法人社長が知っておくべき建設業許可の基礎知識

一定の金額以上の請負をする建設業を営むためには、一定の条件を満たした上で、国や地方自治体から建設業許可を取得する必要があります。

法人社長にとって、この建設業許可は事業を円滑に進めるために欠かせないものであり、取得や更新のプロセス、許可の有効性について正確に理解しておくことが重要です。

本記事では、建設業許可の基礎知識を中心に、法人経営者が知っておくべきポイントを解説します。

建設業許可とは?

建設業許可は建設業法に基づき、一定の基準をクリアした企業や個人が国土交通大臣または都道府県知事から許可を受ける制度です。この許可を取得することで、法人は公共工事や大規模な建設工事を受注し、事業の信頼性を高めることができます。

許可が必要な理由は、建設業が社会インフラに密接に関連しており、施工の品質や安全性を確保する必要があるためです。許可を受けた企業は、法律に基づいた適正な工事を行う義務が生じ、社会的信用が高まることから、発注者からも信頼されやすくなります。

建設業許可が必要な場合と不要な場合

建設業許可が必要かどうかは、工事の規模や内容に応じて異なります。以下に、許可が必要なケースと不要なケースを示します。

建設業許可が必要な場合

建設業許可は、以下の条件を満たす建設工事を請け負う場合に必要です。

建築一式工事:1件の請負代金が1,500万円以上、または延べ床面積が150㎡以上の木造住宅の工事
建築一式工事以外:1件の請負代金が500万円以上の工事

許可が不要な場合

許可が不要なのは、「軽微な建設工事」とされる小規模な工事です。具体的には、上記条件を満たさない工事の場合、建設業許可は不要です。ただし、許可が不要な工事であっても、取引先や顧客の要望により許可を取得することが求められる場合もあるため、注意が必要です。

建設業許可の種類

建設業許可には、以下の2種類があります。

一般建設業許可

一般建設業許可は、法人が元請として工事を請け負う場合、または一部の工事を自社で行う場合に取得する許可です。通常の建設工事を行う際には、この許可が必要です。

特定建設業許可

特定建設業許可は、下請け業者を使って大規模な工事を行う場合に必要な許可です。具体的には、元請として1件の工事において4,000万円以上(建築一式工事では6,000万円以上)を超える下請け契約を締結する場合に取得する必要があります。この許可を取得するためには、より厳格な基準が設けられており、一定の財務的基盤や技術力を証明する必要があります。

建設業許可の要件

建設業許可を取得するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。以下に、主な要件を解説します。

経営業務の管理責任者がいること

経営者や役員など、建設業に関する十分な実務経験を持つ人物が「経営業務の管理責任者」として在籍している必要があります。この人物は、一定期間以上の実務経験を有していなければなりません。

専任技術者がいること

工事を適切に施工するためには、専任の技術者が必要です。専任技術者は、許可を受ける工事に対応した資格や実務経験を持っていることが求められます。資格を持たない場合は、10年以上の実務経験が必要です。

財務基盤が健全であること

許可を取得するためには、一定の財務的基盤があることも要件の一つです。具体的には、法人の純資産が500万円以上あることが必要です。特定建設業許可の場合は、さらに厳しい基準が設けられており、2,000万円以上の純資産が必要です。

誠実性の要件

会社や役員が過去に不正行為や重大な違法行為を行っていないことが求められます。不正や違法行為に関与した人物がいる場合、許可の取得が困難になります。

欠格要件に該当しないこと

許可を取得するためには、申請者が建設業法に基づく欠格要件に該当しないことが重要です。例えば、過去に建設業許可が取り消された経験がある場合や、禁錮以上の刑を受けたことがある場合には、許可を取得できない可能性があります。

許可取得のプロセス

建設業許可を取得するためには、申請書を提出し、審査を受ける必要があります。申請は法人の主たる営業所の所在地に応じて、国土交通大臣または都道府県知事に提出します。以下が主な申請の流れです。

事前準備

必要な書類や要件を確認し、経営業務の管理責任者や専任技術者の資格を確認します。財務状況を整理し、純資産額が基準を満たしているかも確認する必要があります。

申請書の作成と提出

必要書類を揃えたら、申請書を作成して提出します。提出する書類には、会社の登記簿謄本や決算書、専任技術者の資格証明書などが含まれます。

審査

提出された書類に基づいて、国や地方自治体が審査を行います。審査には数ヶ月かかることがあるため、許可が必要な時期を見越して早めに準備を進めることが重要です。

許可証の交付

審査に通過すれば、許可証が交付されます。許可証を取得した後は、定期的に更新手続きを行う必要があります。

許可の有効期間と更新

建設業許可の有効期間は、原則として5年間です。許可を受けた企業は、5年ごとに更新手続きを行い、許可を維持する必要があります。更新手続きは、有効期限が切れる30日前までに行う必要がありますが、更新申請が遅れると許可が失効してしまうため、早めに準備を進めることが大切です。

また、許可の更新時には、再度審査が行われます。この際、経営業務の管理責任者や専任技術者の在籍状況、財務基盤が審査されます。更新に必要な条件が満たされていない場合、許可が取り消されることもあります。

許可の取得・維持の重要性

建設業許可を取得することは、法人にとって事業拡大や新規顧客の開拓において重要なステップです。許可を持つことで、公共工事や大規模工事への参入が可能となり、会社の信頼性が向上します。また、取引先や銀行などの外部からも、許可を有する企業としての信用が高まります。

しかし、許可を取得するだけでなく、維持することも同様に重要です。専任技術者の確保や財務基盤の強化を継続的に行うことで、許可の更新や拡大をスムーズに進めることができます。

まとめ

法人社長にとって、建設業許可は会社の成長に欠かせない要素です。許可を取得するためには、経営業務の管理責任者や専任技術者の確保、財務基盤の整備、そして誠実性の維持が必要です。また、許可を取得した後も、更新手続きを適切に行い、許可を維持することが求められます。建設業許可を有効に活用し、会社の信頼性を高めることで、さらなる成長を実現することができるでしょう。

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