税制の適用で贈与税・相続税が実質ゼロになるケースが多く、グロスのレンジから大幅に圧縮されます。第三に、補助金(事業承継・引継ぎ補助金 専門家活用事業:M&A仲介手数料の2/3、上限600万円)は採択率30〜50%程度のため、計画段階で全額あてにすると失敗します。
3類型(親族内・親族外・M&A)の特徴比較と税負担の前提条件は建設業の事業承継3類型の比較に整理しています。本記事ではこの後、費用項目別の単価表→補助金・税制適用後の実質負担額→士業別の費用区分け、の順に深掘りします。
費用項目別の単価表|建設業の事業承継で発生する8費目
事業承継費用は、大きく8つの費目に分解できます。それぞれの単価相場と発生条件を一覧化しました。中小企業庁の事業承継支援(中小企業庁)でも費用区分の標準化が進んでおり、本表はその枠組みに準拠しています。
| 費目 | 単価相場 | 発生するスキーム | 発生タイミング |
|---|---|---|---|
| M&A仲介手数料(レーマン方式) | 最低2,000万〜2,500万円/成功報酬 | M&Aのみ | クロージング時 |
| 株価評価(類似業種比準価額方式等) | 30万〜100万円 | 全スキーム | 承継6か月〜1年前 |
| 税理士顧問・税制特例申請 | 50万〜200万円(特例適用時は加算) | 全スキーム | 承継半年〜2年前 |
| 行政書士(許可承継認可・契約書) | 15万〜50万円 | 全スキーム(建設業特有) | 承継30日前〜直後 |
| 登録免許税・印紙税 | 5万〜30万円 | 株式譲渡・合併・分割時 | 承継時 |
| DD(デューデリジェンス)費用 | 100万〜500万円 | M&Aのみ(買手側負担が原則) | 基本合意後 |
| 経営者保証解除関連 | 0〜50万円(保証料別途) | 全スキーム | 承継6か月〜1年前 |
| PMI費用(統合作業) | 200万〜1,000万円 | M&A中心 | クロージング後6か月〜1年 |
M&A仲介手数料はレーマン方式の段階料率で計算する
M&A仲介手数料はレーマン方式と呼ばれる段階料率で計算されます。譲渡対価(または移動総資産)の金額帯ごとに料率が下がる仕組みで、業界標準は以下のとおりです。
| 金額帯 | 料率 | 計算例(譲渡対価3億円) |
|---|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% | 3億円×5%=1,500万円 |
| 5億円超〜10億円以下の部分 | 4% | 該当なし |
| 10億円超〜50億円以下の部分 | 3% | 該当なし |
| 50億円超〜100億円以下の部分 | 2% | 該当なし |
| 100億円超の部分 | 1% | 該当なし |
ここで重要なのが最低報酬(ミニマムフィー)の存在です。大手M&A仲介会社の多くは最低報酬2,000万〜2,500万円を設定しており、譲渡対価が1億円でも3億円でもこの金額を下回りません。たとえば譲渡対価1億円の建設業をM&A売却すると、レーマン方式で計算すれば500万円ですが、実際には最低報酬2,500万円が請求されます。これはAIや一般的な解説記事が見落としやすい論点で、小規模建設業のM&Aで「思ったより手取りが残らない」という事態の主因です。
2024年から中小企業庁が運用するM&A支援機関登録制度に登録された仲介会社のうち、地域系のブティック型ファームでは最低報酬を500万〜1,000万円に設定するケースもあります。年商1〜2億円規模の建設業は、大手より地域系・専門特化型の仲介会社を優先的に当たるべきです。
株価評価が30万〜100万円で振れる理由
株価評価の費用は税理士事務所によって30万〜100万円と3倍以上の差があります。差を生む要因は3つです。
- 評価方式の選択:類似業種比準価額方式、純資産価額方式、配当還元方式の3方式から会社規模・株主属性に応じて選定。建設業は類似業種比準価額方式が中心だが、特定会社(株式保有特定会社等)判定で純資産価額方式に切り替わる場合がある
- 名義株・非上場株の整理:先代経営者の親族・取引先に分散している株式の整理に数か月かかるケースが多い
- 事業承継税制の特例適用前提か否か:特例措置を使う場合、認定経営革新等支援機関の確認書類など追加業務が発生
株価評価の方式選定と建設業特有の論点(工事完成基準による収益認識、ジョイントベンチャー持分の評価など)は建設業の株価評価で詳しく扱っています。
行政書士の役割と費用|建設業特有の許可承継
建設業の事業承継で行政書士費用が必須になるのは「許可承継認可申請」です。2020年10月の改正建設業法施行により、株式譲渡・合併・分割・事業譲渡で建設業許可を承継する場合、承継30日前までに事前認可申請を行うことで許可の空白期間を作らずに承継できる制度が新設されました。これを使わずに無届で承継すると、許可が失効し新規取得(手数料9万円・審査30〜120日)が必要となり、その間は500万円以上の工事が請けられません。
許可承継認可申請の行政書士報酬は15万〜30万円が相場で、株式譲渡契約書のレビュー・作成を含める場合は30万〜50万円程度になります。建設業許可の承継手続きと費用の詳細は、建設業許可の承継手続きに手順をまとめています。
補助金・税制活用後の実質負担額シミュレーション
グロス費用に対して、2026年度に活用できる主な公的支援は以下の3つです。
| 制度名 | 補助率・控除内容 | 上限額・期限 |
|---|---|---|
| 事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業) | M&A仲介・FA手数料・DD費用の2/3 | 上限600万円/2026年度公募 |
| 事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業) | 承継後の設備投資・販路開拓費の2/3 | 上限800万円/2026年度公募 |
| 特例事業承継税制 | 非上場株式の贈与税・相続税の納税猶予・実質ゼロ | 2027年12月31日まで(特例承継計画提出) |
これらを年商3億円のケースで適用すると、実質負担額は次のように圧縮されます。
シミュレーション例1:年商3億円・親族内承継・特例事業承継税制適用
| 費目 | グロス金額 | 控除・補助 | 実質負担 |
|---|---|---|---|
| 株価評価 | 50万円 | ― | 50万円 |
| 税理士報酬(特例適用申請含む) | 150万円 | ― | 150万円 |
| 行政書士(許可承継認可) | 20万円 | ― | 20万円 |
| 登録免許税・印紙税 | 10万円 | ― | 10万円 |
| 贈与税(株式評価1.5億円相当) | 約7,500万円 | 特例事業承継税制で全額納税猶予 | 0円 |
| 合計(実質負担) | 約7,730万円 | ― | 約230万円 |
特例事業承継税制は2027年12月31日までに特例承継計画を都道府県に提出しなければ適用できません。提出期限が迫っているにもかかわらず、現場では「いつかやろう」のまま先送りされているのが実情です。期限後は一般措置(80%納税猶予)に戻るため、納税負担が大きく増加します。
シミュレーション例2:年商3億円・M&A・補助金活用
| 費目 | グロス金額 | 補助 | 実質負担 |
|---|---|---|---|
| M&A仲介手数料(譲渡対価3億円・レーマン方式) | 1,500万円(最低報酬2,500万円のため2,500万円) | 専門家活用事業 2/3補助(上限600万円) | 1,900万円 |
| DD費用(買手負担が原則) | 200万円 | ―(買手側で対応) | 0円(売手) |
| 株価評価・税理士 | 200万円 | ― | 200万円 |
| 行政書士(許可承継・契約レビュー) | 40万円 | ― | 40万円 |
| 登録免許税・印紙税 | 20万円 | ― | 20万円 |
| PMI費用 | 500万円 | 経営革新事業 2/3補助(上限800万円) | 約170万円 |
| 合計(実質負担) | 2,460万円 | ― | 約2,330万円 |
補助金は採択前提ではなく「採択されれば追加投資に回せる」と保守的に見積もるのが安全です。事業承継・引継ぎ補助金の公募スケジュール・申請要件は事業承継・引継ぎ補助金でアップデートを追跡しています。
行政書士・税理士・M&A仲介の費用区分け表
事業承継費用が高くなる主因は士業間の役割の重複と抜け漏れです。どの士業が何を担うかを事前に区分けすると、合計費用を20〜30%圧縮できます。
| 業務範囲 | 行政書士 | 税理士 | M&A仲介 |
|---|---|---|---|
| 建設業許可の承継認可申請 | ◎(独占業務) | ― | ― |
| 株式譲渡契約書の作成 | ○ | ― | ○(仲介手数料に含む) |
| 株価評価・税務申告 | ― | ◎(独占業務) | ― |
| 事業承継税制の特例適用 | ― | ◎ | ― |
| 買手・売手のマッチング | ― | △ | ◎ |
| 経営者保証解除の金融機関交渉 | ○(公的支援同伴) | ○(財務改善計画作成) | ― |
| 許可承継後の決算変更届・更新 | ◎ | ― | ― |
建設業の場合は行政書士に最初に相談するのが費用合理性の観点で正解です。許可承継認可申請のスケジュール(承継30日前事前申請)が他の手続きの起点になるため、ここを起算して株価評価・税理士契約・M&A仲介着手のタイミングを設計できるからです。逆に税理士やM&A仲介を先に走らせると、許可承継の段取りが後手に回り、承継日を再調整する手戻りが発生します。
承継までの5年・10年タスクと費用発生タイミングを年表化したものは建設業の事業承継ロードマップに整理しています。経営者保証解除の金融機関交渉プロセスの実費は経営者保証解除と事業承継を参照してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 建設業の事業承継で最も安く済む方法はどれですか?
総額ベースでは親族内承継が最も安く、年商1億円規模で実費50万〜200万円程度に収まります。特例事業承継税制(2027年12月期限)を使えば株式の贈与税・相続税が実質ゼロになります。一方M&Aは仲介会社の最低報酬2,000万〜2,500万円が固定で乗るため、年商1億円規模では割高です。ただし安さだけで選ばず、後継候補の有無・経営力を冷静に評価してください。
Q. 事業承継・引継ぎ補助金は本当にもらえるのですか?
2026年度の採択率は公募回によって30〜50%程度で、申請すれば必ず受給できる制度ではありません。専門家活用事業ではM&A仲介手数料の2/3(上限600万円)が補助対象ですが、全額あてにして資金繰り計画を立てると不採択時に承継自体が頓挫します。実費を自社資金で立て替えられる範囲に収めたうえで、採択されれば追加投資に回す位置づけが安全です。
Q. 経営者保証解除にかかる費用相場はいくらですか?
経営者保証ガイドライン(2023年4月改正運用)に基づく保証解除は、金融機関との直接交渉であれば実費はほぼ発生しません。中小企業活性化協議会や認定支援機関を経由する場合も自己負担はゼロ〜数万円です。ただし財務改善計画書の作成を税理士・公認会計士に依頼すると30万〜100万円、行政書士に許可承継認可申請を依頼すると10万〜20万円が別途発生します。事業承継特別保証制度の保証料も別途必要です。
Q. 事業承継は税理士と行政書士のどちらに先に相談すべきですか?
建設業の場合は行政書士に先に相談するのが定石です。建設業許可は事業承継時に空白期間を作ると失効し、500万円以上の工事が受注できなくなるため、許可承継認可申請(30日前事前申請)のスケジュール設計が起点になります。税理士の株価評価や税制特例の活用は許可承継の段取りが決まった後でも間に合いますが、許可失効は元請契約・入札参加資格に直結する致命傷です。複数士業が連携できるワンストップ事務所を選ぶと費用区分けが明確です。
Q. 事業承継費用の支払いタイミングはいつになりますか?
親族内承継は株価評価→税理士報酬→贈与税・相続税→許可承継申請費用の順で1〜2年に分散して支払えます。M&Aは仲介着手金(契約時100万〜300万円)→中間金(基本合意時)→成功報酬(クロージング時にレーマン方式で2,000万〜数千万円)→PMI費用(クロージング後6か月〜1年)の順に発生し、成功報酬の80%以上が後払いです。M&Aは売却対価と相殺する設計のため運転資金への影響は小さいものの、初期費用(着手金・中間金で500万円程度)は自己資金で立て替える必要があります。
Q. M&A仲介の最低報酬を回避する方法はありますか?
3つの選択肢があります。第一に、事業承継・引継ぎ支援センター(中小機構)を活用する方法で、公的機関のため仲介手数料が無料または極めて低額です。第二に、M&A支援機関登録制度に登録された地域系ブティック型ファームを選ぶことで、最低報酬500万〜1,000万円で対応してもらえる場合があります。第三に、M&Aプラットフォーム(マッチング型)を使うと成約手数料が譲渡対価の2〜3%程度に圧縮できます。ただしいずれも仲介会社のサポート範囲が限定されるため、別途行政書士・税理士で補完する設計になります。
まとめ:費用の見える化が承継スピードを決める
建設業の事業承継費用は、会社規模・スキーム・補助金活用で50万円から1億円超まで幅広いものの、本記事の会社規模別×スキーム別レンジ表と費用項目別の単価表を使えば、自社の総額を1時間以内に概算できます。ポイントを整理します。
- M&A仲介の最低報酬2,000万〜2,500万円が小規模建設業のM&Aを割高にする最大要因。地域系ファームや公的機関を併用検討する
- 親族内承継は特例事業承継税制(2027年12月期限)で贈与税・相続税が実質ゼロになる強力な選択肢。期限が迫っており特例承継計画の提出を急ぐ
- 事業承継・引継ぎ補助金は採択率30〜50%。全額あてにせず採択は追加投資原資と位置づける
- 建設業は行政書士の許可承継認可申請(30日前事前申請)が他手続きの起点。最初に行政書士へ相談すると士業間の役割の重複・抜け漏れを抑え合計費用を20〜30%圧縮できる
- 費用の見える化が遅れるほど、後継者世代に残せるデジタル化投資・人材確保の原資が削られる。承継は仕組み(=総額の可視化)で動かす
「自社の年商と純資産規模で、いくらかかるか試算してほしい」「特例事業承継税制の2027年期限に間に合うか確認したい」「経営者保証解除と許可承継を同時に進めたい」——こうしたご相談は、朝霞市・志木市・新座市・富士見市・ふじみ野市・三芳町エリアの建設業者様向けに無料で承っています。建設業許可と事業承継の両方に精通した行政書士が、税理士・金融機関と連携しながら総額シミュレーションと年度別予算配分まで一気通貫でご提案します。
「いくらかかるか分からない」のまま先送りせず、まずは数字を出して比較するところから始めましょう。お問い合わせフォームまたはお電話でお気軽にご相談ください。初回相談は無料、シミュレーション資料は当日中にお渡しします。