「今持っている建設業許可に、別の業種を追加したい」——事業拡大や元請からの要請をきっかけに、こうした相談は非常に多く寄せられます。
建設業許可の業種追加とは、すでに建設業許可を取得している事業者が、新たに別の業種の許可を取得する手続きです。新規申請とは異なる手続き区分であり、要件や必要書類にも違いがあります。
この記事では、建設業許可の業種追加について、手続きの流れ・許可要件・必要書類・注意点まで、実務に必要な情報をわかりやすく解説します。特に最大のハードルとなる営業所技術者等(旧:専任技術者)の確保については、具体的な資格要件を含めて詳しく説明していきます。
※令和6年(2024年)12月13日施行の改正建設業法により、「専任技術者」の法律上の名称は「営業所技術者等」に変更されました。本記事では、検索される方のわかりやすさを考慮し、旧名称の「専任技術者」も併記しています。
この記事でわかること:
- 業種追加の定義と新規申請との違い
- 建設業29業種の一覧
- 業種追加に必要な5つの許可要件(2025年改正対応)
- 手続きの流れと必要書類
- 申請手数料・審査期間の目安
- 許可の有効期間と一本化の注意点
建設業許可の業種追加とは?
業種追加とは、すでに一般建設業許可または特定建設業許可を受けている事業者が、許可を受けていない別の業種について新たに許可を申請する手続きです(建設業法第3条)。
たとえば、現在「内装仕上工事業」の許可を持っている事業者が、新たに「塗装工事業」の許可も取得したいという場合、業種追加の申請を行います。
ポイントは、業種追加はあくまで「既存の許可を持つ事業者」が対象であることです。建設業許可を一切持っていない事業者が初めて許可を取得する場合は「新規申請」となり、手続き区分が異なります。
業種追加と他の申請区分との違い
建設業許可の申請には複数の区分があり、それぞれ条件が異なります。混同しやすいため、違いを整理しておきましょう。
| 申請区分 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 新規申請 | 建設業許可を持っていない事業者が初めて許可を取得する | 無許可の事業者が「電気工事業」の許可を取得 |
| 業種追加 | 既存の許可を持つ事業者が別の業種の許可を追加する | 「電気工事業」の許可を持つ事業者が「管工事業」を追加 |
| 般特新規 | 一般建設業許可を持つ業種について特定建設業許可に変更する(またはその逆)。特定建設業許可は、元請として下請代金5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)の下請契約を締結する場合に必要 | 「電気工事業」の一般許可を特定許可に切り替え |
| 許可換え新規 | 許可行政庁を変更する(知事許可→大臣許可など) | 他県にも営業所を設置したため知事許可から大臣許可へ変更 |
業種追加は、あくまで「同じ許可区分(一般または特定)で、別の業種を追加する」手続きです。一般から特定への変更は「般特新規」、許可行政庁の変更は「許可換え新規」という別の手続きになりますので注意してください。
建設業の29業種一覧
建設業法では、建設工事を2種類の一式工事と27種類の専門工事の合計29業種に分類しています。業種追加を検討する際は、追加したい工事がどの業種に該当するかを正確に把握することが重要です。
一式工事(2業種)
| 業種名 | 工事の内容 |
|---|---|
| 土木一式工事 | 総合的な企画・指導・調整のもとに土木工作物を建設する工事 |
| 建築一式工事 | 総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する工事 |
専門工事(27業種)
| 番号 | 業種名 | 番号 | 業種名 |
|---|---|---|---|
| 1 | 大工工事業 | 15 | 板金工事業 |
| 2 | 左官工事業 | 16 | ガラス工事業 |
| 3 | とび・土工工事業 | 17 | 塗装工事業 |
| 4 | 石工事業 | 18 | 防水工事業 |
| 5 | 屋根工事業 | 19 | 内装仕上工事業 |
| 6 | 電気工事業 | 20 | 機械器具設置工事業 |
| 7 | 管工事業 | 21 | 熱絶縁工事業 |
| 8 | タイル・れんが・ブロック工事業 | 22 | 電気通信工事業 |
| 9 | 鋼構造物工事業 | 23 | 造園工事業 |
| 10 | 鉄筋工事業 | 24 | さく井工事業 |
| 11 | 舗装工事業 | 25 | 建具工事業 |
| 12 | しゅんせつ工事業 | 26 | 水道施設工事業 |
| 13 | 解体工事業 | 27 | 消防施設工事業 |
| 14 | 清掃施設工事業 |
なお、一式工事の許可を持っていても、各専門工事を単独で請け負うには該当する専門工事の許可が必要です。たとえば「建築一式工事業」の許可があるからといって、「内装仕上工事」を単独で500万円以上請け負えるわけではありません。この点は誤解が多いため注意してください。
業種追加が必要になる3つのケース
実務で業種追加が必要になるのは、主に以下の3つのケースです。
ケース1:事業拡大で新たな工事を受注したい
会社の成長に伴い、これまで手がけていなかった分野の工事を受注したいケースです。たとえば、内装仕上工事業で実績を積んできた事業者が、リフォーム需要の拡大に対応するために「塗装工事業」や「防水工事業」を追加するケースが典型的です。
建設業法では、500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事を請け負うには該当業種の許可が必要です。事業領域を広げるなら、業種追加は避けて通れません。
ケース2:元請から別業種の許可を求められた
近年、元請会社のコンプライアンス意識の高まりにより、下請業者に対して該当業種の建設業許可を求めるケースが増えています。許可を持っていない業種の工事を受注できず、ビジネスチャンスを逃してしまう事態を防ぐためにも、業種追加の検討が重要です。
ケース3:公共工事の入札参加に必要な業種が不足
公共工事を受注するには、経営事項審査(経審)を受けたうえで入札参加資格を取得する必要があります。入札に参加したい工事の業種について建設業許可を持っていなければ、そもそも経審を受けることができません。公共工事への参入を目指す事業者にとって、業種追加は必須のステップです。
業種追加に必要な5つの許可要件
業種追加の要件は、基本的に新規申請と同じ5つの要件を満たす必要があります。ただし、既存の許可で充足済みの要件もあるため、実質的なハードルは新規申請より低いケースが多いです。
要件1:経営業務の管理責任者がいること
建設業の経営業務について総合的に管理する責任者(常勤役員等)が必要です。令和2年(2020年)10月の法改正により要件が緩和され、現在は以下の2つのパターンで充足できます。
【パターンA】常勤役員等の個人要件で満たす場合
以下のいずれかに該当する常勤の役員等が1名いること。
- 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
- 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位にあった者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者)
- 建設業に関し6年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位にあった者(経営業務の管理責任者を補佐した経験)
【パターンB】常勤役員等+補佐者の組織体制で満たす場合
常勤役員等が建設業の役員等として2年以上の経験を含む5年以上の役員等経験を有し、かつ、財務管理・労務管理・業務運営の各分野で5年以上の経験を持つ補佐者を配置することでも要件を充足できます。
なお、法改正により経験は「建設業全般」で認められるようになりました(以前は「許可を受けようとする業種」での経験が必要でした)。これは業種追加のハードルを下げる重要な変更点です。
業種追加の場合、既存の許可取得時にこの要件を満たしているため、通常は追加の対応は不要です。ただし、経営業務の管理責任者が退任している場合は、後任者の確保が必要になります。
要件2:営業所技術者等(旧:専任技術者)がいること(最重要)
業種追加で最も重要かつ最大のハードルとなるのが、営業所技術者等(旧:専任技術者)の確保です。追加する業種に対応した国家資格や実務経験を持つ技術者を、営業所ごとに常勤で配置しなければなりません。
営業所技術者等の要件は、一般建設業と特定建設業で異なります。
| 許可区分 | 営業所技術者等の要件 |
|---|---|
| 一般建設業 |
・該当業種の国家資格を保有 ・該当業種の実務経験10年以上 ・指定学科卒業+実務経験(大卒3年、高卒5年) |
| 特定建設業 |
・該当業種の1級国家資格を保有 ・一般建設業の営業所技術者等要件+指導監督的実務経験2年以上 ・国土交通大臣特別認定 |
たとえば「管工事業」を追加したい場合、1級管工事施工管理技士や2級管工事施工管理技士の資格を持つ常勤の技術者が必要です。資格者がいない場合でも、管工事の実務経験が10年以上ある社員がいれば要件を満たせる可能性があります。
まずは社内の人材の資格・経験を棚卸しして、追加したい業種の営業所技術者等になれる人材がいるかどうかを確認することが第一歩です。
なお、令和6年12月の法改正により、一定の要件を満たせば営業所技術者等が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)の工事現場の監理技術者等を兼務できるようになりました。技術者の配置計画を立てる際に活用できる制度です。
要件3:誠実性があること
法人の場合は法人自身・役員等・支店長等が、個人の場合は本人・支配人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが求められます。
具体的には、建築士法・宅地建物取引業法等で「不正」または「不誠実な行為」を行ったことにより免許等の取消処分を受け、その処分の日から5年を経過しない者は該当します。通常の事業者であれば問題になることは少ない要件です。
要件4:欠格要件に該当しないこと
以下のような欠格要件に該当しないことが必要です。
- 破産者で復権を得ない者
- 建設業許可を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
既存の許可を維持できている事業者であれば、通常はクリアしている要件です。
要件5:財産的基礎があること
建設業を営むにあたって十分な財産的基礎が必要です。一般建設業と特定建設業で基準が異なります。
| 許可区分 | 財産的基礎の要件 |
|---|---|
| 一般建設業 | 以下のいずれかを満たすこと ・自己資本が500万円以上 ・500万円以上の資金調達能力がある ・許可申請直前の過去5年間に許可を受けて継続して営業した実績がある |
| 特定建設業 | 以下のすべてを満たすこと ・欠損の額が資本金の20%を超えていない ・流動比率が75%以上 ・資本金が2,000万円以上 ・自己資本が4,000万円以上 |
一般建設業の業種追加であれば、既存許可で5年以上の営業実績がある事業者は「許可を受けて継続して営業した実績」の要件を自動的に満たします。特定建設業の業種追加の場合は、直前の決算で財務基準を満たしているか改めて確認が必要です。
業種追加の手続きの流れ
業種追加の手続きは、以下の5つのステップで進めます。事前準備をしっかり行えば、スムーズに許可取得まで進めることができます。
ステップ1:要件の確認
まず、追加したい業種の許可要件を満たしているかを確認します。特に営業所技術者等(旧:専任技術者)の要件が最重要です。
- 追加業種に対応する国家資格を持つ社員はいるか
- 実務経験で要件を満たせる社員はいるか
- 経営業務の管理責任者は在籍しているか
- 財産的基礎の要件を満たしているか
ステップ2:必要書類の準備
要件を満たしていることを確認したら、申請に必要な書類を準備します。主な業種追加の必要書類は以下のとおりです。
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 建設業許可申請書(様式第一号) | 申請区分「業種追加」を選択 |
| 営業所技術者等証明書(様式第八号) | 追加業種の営業所技術者等(旧:専任技術者)を証明 |
| 実務経験証明書 | 資格ではなく実務経験で証明する場合 |
| 資格証明書の写し | 国家資格で証明する場合 |
| 定款の写し(法人の場合) | 事業目的に該当業種の記載があること |
| 登記事項証明書 | 法務局で取得(発行から3か月以内) |
| 財務諸表 | 直前の決算期のもの |
| 納税証明書 | 法人税または所得税の納税証明書 |
※都道府県によって求められる書類が異なる場合がありますので、必ず申請先の行政庁の手引きを確認してください。
ステップ3:申請書の作成・提出
書類が揃ったら、許可行政庁の窓口に申請書を提出します。知事許可の場合は都道府県の建設業許可担当窓口、大臣許可の場合は地方整備局が申請先です。
なお、近年は一部の自治体で電子申請(建設業許可・経営事項審査電子申請システム:JCIP)にも対応しています。対応状況は各行政庁にご確認ください。
ステップ4:審査
申請後、行政庁による審査が行われます。審査期間の目安は以下のとおりです。
| 許可の種類 | 審査期間の目安 |
|---|---|
| 知事許可 | 約30日 |
| 大臣許可 | 約120日 |
書類に不備があれば補正を求められ、審査期間がさらに延びることがあります。スムーズに許可を取得するためにも、申請前に書類の不備がないか十分に確認しましょう。
ステップ5:許可通知書の受領
審査を通過すると、許可通知書が郵送されます。許可通知書は再発行されませんので、大切に保管してください。許可通知書を受領した時点で、追加業種の工事を請け負うことが可能になります。
業種追加の申請手数料
業種追加の申請手数料は以下のとおりです。
| 許可の種類 | 手数料 | 納付方法 |
|---|---|---|
| 知事許可 | 5万円 | 収入証紙または現金納付(都道府県による) |
| 大臣許可 | 5万円 | 収入印紙 |
この手数料は1回の申請あたりの金額です。一度の申請で複数の業種を同時に追加する場合でも、手数料は5万円です。コスト面を考えると、追加したい業種が複数ある場合はまとめて申請するのが有利です。
業種追加時の3つの注意点
業種追加の手続きを進めるにあたって、特に注意すべきポイントを3つ解説します。
注意点1:許可の有効期間は追加業種ごとに独立する
業種追加で取得した許可の有効期間は、許可日から5年間です。重要なのは、既存業種の許可の有効期間とは別にカウントされる点です。
たとえば、既存業種の許可有効期間が2027年3月31日まで、業種追加の許可日が2026年10月1日だった場合、追加業種の有効期間は2031年9月30日までとなり、更新時期がずれてしまいます。
更新時期がバラバラになると管理が煩雑になるため、許可の一本化(更新と同時に業種追加を行い、すべての業種の有効期間を揃える)を検討するのも一つの方法です。
注意点2:決算変更届が未提出だと申請できない
建設業許可業者は、毎事業年度終了後4か月以内に決算変更届(事業年度終了届)を提出する義務があります。
決算変更届が未提出の場合、業種追加の申請は受け付けてもらえません。業種追加を検討する際は、過年度分の決算変更届がすべて提出済みかどうかを事前に確認してください。未提出の場合は、先に決算変更届を提出する必要があります。
注意点3:定款の事業目的を確認する
法人の場合、定款の事業目的に追加する業種に関する記載があるかどうかを確認してください。事業目的に記載がない場合は、定款変更の手続きが別途必要になります。定款変更には株主総会の決議が必要ですので、早めに対応しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 業種追加と新規申請の違いは何ですか?
新規申請は建設業許可を一切持っていない事業者が初めて許可を取得する手続きで、業種追加はすでに許可を持つ事業者が別の業種を追加する手続きです。申請手数料は新規申請が9万円(知事許可)であるのに対し、業種追加は5万円です。
Q. 業種追加にはどのくらいの期間がかかりますか?
知事許可の場合は申請から約30日、大臣許可の場合は約120日が審査期間の目安です。これに加えて書類の準備期間が必要ですので、トータルでは2〜4か月程度を見込んでおくとよいでしょう。
Q. 営業所技術者等(専任技術者)がいない場合でも業種追加はできますか?
営業所技術者等の配置は必須要件ですので、対応する資格または実務経験を持つ技術者がいなければ業種追加はできません。自社に該当する人材がいない場合は、資格者の採用や、既存社員の資格取得を検討する必要があります。
Q. 業種追加の許可の有効期間はいつからですか?
業種追加の許可日から5年間が有効期間です。既存業種の許可の有効期間とは連動しないため、更新時期が異なる点に注意してください。許可の一本化を活用すれば、すべての業種の有効期間を揃えることも可能です。
Q. 一度に複数の業種を追加できますか?
はい、一度の申請で複数の業種を同時に追加できます。申請手数料は業種数に関係なく1回5万円ですので、追加したい業種が複数ある場合はまとめて申請することでコストを抑えられます。
Q. 業種追加と許可の更新は同時にできますか?
業種追加と更新を同時に申請することは可能です。同時に申請することで、すべての業種の許可の有効期間を揃える「許可の一本化」ができます。管理の手間を減らすためにも、更新のタイミングで業種追加を行うのは合理的な選択です。
まとめ:業種追加はまず営業所技術者等(専任技術者)の確認から
建設業許可の業種追加は、事業拡大や受注機会の確保に欠かせない手続きです。本記事のポイントをまとめます。
- 業種追加は、既存許可を持つ事業者が別の業種の許可を取得する手続き
- 5つの許可要件のうち、最大のハードルは営業所技術者等(旧:専任技術者)の確保
- 令和2年改正で経営業務管理責任者の経験は建設業全般でOKに緩和
- 申請手数料は5万円、審査期間は知事許可で約30日、大臣許可で約120日
- 許可の有効期間は追加業種ごとに独立するため、一本化も検討する
- 決算変更届の提出が完了していないと申請できない
業種追加の手続きは、要件の確認から書類の準備まで専門的な知識が求められます。特に営業所技術者等の資格・実務経験の確認は判断が難しいケースも多く、申請先の行政庁によって運用が異なる場合もあります。
「自社で要件を満たせるか分からない」「手続きに不安がある」という方は、建設業許可の専門家である行政書士にご相談ください。要件の確認から申請書類の作成・提出まで、トータルでサポートいたします。
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