建設業許可を取得した後、経営者としてやるべきことは多岐にわたります。
許可取得はあくまでスタートラインに過ぎません。
許可を活かして事業を成長させるためには、適切な管理や法令遵守、そして効果的な営業活動が欠かせません。
ここでは、建設業許可取得後に必ず実施すべき重要なポイントを解説します。
許可証の管理と表示
まず、建設業許可を取得した証として交付される許可証は、適切に管理する必要があります。
許可証の原本を事業所に保管し、見やすい場所に掲示することが法令で義務付けられています。
これにより、顧客や取引先に対して許可業者であることを明示し、信頼性を高めることができます。
また、工事現場でも許可業者であることを示す標識を掲示しなければなりません。
これは工事に携わるすべての人々や近隣住民に対して、適正な許可を受けた業者であることを示し、安心感を提供するためです。
標識の内容は、「許可番号」「許可を取得した業種」などを明記する必要があります。
建設業許可の維持管理
許可は取得しただけで終わりではありません。
建設業許可は5年ごとに更新する必要があり、許可を失効させないためには有効期限をしっかり管理することが大切です。
更新手続きには、経営状況や技術者の資格などが審査されるため、定期的に必要な書類を整備しておくことが重要です。
また、事業内容や会社の体制に変更があった場合、たとえば経営責任者や専任技術者が退職した場合などは、その都度変更届を提出する必要があります。
これを怠ると、許可の取り消しや罰則の対象となることがあるため、迅速な対応が求められます。
社内の法令遵守体制の整備
建設業においては、建設業法や労働基準法、環境関連法令など、多くの法令を遵守することが求められます。
特に、労働者の安全衛生に関する規則や社会保険の加入状況については、厳しく監督されています。
許可を取得した後は、これらの法令遵守体制をしっかりと整備し、違反のないよう注意が必要です。
具体的には、建設現場での安全管理や適切な労働環境の提供、また適切な契約内容の提示などが含まれます。
特に元請業者として活動する場合は、下請け業者との契約内容や工事の進捗管理、支払い条件の遵守にも細心の注意を払う必要があります。
財務の見直しと経営管理の強化
建設業許可を取得したことで、新たな工事や取引の機会が増える可能性があります。それに伴い、財務状況や資金繰りも厳格に管理する必要があります。
特に、大規模な工事を受注する場合、工事が進行するに従って経費が膨らむ一方で、完了までに支払いを受けることができないケースもあります。
そのため、資金繰りを適切に行い、経営の安定を図ることが重要です。
さらに、経営事項審査(経審)を受ける際には、財務状況が大きく影響します。
経審の結果は、公共工事を受注する際の格付けに直結するため、日頃から会計処理を適正に行い、企業の信用力を高める努力が求められます。
技術者の育成と確保
建設業において、専任技術者は企業の成長に欠かせない存在です。建設業許可を維持するためには、各業種ごとに必要な専任技術者が常勤していることが条件です。
しかし、専任技術者が退職や異動などで欠けてしまった場合、そのままでは許可が無効となるリスクがあります。したがって、技術者の育成と確保は常に行っておくべきです。
また、技術者のスキルアップを促進するために、定期的な研修や資格取得の支援も重要です。これにより、企業の技術力を高め、より高度な工事を請け負うことができるようになります。
営業活動の強化
建設業許可を取得した後は、許可業者としての強みを活かし、新規顧客の開拓や取引先の拡大を図るべきです。
許可を持つことで、公共工事や大規模な民間工事への参加が可能になるため、これを積極的にアピールしましょう。
営業活動においては、許可業者であることを強調するだけでなく、過去の実績や技術力、コンプライアンスの徹底をアピールすることも効果的です。
特に元請業者としての信頼を得るためには、確実な納期管理や品質保証、適正な価格設定が重要です。
コンプライアンスの徹底
建設業界では、コンプライアンスの徹底が特に重要視されています。許可業者として法令を遵守し、労働基準や環境保護に配慮した事業運営を行うことは、社会的信用を得るために不可欠です。
たとえば、下請け業者に対して適正な契約を結び、支払期日を守ることや、工事現場での安全管理を徹底することが求められます。
また、近年では社会保険の未加入問題が取り沙汰されており、適切な保険加入もコンプライアンスの一環として重要です。
許可業種の拡大と戦略的な許可更新
建設業許可を取得した後は、事業の成長に合わせて新たな許可業種の取得を検討することも重要です。許可業種を増やすことで、幅広い工事に対応できるようになり、新たな市場機会を得ることができます。
また、許可の更新時期には、事業の方向性を見直し、必要に応じて許可業種の追加や拡張を行うことも戦略的に重要です。
特に、公共工事の入札に参加する際には、複数の業種許可が有利に働くことが多いため、積極的に取り組むべきです。
許可取得による新たなチャンスの活用
建設業許可を取得したことで、新たなビジネスチャンスが生まれます。公共工事の入札に参加できるほか、大手企業との取引拡大、さらには海外市場への進出も視野に入れることができます。
このようなチャンスを最大限に活用するためには、許可を持っていることを適切にアピールし、信頼性を強化することが重要です。また、今後のビジネス展開に合わせて、必要な人材や資金の準備を進めることも欠かせません。
建設業許可を取得した後は、許可を単なる書類上のものにせず、経営の武器として活用することが重要です。法令を遵守し、技術力を高め、財務や営業面でも適切な管理を行うことで、事業をより大きく成長させることが可能です。
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