「書類の名前を見ただけで12種類以上ある。どこから手をつければいいのか…」——初めて事業年度終了届(決算変更届)を提出する経営者・経理担当者から、こうした声を多くいただきます。税理士が作った決算書をそのまま出せるわけではなく、建設業法独自の様式に組み替える必要がある点が、最大の壁です。

この届出は、建設業許可を持つ事業者が毎年必ず提出しなければならない法定の届出であり、1年でも抜けると許可更新・経営事項審査・業種追加がすべて止まります。期限・提出義務の基礎については決算変更届(事業年度終了届)とは?届出の流れ・必要書類・期限を解説を、未提出時の罰則・対処法については事業年度終了届を出さないとどうなる?罰則・更新への影響・遅れた場合の対処法をあわせてご覧ください。

本記事では、もう一歩踏み込んで「それぞれの書類を具体的にどう書くか」を、記入例と注意点を交えて解説します。行政書士に依頼せず自社で作成したい担当者の方が、迷わず最後まで書き切れる実務ガイドとしてご活用ください。

この記事でわかること:

  • 事業年度終了届で提出する様式の全体像と、それぞれの記載目的
  • 工事経歴書(様式第2号)の記載ルール・記入例・経営事項審査時の追加ルール
  • 直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第3号)の書き方
  • 税務申告書から建設業法固有の財務諸表へ組み替える手順(勘定科目対応表)
  • 使用人数・定款・納税証明書の書き方と注意点
  • 法人/個人事業主、知事許可/大臣許可での様式の違い
  • よくある記入ミスと訂正届の出し方

事業年度終了届で提出する書類と様式の全体像

事業年度終了届は、1通の書類ではなく複数様式のセットで構成される届出です。まずは各様式がどのような目的の書類かを把握し、作成順序を組み立てることが書き方マスターの第一歩となります。

様式番号 書類名 役割 作成難易度
様式第22号の2 変更届出書(表紙) 届出一式の表紙。届出事項にチェックを入れる
様式第2号 工事経歴書 許可業種ごとの当該事業年度の工事実績
様式第3号 直前3年の各事業年度における工事施工金額 業種別・元請下請別の3年分の推移
様式第4号 使用人数 営業所ごとの技術職員・事務職員数
様式第15号 貸借対照表(法人用) 建設業法固有様式の組み替え財務諸表
様式第16号 損益計算書(法人用) 同上
様式第16号の2 完成工事原価報告書 材料費・労務費・外注費・経費の内訳(法人のみ)
様式第17号 株主資本等変動計算書 純資産の変動明細(法人のみ)
様式第17号の2 注記表 会計方針等の注記(法人のみ)
様式第18号・19号 貸借対照表・損益計算書(個人用) 個人事業主向けの簡易様式
自由様式 事業報告書 株式会社のみ必要
納税証明書 法人事業税または個人事業税の納税を証明 低(取得するだけ)

必要書類の全体感をつかんだら、「工事経歴書 → 直前3年の施工金額 → 財務諸表 → 付随書類 → 表紙」の順で作成するのが最短ルートです。工事経歴書の完成工事高は財務諸表の完成工事高と必ず一致させる必要があるため、工事の積み上げから先に確定させるのが効率的です。

工事経歴書(様式第2号)の書き方と記入例

工事経歴書は、当該事業年度に施工した工事を許可業種ごとに記載する書類で、事業年度終了届の中で最も記載ルールが細かい様式です。書き方を誤ると差し戻しになりやすいポイントを、順を追って解説します。

1. 業種ごとに1枚ずつ作成する

許可を受けている業種すべてについて、業種ごとに1枚の工事経歴書を作成します。たとえば「建築工事業」「内装仕上工事業」「塗装工事業」の3業種で許可を受けていれば、3枚作成することになります。当該業種での工事実績がゼロだった場合も、業種名を記載して「実績なし」と明記した1枚を提出します。

2. 記載の並び順と件数の基本ルール

工事の記載順序は、建設業法施行規則で以下のように定められています。

優先順位 区分 並べ方
1番 元請の公共工事(国・地方公共団体の発注) 請負代金の大きい順
2番 元請の民間工事 請負代金の大きい順
3番 下請工事 請負代金の大きい順

記載件数の基本ルールは、業種ごとの完成工事高合計(元請・下請の合算)の7割を超えるまで、請負代金の大きい順に工事を積み上げて記載することです(建設業法施行規則第4条関連)。経営事項審査を受審する場合は、元請完成工事を請負代金の大きい順に10件まで抽出してまず記載し、そのうえで業種全体の完成工事高の7割超となる水準まで続けて記載します。軽微な工事の取り扱いは各都道府県の手引きで詳細が異なるため、提出前に最新の手引きで確認してください。

3. 各項目の書き方

工事経歴書に記載する各項目の書き方と、記入時の注意点は以下のとおりです。

項目 書き方・注意点
注文者 工事の発注者名を記載。個人名の場合は「個人A」「個人B」等と記載してプライバシーに配慮する運用が一般的
元請・下請の別 「元請」または「下請」のいずれかを記載。二次下請以降も「下請」でまとめて問題ない
JV の別 共同企業体として施工した場合のみ「甲型JV」「乙型JV」等を記載
工事名 契約書記載の正式名称。複数業種にまたがる工事でも、経歴書に記載する業種での工事内容がわかる名称であること
工事現場のある都道府県および市区町村名 「◯◯県◯◯市」まで記載。自社営業所の所在地ではなく、工事を施工した場所を書く点に注意
配置技術者 主任技術者または監理技術者として配置した者の氏名・資格を記載。専任・非専任の別も明記
請負代金の額 消費税を含んだ金額で千円単位で記載。複数業種にまたがる場合は当該業種分のみを按分して記載
工期 契約書の「着工年月」と「完成(予定)年月」を記載。当期完成は完成、翌期にまたがる場合は進行中として取扱
PCB 廃棄物の処理工事 該当する場合のみチェック(解体・除去工事の一部)

4. 工事経歴書の記入例(内装仕上工事業)

事業年度に内装仕上工事業で以下3件の工事を施工したケースの記入例です。

項目 工事1 工事2 工事3
注文者 ◯◯市 株式会社△△ □□建設株式会社
元請・下請 元請 元請 下請
工事名 ◯◯市立第二小学校内装改修工事 △△ビルテナント内装工事 □□マンション共用部内装補修工事
現場所在地 埼玉県◯◯市 東京都△△区 千葉県□□市
配置技術者 山田太郎(2級施工管理技士・専任) 山田太郎(2級施工管理技士・非専任) 佐藤次郎(実務10年・非専任)
請負代金(千円) 18,500 7,200 2,800
工期 2025/08〜2025/12 2025/10〜2025/11 2026/01〜2026/02

この例では、元請の公共工事(工事1)→元請の民間工事(工事2)→下請工事(工事3)の順に並んでいます。また、工事1で専任配置した山田氏は、工事1の工期中は他現場との専任兼務ができないため、工事2の配置は工事1完了後または工期が重ならない期間での配置である必要があります。記載の整合性は、後の経営事項審査や立入検査で問われるポイントです。

5. 軽微な工事の取扱い

建設業法施行令第1条の2で定める軽微な建設工事は、①1件の請負代金が1,500万円未満の建築一式工事、②延べ面積150㎡未満の木造住宅工事、③建築一式工事以外で1件の請負代金が500万円未満の工事——のいずれかに該当する工事です。経営事項審査を受けない事業者であれば、これら軽微な工事は「その他○件、合計◯◯千円」と合算して1行にまとめて記載することが認められています。経営事項審査を受審する場合は、軽微工事も含めて件数と合計金額の記載が必要となるため、対応する表計算ソフトで集計しておくと便利です。

直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第3号)の書き方

様式第3号は、直近3期分の工事施工金額を業種別・元請下請別に整理して示す書類です。業歴を可視化する目的があり、経営事項審査の審査項目とも連動するため、工事経歴書の金額と完全一致させる必要があります。

記入欄の構造

表は縦軸に業種、横軸に「公共・元請/民間・元請/下請」の3区分と「合計」が並び、それぞれ3期分を記載する構造になっています。

業種 区分 前々期 前期 当期
内装仕上工事業 公共・元請 12,000 15,600 18,500
民間・元請 8,400 9,100 7,200
下請 3,200 2,500 2,800
合計 23,600 27,200 28,500

記入時の3つのチェックポイント

  • 当期の合計額は、工事経歴書の合計額と必ず一致させる:行政庁は最初にここを突合するため、不一致があると即差戻しになります。
  • 許可を受けていない業種の工事は記載しない:無許可業種で500万円以上の工事を請け負っていた場合、建設業法違反の疑いに発展します。軽微工事で処理可能な範囲で、別途「その他の建設工事」欄へ記載します。
  • 消費税の取扱いを3期で統一する:税込/税抜のどちらかで統一し、途中で切り替えないこと。財務諸表の表記と揃えます。

建設業法固有様式の財務諸表の書き方(税務申告書からの組み替え)

事業年度終了届の財務諸表(様式第15号〜第17号の2)は、税務申告で使う決算書をそのまま添付できません。建設業会計独自の勘定科目へ組み替える作業が必要です。この「組み替え」は、担当者が最も時間を取られる工程です。

貸借対照表の主な勘定科目対応表

一般会計(税務申告) 建設業会計(様式第15号) 組み替えのポイント
売掛金 完成工事未収入金 完成工事に係る未回収分をここに集約
棚卸資産(仕掛品) 未成工事支出金 期末時点で未完成の工事に投じた原価
前受金 未成工事受入金 未完成工事に対して受領済みの請負代金
買掛金 工事未払金 完成工事にかかる材料費・外注費等の未払
貸付金・借入金 短期貸付金・短期借入金・長期借入金 返済期限が1年以内か否かで流動・固定に区分

損益計算書で押さえる3つのポイント

  • 売上高 → 完成工事高+兼業事業売上高:建設業以外の事業(不動産賃貸・物品販売等)は兼業事業売上高として分離します。
  • 売上原価 → 完成工事原価+兼業事業売上原価:売上同様に分離し、完成工事原価は材料費・労務費・外注費・経費の4区分で様式第16号の2(完成工事原価報告書)に内訳を記載します。
  • 完成工事高は工事経歴書の合計と一致:様式第3号と同様、必ず工事経歴書とリンクさせます。兼業事業売上を含めた全体売上が税務申告書の売上高と一致する構造が正しい状態です。

完成工事原価報告書(様式第16号の2)の書き方

完成工事原価を「材料費・労務費(うち労務外注費)・外注費・経費(うち人件費)」の区分で集計する書類です。試算表や元帳から勘定を拾い出して集計する作業が中心となりますが、労務費と労務外注費の区別は多くの事業者が間違えるポイントです。自社社員に支払う賃金が労務費、一人親方・応援への支払が労務外注費として区別します。外注費との線引きは事業者ごとに判断が難しいため、3期以上同じ基準で集計できているかを必ず確認してください。

使用人数・定款・納税証明書など付随書類の書き方

様式第4号(使用人数)

営業所ごとに、技術職員(建設業の技術者)と事務職員等の人数を記載します。営業所技術者等(旧:専任技術者)は必ず技術職員として1名以上カウントし、その他の技術系従業員を積み増します。派遣社員は原則として使用人には含みません。

定款の写し

当該事業年度中に定款変更を行った場合のみ、変更後の定款全文の写しに「原本と相違ない」旨の代表者証明を付して提出します。変更がない年度は不要ですが、提出漏れ防止のため毎年添付する運用にしている事業者もあります。

納税証明書

都道府県税事務所で取得する法人事業税(または個人事業税)の納税証明書が原則必要です。都道府県により必要とする年度・納税科目が異なるため、届出先の建設業許可担当課の手引きで必ず最新の取扱いを確認してください。未納がある場合は、原則として完納してから届出を行います。

法人と個人事業主の書き方の違い

個人事業主は、法人向けの様式第15号・第16号・第16号の2・第17号・第17号の2が不要となり、代わりに様式第18号(貸借対照表)と様式第19号(損益計算書)という簡易様式を使用します。書き方のポイントは以下のとおりです。

  • 貸借対照表(様式第18号):所得税の青色申告決算書の貸借対照表をベースに、完成工事未収入金・未成工事支出金などの建設業会計科目へ組み替えます。
  • 損益計算書(様式第19号):青色申告決算書の損益計算書をベースに、完成工事高・完成工事原価の区分で表示します。経費は明細を記載する様式となっています。
  • 株主資本等変動計算書・注記表・事業報告書は不要:その分、作業量は法人の半分程度に軽減されます。
  • 納税証明書は個人事業税の証明書:事業所得に課税されていない年は、課税所得が発生しなかったことが分かる書類の添付で代替できる自治体もあります。

知事許可と大臣許可での書類取扱いの違い

届出書類の様式そのものは全国共通ですが、提出先による運用の違いがあります。

項目 知事許可 大臣許可
提出先 主たる営業所所在地を管轄する都道府県建設業許可担当課 主たる営業所所在地を管轄する地方整備局等
副本の部数 原則1部(正本+副本=2部が多い) 原則1部(正本+副本=2部)
納税証明書 都道府県税の納税証明書 法人税または所得税の納税証明書(税務署発行)
電子申請 建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)で順次対応 JCIP で対応済

関連記事:埼玉県の建設業許可手続きと必要書類では、知事許可の具体的な運用例を紹介しています。

よくある記入ミスと訂正届の出し方

差し戻しの原因になりやすい5つのミス

  • 工事経歴書の合計額と様式第3号の当期金額が一致しない:最多の差戻し原因。千円未満の端数処理を統一します。
  • 無許可業種の工事を記載している:500万円以上の無許可業種工事は建設業法違反の疑いがかかるため、軽微工事の範囲内で「その他」欄へ記載します。
  • 配置技術者の専任・非専任の記載矛盾:同一期間に複数現場で専任記載している等、配置ルールに反する記載。
  • 貸借対照表の当期純利益と損益計算書の当期純利益が不一致:様式第17号(株主資本等変動計算書)を経由した反映漏れ。
  • 様式改訂の未反映:令和6年12月13日施行の改正建設業法で用語が変更(例:専任技術者→営業所技術者等)。古い様式を流用していないか最新の手引きで確認します。

訂正届の提出方法

提出後に記載ミスが判明した場合は、訂正届を提出します。正式な様式は定められていないため、以下の手順が実務上の一般的な流れです。

  1. 届出先の建設業許可担当課に電話で連絡し、訂正方法(書き方・添付書類・部数)を確認する。
  2. 訂正箇所と訂正後の内容を記した添え状を作成する。
  3. 訂正後の書類一式(変更届出書+該当する様式)を正本・副本ともに差し替え可能な形で作成する。
  4. 訂正後の副本に受付印を受け、元の副本と一緒に保管する。

訂正届自体の期限は法定されていませんが、更新申請・経営事項審査を控えているなら必ずそれまでに完了させることが実務上の鉄則です。

事業年度終了届の書き方で迷ったときの相談先

様式が多く作業が重いため、以下のような状況では行政書士に依頼することを検討してください。

  • 工事経歴書に記載する工事件数が50件を超える
  • 経営事項審査の受審を予定している(書類精度が審査点数に直結)
  • 直近3年で業種追加・般特新規・事業譲渡など区分変更があった
  • 複数年分をまとめて提出する必要がある
  • 担当者が異動・退職して社内にノウハウが残っていない

行政書士費用を抑える工夫については建設業許可の行政書士費用を節約する方法もあわせてご覧ください。自社作成と外注を組み合わせ、工事経歴書の一次集計だけ社内で行い、建設業法様式への組み替えは行政書士に任せる分業も有効な選択肢です。

まとめ|事業年度終了届の書き方は「整合性」が最大のポイント

事業年度終了届は、12種類以上の様式を組み合わせて作成する複雑な届出ですが、書き方の本質は「工事経歴書の数字を起点として、すべての書類で整合性を取ること」に尽きます。

  • 起点は工事経歴書(様式第2号):業種ごと・元下別・請負代金の大きい順で記載し、軽微工事の扱いを明確にする。
  • 次に直前3年の工事施工金額(様式第3号):当期合計を工事経歴書と一致させる。
  • 財務諸表は建設業会計への組み替え:完成工事高は工事経歴書の合計と一致。完成工事原価は労務費・労務外注費・外注費の区別を正確に。
  • 付随書類(使用人数・定款・納税証明書):最後にまとめ、表紙(変更届出書)で束ねる。
  • ミスが見つかれば訂正届ですみやかに対応:更新申請・経営事項審査前に完了させる。

毎年繰り返す実務ですので、一度テンプレート化できれば翌年以降は大幅に工数を圧縮できます。自社で完成させる第一歩として、本記事の記入例を参考にしてみてください。期限や罰則、未提出時の対処法は 決算変更届とは?届出の流れ・必要書類・期限を解説事業年度終了届を出さないとどうなる?罰則・更新への影響・遅れた場合の対処法 もあわせてご確認ください。

※本記事は2026年4月時点の建設業法・建設業法施行規則(令和6年12月13日施行の改正建設業法を反映)に基づいています。都道府県・地方整備局によって細部の運用が異なる場合があるため、提出前に届出先の最新の手引きを必ずご確認ください。

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