「経審の制度が変わったと聞いたけど、何がどう変わるの?」「P点に影響はある?今のうちに何か対策すべき?」——そんな疑問をお持ちの建設業者の方は多いのではないでしょうか。

2025年・2026年の経営事項審査(経審)は、大きな制度改正が相次いでいます。2025年7月には「資本性借入金」の導入、2026年7月には「自主宣言制度」の新設や「CCUS配点の縮減」など、P点に直結する変更が多数施行されます。

特に注意すべきは、何も対策しなければP点が下がるリスクがあるという点です。この記事では、2025年・2026年の経審改正の全変更点を整理し、建設業者が今すぐ取るべき対策までわかりやすく解説します。

この記事でわかること:

  • 2025年7月施行の改正内容(資本性借入金の導入)
  • 2026年7月施行の改正内容(自主宣言制度・CCUS配点縮減・建設機械追加など)
  • すでに適用済みの過去の重要改正(W点係数変更・登録経理士CPD義務化)
  • 改正内容の一覧比較表
  • 建設業者が今すぐやるべき5つの対策

経審改正の全体像|2025年・2026年の変更点一覧

まず、2024年〜2026年の経営事項審査の改正内容を一覧表で確認しましょう。

施行日 改正項目 影響する評点 P点への影響
2023年4月〜 登録経理士CPD講習の完全適用 W点(W5) 未受講で加点ゼロ(減点リスク)
2025年7月1日
(審査基準日2025年3月31日以降)
資本性借入金の導入 Y点・X2点 該当企業はY点・X2点アップ
2026年7月1日 社会保険未加入の減点廃止 W点(W1) W点の最低点が引き上げ
2026年7月1日 自主宣言制度の新設 W点(新設) +5点の加点
2026年7月1日 CCUS就業履歴蓄積の配点縮減 W点 最大▲5点の減点
2026年7月1日 加点対象建設機械に2機種追加 W点(W7) 該当機械保有で加点機会増
2023年8月〜(適用済み) W点の係数変更(9.5→8.75) P点 W点のP点換算率が縮小

以下、各改正内容を詳しく解説します。

【2025年7月施行】資本性借入金の導入(Y点・X2点)

審査基準日が令和7年(2025年)3月31日以降で、かつ令和7年7月1日以降に経営状況分析の申請を行う場合から、「資本性借入金」が経審の評価に反映されるようになりました。

資本性借入金とは?

資本性借入金とは、通常の借入金でありながら、一定の要件を満たすことで「自己資本」として扱える借入金のことです。経審では、資本性借入金を負債から控除し、純資産に加算して各経営指標を算出します。

これにより、以下の評点が改善されます。

  • Y点(経営状況分析):自己資本比率や負債回転期間などの指標が改善
  • X2点(自己資本額及び利払前税引前償却前利益):自己資本額に資本性借入金を加算

資本性借入金として認められる4つの要件

資本性借入金として経審で評価されるには、以下の4要件を全て満たす必要があります。

要件 内容
①償還条件 契約時における償還期間が5年超の期限一括償還であること
②金利設定 配当可能利益に応じた業績連動型金利であること(経営が厳しい時期は金利負担が軽減される仕組み)
③劣後性 法的破綻時に他の債権に先んじて回収されない仕組みであること
④貸出主体 金融機関(政府系含む)からの借入、または国の制度による借入であること

注意点:残存期間5年未満での減額ルール

資本性借入金の残存期間が5年未満になると、1年ごとに20%ずつ減額して自己資本に加算されます。つまり、借入から時間が経つほど効果が小さくなるため、金融機関との契約内容を定期的に見直すことが重要です。

経審申請時には、「資本性借入金該当証明書の写し」と「金銭消費貸借契約書の写し」の提出が必要です。

【2026年7月施行】自主宣言制度の新設(W点+5点)

2026年(令和8年)7月1日施行の改正で最も注目すべきは、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」(愛称:職人いきいき宣言)の新設です。

自主宣言制度の概要

この制度は、建設技能者の処遇改善に取り組む企業が自主的に宣言を行うことで、経審のW点に+5点が加算される仕組みです。申請受付は2025年12月12日からすでに開始されています。

加点を受けるための必須宣言項目

自主宣言では、以下の3カテゴリーすべてについて宣言する必要があります。

カテゴリー 宣言内容
1. 労務費確保・賃金支払い 見積書への労務費内訳明示、下請見積書の尊重など
2. CCUSの活用 建設キャリアアップシステムの利用推進に関する取組
3. 宣言企業との取引優先 自主宣言を行った企業との取引を優先する旨の宣言

上記に加え、処遇改善・適正な請負契約・スキルアップ支援・労働安全衛生・生産性向上などの任意アピール項目(最大5項目)を記載することもできます。

申請方法と注意点

  • 申請先:国土交通省の専用ポータルサイトからオンラインで申請
  • 加点条件審査基準日(決算日)までに宣言が完了していること
  • 有効期限:申請日の翌月を起算日として2年経過後の最初の12月末まで

特に重要なのは、審査基準日までに宣言を完了しておく必要がある点です。例えば3月決算の企業が2026年7月以降に経審を申請する場合、2026年3月31日までに自主宣言を完了させておかなければ加点されません。

【2026年7月施行】CCUS就業履歴蓄積の配点縮減

2026年7月の改正では、CCUSの就業履歴蓄積に関する配点が引き下げられます。

区分 改正前 改正後
全ての建設工事(民間含む)で就業履歴蓄積を実施 15点 10点 ▲5点
全ての公共工事で就業履歴蓄積を実施 10点 5点 ▲5点
未実施 0点 0点

自主宣言をしないとP点が下がる構造に注意

ここで重要なのは、CCUS配点の縮減と自主宣言制度の新設はセットで考える必要があるということです。

例えば、これまで全ての建設工事でCCUSを実施していた企業の場合:

  • 自主宣言あり:CCUS 10点 + 自主宣言 5点 = 15点(実質変わらず)
  • 自主宣言なし:CCUS 10点のみ = 従来より▲5点

つまり、自主宣言をしなければCCUSの配点ダウン分だけがそのまま減点となり、同じ取組をしていてもP点が下がってしまいます。自主宣言の申請は必ず行いましょう。

【2026年7月施行】その他の改正ポイント

社会保険未加入の減点項目廃止(W1)

改正前は、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の各未加入に対して各▲40点、最大▲120点の減点がありました。2026年7月の改正で、この減点項目が全廃されます。

これは、令和2年(2020年)10月の建設業法改正で社会保険加入が許可要件となったため、経審の受審企業で未加入のケースが事実上なくなったことが理由です。この結果、W点の最低点は▲210点から▲90点に引き上げられます。

加点対象建設機械の追加(W7)

加点対象となる建設機械に、以下の2機種が新たに追加されます。

追加機種 追加の背景
不整地運搬車 令和6年能登半島地震の応急復旧工事で活用
アスファルト・フィニッシャ 令和6年能登半島地震の応急復旧工事で活用

これにより、加点対象の建設機械は従来の9機種から合計11機種に拡大されます。該当する機械を保有またはリースしている建設業者は、新たな加点機会となります。

【すでに適用済み】押さえておくべき過去の重要改正

2025年・2026年の改正ではありませんが、現在の経審に影響している重要な過去の改正も確認しておきましょう。

W点の係数変更(2023年8月施行済み)

総合評定値(P点)を算出する際のW評点の係数は、2023年(令和5年)8月14日以降の審査基準日から「1900/200(=9.5)」から「1750/200(=8.75)」に変更されています。これにより、W点がP点全体に与える影響度が若干小さくなっています。

登録経理士のCPD講習義務化(2023年4月完全適用)

2023年(令和5年)4月1日以降の審査基準日から完全適用されている重要な改正があります。

建設業経理士(1級・2級)が経審のW5(経理の状況)で加点されるためには、合格年度の翌年度開始日から5年以内に「登録経理講習(CPD講習)」を受講していなければなりません。

未受講の場合、W5での加点がゼロになります。経理担当者の受講状況を今一度確認しておきましょう。

建設業者が今すぐやるべき5つの対策

2025年・2026年の経審改正を踏まえ、建設業者が早急に取り組むべき対策を優先度順にまとめます。

対策1:自主宣言の申請を速やかに行う【最優先】

自主宣言制度は2025年12月12日から申請受付が開始されています。審査基準日(決算日)までに宣言を完了させる必要があるため、できるだけ早く申請を行いましょう

申請は国土交通省の専用ポータルサイトからオンラインで行えます。自主宣言をしないと、CCUSの配点縮減分がそのまま減点になるため、申請しない理由はありません

対策2:CCUSの就業履歴蓄積を継続する

配点が縮減されるとはいえ、CCUSの就業履歴蓄積による加点自体は残ります。全ての建設工事で実施すれば10点、公共工事のみでも5点の加点です。自主宣言と合わせれば、改正前と同等以上の点数を維持できます。

対策3:登録経理士のCPD講習受講状況を確認する

自社の建設業経理士がCPD講習を受講済みかどうかを確認してください。合格から5年以上経過している場合、未受講ではW5での加点がゼロになります。受講期限が迫っている場合は、早めに講習を申し込みましょう。

対策4:資本性借入金の活用を金融機関に相談する

自己資本比率が低い、負債が大きいといった課題を抱えている企業は、資本性借入金の活用でY点・X2点の改善が期待できます。取引先の金融機関に相談し、4要件を満たす借入が可能かどうか確認してみましょう。

対策5:新規追加建設機械の保有・リースを検討する

不整地運搬車やアスファルト・フィニッシャを保有またはリースしている場合は、新たな加点対象になります。該当する機械がある場合は、特定自主検査の実施や売買契約書・リース契約書を整備しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 2025年の経審改正で何が変わりますか?

審査基準日が2025年3月31日以降で、かつ2025年7月1日以降に経営状況分析を申請する場合から、「資本性借入金」が経審の評価に導入されました。一定の要件を満たす借入金を自己資本として扱えるため、該当する企業はY点(経営状況分析)とX2点(自己資本額)が改善されます。4つの要件(償還期間5年超・業績連動型金利・劣後性・金融機関からの借入)を全て満たす必要があります。

Q. 自主宣言制度とは何ですか?どうすれば加点されますか?

「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」(愛称:職人いきいき宣言)は、2026年7月1日施行の新制度で、W点に+5点の加点が受けられます。国土交通省のポータルサイトから申請し、①労務費確保・賃金支払い ②CCUSの活用 ③宣言企業との取引優先の3項目について宣言を行います。審査基準日(決算日)までに宣言を完了しておく必要があります。

Q. CCUSの配点が下がると聞きましたが、P点は下がりますか?

2026年7月の改正で、CCUSの就業履歴蓄積に関する配点は最大5点引き下げられます。ただし、自主宣言制度(+5点)を活用すれば、縮減分を補える仕組みになっています。自主宣言をしない場合は、同じ取組をしていてもP点が下がる可能性があるため、必ず申請を行いましょう。

Q. 資本性借入金を使うとP点はどのくらい上がりますか?

P点の上昇幅は、企業の財務状況や借入金額によって異なります。一般的に、負債比率が高い企業ほどY点の改善効果が大きいといえます。具体的な試算は、経審に精通した行政書士や登録経営状況分析機関にご相談ください。

Q. 3月決算の会社はいつまでに自主宣言をすればいいですか?

自主宣言は審査基準日(決算日)までに完了している必要があります。3月決算の企業が2026年7月以降の経審で加点を受けるには、2026年3月31日までに宣言を完了させてください。申請受付は2025年12月12日から始まっていますので、早めの対応をおすすめします。

まとめ:改正を「知っている」だけでは不十分。早めの対策がP点を守る

2025年・2026年の経営事項審査改正は、P点に直結する重要な変更が多数あります。特に2026年7月施行の改正は、自主宣言をしなければCCUSの配点ダウン分がそのまま減点となるなど、「何もしないとP点が下がる」構造になっています。

今すぐやるべきことの優先順位:

  1. 自主宣言の申請(審査基準日までに完了必須)
  2. 登録経理士のCPD講習受講確認(未受講なら加点ゼロ)
  3. CCUSの就業履歴蓄積の継続(配点縮減でも加点は残る)
  4. 資本性借入金の活用検討(Y点・X2点の改善余地がある場合)
  5. 新規追加建設機械の確認(該当機械があれば加点対象に)

改正内容を正しく理解し、適切に対策を講じることで、P点を維持・向上させ、入札競争力を高めることが可能です。

「自社にとってどの対策が最も効果的かわからない」「改正を踏まえたP点のシミュレーションをしたい」という方は、当事務所の無料相談をご活用ください。経審に精通した行政書士が、御社の状況に合わせた最適な対策をご提案いたします。

この記事をシェアする